次に起きる世界的な景気低迷で世界の半数の銀行は生き残れない:マッキンゼーが報告書を発表
コンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニーが、世界の銀行業界の先行きに関する最新の報告書を発表した。その中で、景気サイクル後期にやってくる衝撃への対応を今から始めなければ、次に世界的な景気低迷が起きる際に世界の銀行の半数以上が破綻すると警告している。
今週月曜に発表された同報告書は、「最後の給油休憩?景気サイクル後期における大胆な行動を行う時(原題:The last pit stop? Time for bold late-cycle moves)」というタイトルが付けられている。
この55ページにのぼる報告書の中で、マッキンゼーは、世界における銀行の35%は「基準以下の規模(subscale)」であり、そのため次の経済危機を生き残るために彼らは他の銀行と合併するか、より大きな銀行に自らを身売りしなければならなくなると分析している。
「世界的な金融危機から10年以上が経過し、銀行業界は景気循環サイクルの後期にすでに突入したことを示す複数のサインが明らかになっている:数量ベースでの成長や高水準の成長は減速しており、2018年のローン残高の伸びはたったの4%であった。これは過去5年間で最低の数字であり、名目GDP成長率より150ベーシスポイント(bps)も低い。イールド・カーブも平坦化している。さらに、企業バリュエーションは変動して上下しているが、銀行に対する投資家心理は再び弱まっている」とマッキンゼーは報告している。
Exhibit 2
全ての市場で利益率の低下が加速している(左のグラフ)
その一方で、生産性向上による収益率が減少している(右のグラフ)
(Source: McKinsey & Company, “The last pit stop? Time for bold late-cycle moves”)
マッキンゼーでシニア・パートナーであるカウシク・ラジュゴパル氏は、ブルームバーグのインタビューに次のように語った:
私たちは景気循環サイクルの後期にあり、銀行は大胆な行動を今行う必要があると確信しています。というのも、銀行は(今の時点ですでに)健全で申し分ない状況ではないからです・・・。景気循環サイクルの後期にあって、誰も現在の栄光にしがみついている余裕はないのです。
Exhibit 9
現在の景気循環サイクルは前回の拡大局面とは異なっている
ほとんどの指標はずっと悪化しているように見える
(Source: McKinsey & Company, “The last pit stop? Time for bold late-cycle moves”)
同報告書はまた、世界の銀行の60%は、「自己資本コストよりも低いリターン」という状況であると指摘しており、次の景気後退局面がおとずれる際には、「マイナス金利は(これら銀行を)さらに壊滅させる」と警告している。
Exhibit 10
世界の銀行の大多数は経済的に存立できない可能性がある
(Source: McKinsey & Company, “The last pit stop? Time for bold late-cycle moves”)
さらにマッキンゼーは、フィンテックのスタートアップ企業が銀行業界を急速に進化させていると指摘しており、レガシーである銀行はこうした新技術に迅速に投資しなければ、まさに銀行はレガシー(遺産)として「歴史の脚注に記される存在になる(becoming footnotes to history)」と記している。
フィンテック企業は、予算の少なくとも70%を技術革新に費やしている一方、銀行はたったの35%しかそうした投資に回していない。
先述のラジュゴパル氏は、レガシーである銀行は「外部とのパートナーシップ関係をもっと許容し、外部の人材を活用できるようにならなければいけない」とブルームバーグ紙への取材に語っている。
日本のレガシー銀行は、ATMの台数を削減するなどコスト削減を進めているが、「大胆な行動」とまで呼べるものはなかなか聞かない。邦銀は、今、「景気サイクル後期における大胆な行動」を行うのか、それとも世界の半数以上の銀行の一つとしていずれ統廃合されることになるのか、分岐点に立たされている。
Screenshot via McKinsey & Company’s report
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