5兆6000億ドルの資産運用を行うバンガードの主任エコノミストが2020年の株式市場は「深刻な」2桁台の下落リスクに直面していると警告
バンガード・グループは、運用資産規模で世界最大の資産運用会社の一社。近年人気が高まっている「パッシブ運用」の開祖でもある。その投資戦略部門の責任者であるジョセフ・デービス氏が、2020年中は「通常よりも高い」相当な下落リスクに直面していると確信しているとブルームバーグに語った。デービス氏は、来年、株式市場の最高値から10%以上の下落という修正が行われるのに「50%の確率」があると予想していると語った。
ただし、50%という確率はコインを投げて裏表がそれぞれ出る確率であり、つまりは「何が起きるかわからない」と言うのに等しい。そのため、デービス氏による予想を揶揄する人たちもいる:
Stocks face 50% odds of correction in 2020, Vanguard’s Davis says https://t.co/jySKyk7OzL
— Bloomberg (@business) December 23, 2019
【訳】このコイン投げ(コインを投げて将来を予測する人)は、どれくらいの給料をもらっているのだろうか
・・・デービス氏によると、通常の年であればこのような株式市場の下落が起きる確率はわずか30%であるという。しかし来年、2桁台の株価下落が起きる可能性は通常よりも高いという。(株式市場の)修正は、クリスマス・イブの取引としては過去最悪の一つを記録した昨年年末の数日間に、ベア・マーケットにあと寸前のところで突入かというレベルまで下落して以来、起きていない。
昨年末の株式市場に混沌が訪れ始めるのではないかという恐怖心は肩透かしを喰らっている。事実、2019年に株式市場は力強い上昇を続けた。昨年末、投資家たちが非常に悲観的になったのは彼らの大きな誤算であったとデービス氏は語っている。しかし来年、投資家たちは非常に楽観的になりすぎているために失敗を招くだろうと同氏は確信している。
「金融市場は、先走りするリスクを犯している」と、バンガードの主任エコノミストであるジョセフ・デービスは金曜のインタビューの中で語った。彼は、2020年に修正が行われる確率は50%であると予想している。通常であれば30%の確率であると彼は説明している。
デービス氏によると、現在のバリュエーションでは、来年3%の経済成長が起きることをリスク資産の価格は既に織り込み済みであるという。しかし3%もの経済成長が起きる可能性は低いと同氏は考えている。
バンガードが保有する5兆6000億ドルの運用資産のほとんどは、パッシブ運用ファンドに組み込まれているが、投資家たちは彼の警告を軽視すべきではないとデービス氏は警鐘を鳴らしている。
一方、スタンレー・ドラッケンミラー氏のような資産運用界の有名人は、株式市場の危険性は去り、再びリスクを取るタイミングにきていると楽観論を語り始めている(以下はその動画)。
しかし、デービス氏は、市場は既に高いバリュエーションが付けられており、これ以上のアップサイド(株価の上昇)を正当化することは困難であると語っている。
「全般的に、ほとんどの(投資)戦略における期待運用利益は3年間の保有リターン(trailing returns)以下である」とデービス氏は語っている。同氏は5兆6000億ドルの資産運用会社の投資主任。同氏の資産運用会社は、株式指標をトラッキングするというパッシブ運用を行っていることでより知られている。デービス氏は、リスク資産は3%近い米国の経済成長を織り込んでいると見積もっているが、そのような経済成長が達成される可能性は低いと同氏は見ている。
デービス氏が独自に構築した予測モデルでおいてさえも、米国株は価格が高値圏に入っていると語っている。一方、予想株価収益率(PER)は、過去の値幅の上限にある。
世界最大のヘッジ・ファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)が、2020年3月までに世界の株式市場が下落することに10億ドル以上を賭けていると先月ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が報じたのは記憶に新しい。
ブリッジウォーター・アソシエイツのダリオ氏はこの報道をすぐさま否定し、株価が下落することに賭けた10億ドルのプット・オプション取引は、あくまで同社によるリスク・ヘッジ戦略の一部でしかないと説明している。
世界最大のヘッジファンドBridgewaterが10億ドル以上の空売りを仕掛ける:世界の株式市場が2020年3月までに下落することに賭ける
こうした報道などから、投資家たちは2020年に向けて2つの目的を達成しようと試みているようだ。つまり、1)投資家たちは株価の上昇機会を逃さないために現在の投資ポジションを維持しつつ、2)次に株価が大幅下落する場合への準備として、十分なリスク・ヘッジ(空売りやオプション取引)を行っている。
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