SoftBankがWeWorkとの救済合意内容を一部撤回とWSJ紙が報道
SoftBankグループは、昨年シェアオフィス企業WeWorkと合意していた救済策の一部として、30億ドル分の発行済み株式をアダム・ニューマン元CEOを含むインサイダーの株主から買い取る合意内容を撤回する可能性があると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が報じた。SoftBankグループは、この救済策の一部破棄の可能性をWeWorkの株主へ伝えたと報じられている。
昨年秋以降、本サイトでは、世界的なシェア・オフィス企業WeWorkの絶頂から奈落へ転落する「ユニコーン夢物語」について、リアルタイムでその経緯を伝えてきた。
最初にWeWorkのIPO計画が頓挫し、倒産の可能性がささやかれ始めたと報じたのはこの記事。
SoftBankのビジョン・ファンドは詐欺的と専門家らが警鐘:投資先のWeWorkはIPOが頓挫し倒産の可能性もささやかれ始めた
今週火曜、WeWork株の所有者らはSoftBankグループから連絡を受け、米司法省および証券取引委員会(SEC)が現在WeWorkに対して捜査を進めていることから、昨年10月に合意した救済内容を(一部)撤回することが可能であるとSoftBankグループは考えていることが伝えられたとWSJ紙は報じている。
昨年10月にSoftBankグループとWeWorkの間で合意に至った救済策について報じた記事:
米金融当局がWeWorkに対して捜査を開始したことを報じた記事:
新型コロナウィルスにより金融バブルが崩壊しつつある今、世界の金融市場に過剰なエクスポージャーを抱えているSoftBankグループのような企業は、特に難しい経営の舵取りが求められている。
WeWorkの経営権を獲得するために、SoftBankグループは30億ドルでWeWorkの経営者たちから同社株式を買取ることに合意していた。しかしこの金額が、破産間際にまで追い込まれたWeWorkの経営者たちに対する「退職金」としては法外であると、SoftBankグループ内でも反対する声が上がっていた。
しかし一度締結した救済策の合意文書を破棄することは難しいと弁護士の見解が報じられていたが、SoftBankグループはその合意文書に「抜け穴」を見つけたとWSJ紙は報じている。
WeWorkの元CEO、アダム・ニューマン氏には、10月に締結された合意契約の一部として、最大9億7000万ドル分の持ち株売却権が与えられていた。この契約が締結されたことで、ニューマン氏は同社のCEO職と取締役職から退任していた。SoftBankグループが提供することに合意した救済パッケージにより、ニューマン氏は10億ドル以上を手にして同社を去ることが許されていた。
しかしSoftBankグループがその救済パッケージの一部撤回を通知したことで、ニューマン氏は手に入れた10億ドルの多くを、売却した株式との交換にまもなく返金する必要に迫られる可能性がでてきた。たとえ戻ってきたWeWorkの株式を市場で売却しても、その価値は相当目減りしているため多くの売却益は望めない。
この合意内容の一部破棄について、これはSoftBankグループがWeWorkを救済することから完全に撤退するわけではなく、この決断はSoftBankグループが送り込んだ新経営陣に対してテコ入れすることが目的である可能性があるとWSJ紙は報じている。
今回、一部破棄することが報じられた合意とは別に、SoftBankグループはWeWorkの事業再建策として50億ドルを出資することを約束しており、そのうちの約15億ドルは既にWeWorkに「投資」されている(つまり回収不能の無駄金になっている)。
「ババ抜きゲーム」でうまく一抜けしたと思われていたWeWorkのアダム・ニューマン元CEOであるが、その数々の悪行の報いが、時間差を伴って追いかけてきているようだ。
【更新情報】
WeWorkはSoftBankと全面対決を行う姿勢を声明で発表。
https://twitter.com/BFidr/status/1241929831987785728?s=20
https://twitter.com/BFidr/status/1241982009012097024?s=20
この件について報じるブルームバーグ通信:
https://twitter.com/BFidr/status/1245733658822090753?s=20
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