米国務省の公電記録から米政府は2018年に警告を受け取っていたことが判明:コウモリを宿主とするコロナウイルスを研究している武漢研究所には安全性の問題がある−ワシントンポスト紙
アメリカの国務省(日本の外務省に相当)は、在中・米国大使館の職員たちから2018年に、武漢でコウモリを宿主とするコロナウイルスについて「リスクある研究」を行っている生物研究所の安全性が不十分であると警告する2本の公電を受信していたとワシントンポスト紙が報じた。ワシントンポスト紙は、これら公電が「米国政府内部において、この生物研究所もしくは武漢にあるもう一つの研究所がこのウイルスの起源であるか否かについて議論を巻き起こしている」と記している。
この記事を執筆したワシントンポスト紙コラムニストであるジョシュ・ローギン氏によるツイート:
"The first cable, which I obtained, also warns that the lab’s work on bat coronaviruses and their potential human transmission represented a risk of a new SARS-like pandemic."https://t.co/kgwc21YwBP
— Josh Rogin (@joshrogin) April 14, 2020
【訳】「武漢ウイルス研究所の科学者たちとの対話の中で、彼ら(米国代表団)はこの新しい研究所には、この高度密閉ラボを安全に運営するために必要な、適切な訓練を受けた技術者と調査員が深刻に不足していることに気がついた」と2018年1月19日付けの公電は記している。
武漢駐在のジェイミソン・フス総領事と、米国大使館の環境・科学・技術・衛生担当惨事官のリック・スウィッツァー氏が率いる米国代表団は、通常とは異なる手順を踏んでおり、複数回にわたって繰り返し中国科学院武漢ウイルス研究所(Wuhan Institute of Virology: WIV)を訪問した。この研究所は、2015年にチャイナ国内で最初に(そして唯一)国際バイオセーフティレベルで最高レベル(BSL-4)を達成している。この米国代表団が最後にこの研究所を訪問したのは2018年3月27日であり、武漢ウイルス研究所のウェブサイトにそのことが記録されていた。その後、この記録はウェブサイトから削除されている(ただしキャッシュにその記録は残っている。以下はその画像)。
米国代表団はこの研究所で目にしたことについて非常に懸念を抱き、この研究所でコウモリを宿主とするコロナウイルスについて行っている研究が元でパンデミックが起きる可能性について警告していた。
米国代表団が(この研究所を)訪問中に知ったことは、彼らに大きな懸念を抱かせたため、彼らは2本の外交公電をワシントンDCに送信した。これら公電は「慎重に扱う(Sensitive)が機密扱いではない(Unclassified)」と分類分けされていた。これら公電は、武漢ウイルス研究所における安全性と管理上の脆弱性について警告しており、さらなる注意と支援を提案していた。私(ワシントンポストのコラムニストである筆者)が入手した最初の公電は、コウモリを宿主とするコロナウイルスについてこの研究所が作業を行っていること、そしてこれらコロナウイルスが人に感染する可能性があることが、新たなSARSのようなパンデミックを引き起こすリスクを呈していると警告している。–Washington Post
(太字と下線の強調は訳者)
米国大使館の環境・科学・技術・衛生部門の2名の職員たちによって草稿が執筆された2018年1月の公電には次のように記されている:
武漢ウイルス研究所の科学者たちとの対話の中で、彼らはこの新しい研究所には、この高度密閉ラボを安全に運営するために必要な、適切な訓練を受けた技術者と調査員が深刻に不足していることに気がついた。
興味深いのは、この研究所で勤務する科学者たちがテキサス大学医学部のガルベストン校やその他米国の機関から支援を受けていたということだ。チャイナの研究者たちが必要だと要請する追加支援は、これら米国の機関が提供していた。その結果、米国務省が送信した公電には、コウモリを宿主とするコロナウイルスの研究がいかに危険であるかという理由から、米国は武漢ウイルス研究所に追加支援を提供するべきであると警告していた。
公電が指摘していたように、米国からの訪問者たちは研究プロジェクト主任のシー・ジェンリと面会した。彼女は、コウモリを宿主とするコロナウイルスに関連した研究成果を長年にわたって公表している。2017年11月、米国代表団が訪問する直前、シーの研究チームは、雲南省の洞窟から彼らが捕獲したキクガシラコウモリが、2003年のSARSコロナウイルスを生んだコウモリ集団と同じである可能性が非常に高いことを示す研究成果を発表していた。
さらに公電は次のように記している:
最も重要なのは、ここの研究者たちが、様々なSARSのようなコロナウイルスがACE2と相互作用できることについても披露したということだ。ACE2とは、SARSコロナウイルスに関して特定されたヒト受容体である。この発見は、コウモリから発生するSARSのようなコロナウイルスが人に感染することが可能であり、それがSARSのような病気を引き起こすということを強く示している。公衆衛生の観点から、このことは、コウモリの体内に存在するSARSのようなコロナウイルスを継続して観察し、動物と人との接点を研究することは、将来発生するコロナウイルスのアウトブレークを予期し防ぐために決定的に重要な意味を持つ。
シーおよび他の研究者たちは、彼女の研究チームが最初に2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスについての分析結果を雑誌「ネイチャー」に公表して以降、このウイルスが武漢ウイルス研究所の由来であることを強く否定している。
彼女のチームが発表したレポートによると、コウモリのコロナウイルスについて行っていた研究は、「それがどのように起きるかを予期することで」次に起きるSARSのようなパンデミックを「防ぐ」ことを目的にしていたという。しかし「2015年の時点においてさえも、他の科学者たちはシーの研究チームが不要なリスクを犯していたのではないかと疑問を呈している」。
また「ネイチャー」は次の事実を発表していた:
2014年10月、米国政府は、『機能獲得(gain-of-function)』実験として知られる、ウイルスにさらなる致死性もしくは感染性を加えるいかなる研究に対しても資金提供することを一時停止している。
しかしこのワシントンポストの記事(ニュース記事ではなく、あくまでコラムニストによる意見記事と分類されている)は慎重であり、「多くの」人物たちが、COVID-19が人工的に作られたという証拠は一切なく、それは動物由来であるという意見で一致していると語っていると記している。しかしカリフォルニア大学バークレー校の研究者であるシャオ・チアン氏は次のように語っている:
それは、これが何年にもわたって複数の動物の体内でコウモリのコロナウイルスを実験してきた研究所が由来ではないと言っていることと同一ではない。
この公電は、この研究所での研究が十分な管理体制で実施されず防衛が行われなかった場合、そうした研究が原因となって公衆衛生上の脅威となる可能性があることが長年懸念されていたことを私たちに示している。
この武漢ウイルス研究所に加えて、武漢市内にあるレベル2のバイオセキュリティ施設、武漢市CDC(武漢市疾病予防控制中心)に対しても同様の懸念が残されている。ただし中共政府は、これら2つの研究所のどちらの関与についても発言することを拒んでいる。(武漢市CDCが関与している疑いについては本サイト4月6日付け記事で報じた。)
武漢市CDCは疑惑の海鮮市場からわずか280メートルしか離れていない。また、この海鮮市場ではコウモリは売られていなかったことも判明している。さらに、感染が確認された初期の患者たちの中には、この市場とは全く接点がない人たちが複数人含まれていることも「ランセット」で公開された論文で示されている。また、武漢市CDCで勤務する研究者が誤ってこのウイルスに感染してしまい、症状が現れない潜伏期間中にこの市場で買い物をしていたという可能性を否定する証拠は今のところ出ていない。
ワシントンポストの記事は、この2本の公電について詳しく知る情報源の人物たちを引用し、米国大使館は武漢ウイルス研究所における深刻な安全性上の懸念、「特にコウモリのコロナウイルスに関するこの研究所での研究」について警鐘を鳴らす意図があったと記している。
一人の米国政府職員は次のように語っている:
この公電は、威嚇射撃だった。彼らは(この研究所で)何が起こっているのかに対して(米国政府内の)人間たちに注意を払うよう懇願していた。
記事の後半で、ワシントンポスト紙のコラムニストは「トランプ政権の責任追及」に話題を振っている。その中で、「この公電への対応として、米国政府はこれら研究所に追加支援を一切行わなかった」と記しており、「(この2本の公電は)直近2ヶ月間に政権内部で回覧されるようになっており、政府関係者たちはこの研究所がパンデミックの起源である可能性や、それが米国によるパンデミックへの対応やチャイナとの関係性に対してどのような意味があるかについて議論している」と報じている。
トランプ政権内部では、多くの国家安全保障当局関係者たちが、武漢ウイルス研究所または武漢市CDCが新型コロナウイルスのアウトブレークの起源ではないかと長い間疑っている。ニューヨークタイムズ紙によると、諜報機関はそれを示す証拠をいまだ提示していない。しかし、一人の政府高官は、私(ワシントンポストの筆者)に対して、これら公電は、このパンデミックが武漢にある一つの研究所で起きた事故の結果であるという可能性を示すさらなる証拠を提供することになっていると語った。
また、留意点として、オバマ政権は武漢ウイルス研究所への研究資金の提供を「一時中断」していた。しかしトランプ政権に入って1年後に、この研究資金の一時中断措置は解除されているとNational Reviewが報じている。
ワシントンポスト紙へ情報提供した人物は次のように語っている:
これが完全に自然発生したものであるという考えは状況次第である。それがこの研究所から漏れたものであるという証拠もまた状況次第である。今現在、(この2つの可能性をノートの上で比べてみた場合)この研究所から漏れたものであるという可能性の方には多く(の状況証拠)が箇条書きに連なっているが、それとは反対側にはほとんど何も(状況証拠が)ない。
こうした中、中共政府はこのウイルスに関する情報の隠蔽と抹消を行っており、COVID-19のゲノム配列解析について1月11日に最初に分析結果を発表した上海の研究所は「調整中」という理由で翌日1月12日に閉鎖されている。
また、ワシントンポスト紙は「この感染拡大について初期に報告した医師やジャーナリストたち数人が消息不明となっている」と記している。
2月14日、習近平主席は、新たなバイオセキュリティー法を早急に施行することを要請した。水曜、チャイナ政府は、いかなる研究施設もこの新型コロナウイルスの起源についていかなる投稿を行う前に承認を受けることを義務付けるという、厳格な制限を導入したとCNNが報じた。
これまで、ワシントンポストを含む大手メディアは、新型コロナウイルスが武漢の研究所が起源ではないかという仮説を単なる陰謀論だと一蹴する報道を行なってきた。しかし今回の報道で、アメリカの国務省が受け取った公電がこの可能性について2018年の時点で懸念していたことが明らかとなったことで、陰謀論とは言えない状況に一変した。本日以降、アメリカの主流メディアも武漢ウイルスに対する報道姿勢を180度転換することになるだろう。
■ 米軍制服組トップ:武漢の研究所がCOVID-19の起源であるか詳しく精査している
アメリカ軍の制服組トップであるマーク・A・ミリー統合参謀本部議長は、国防総省がCOVID-19の起源が武漢の生物研究所であるとする仮説について詳しく精査していることを認めた。Defense Oneのケビン・バロン編集者が報じた。
ミリー統合参謀本部議長は記者会見(以下の動画)の中で次のように語っている:
幅広い様々なメディア、ブログ、等々で多くの噂や推測が行われている。我々はそれについて強い関心を持っているというのは驚くべきことではない。そして我々は、多くの諜報官たちがそれについて詳しく調べている。
現時点では何も結論は出ていない。ただし、自然発生したものであるということを示す証拠に比重があるように見える。しかし我々はまだ確実にそうだとは把握していない。
BREAKING: Gen. Milley responds to rumors that coronavirus came from a Chinese lab. "We've had a lot of intelligence take a hard look at that "…"it's inconclusive, although the weight of evidence leans towards natural. But, we don't know for certain."
— Kevin Baron (@DefenseBaron) April 14, 2020
【訳】速報:ミリー統合参謀本部議長は、コロナウイルスがチャイナの研究所由来であるという噂について語った。「我々は、多くの諜報官たちがそれについて詳しく調べている・・・現時点では何も結論は出ていない。ただし、自然発生したものであるということを示す証拠に比重があるように見える。しかし我々はまだ確実にそうだとは把握していない」。
こうした発言は、生涯にわたってさらなる陰謀論や推測に火をつけることになるだろう。しかし彼の言葉のトーンは、この考えについてかなり否定的なものだった。そして彼は、彼らが詳しく調べているということを強調した。「詳しく」。そして「自然発生したものであるということを示す証拠に比重がある」。
ただし、世の中で噂されている仮説には色々ある。ウイルスが人工物ではないにしても、研究所から事故もしくは人為的に漏洩した可能性は否定されていない。
■ 武漢ウイルスが研究所で作られた人工物説であると信じている米国人は30%:ピュー研究所による世論調査
ピュー研究所が米国人に対して行った最新の世論調査の結果、10人中、約3人にあたるアメリカ人が武漢ウイルスは研究所で作られたものであると信じていると回答している。
- 43%の回答者はそれが自然発生したものと考えると回答
- 29%の回答者はそれが研究所で作られたものと考えると回答
- 25%の回答者はわからないと回答
また全体の23%が新型コロナウイルスは「意図的に」研究所で開発されたものであると考えていると回答している。
しかし今週火曜に主流メディアであるワシントンポスト紙が国務省による公電の内容を報じたことで、今後こうしたアメリカの世論は大きく変わることが予想される。
また、ワシントンポスト紙のような主流メディアが、これまで陰謀論だと一蹴していた内容についてようやくその可能性をまじめに報じ始めたことに対して、一部の国民からは冷ややかなコメントが投稿されている:
Youtube says if I talk about this I'm breaking the rules
Youtube is run by morons https://t.co/ziiL1srkSQ
— Tim Pool (@Timcast) April 14, 2020
【訳】YouTubeは、もし俺がこれ(武漢ウイルスが研究所由来であるとする説)について話をすると、規約違反だと言う。
YouTubeは能なしたちに運営されている。
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