ファウチ所長、「新型コロナウイルスにHIVの遺伝子と同じゲノム構造を持つタンパク質が挿入されている」と最初に発表したインド人科学者らの論文を、いかに「言い紛らすか」を相談していた——同所長の866ページ分のeメールをワシントンポスト紙が情報公開法で入手
ワシントンポスト紙は、情報公開法(FOIA)に基づき、アンソニー・ファウチ所長が2020年3月〜4月に送受信した866ページ分にのぼるeメールを入手し、その一部を6月1日(火曜)に報じた(有料記事)。
そのeメールから、2020年1月末に新型コロナウイルスにHIVの遺伝子と同じゲノム構造を持つタンパク質が挿入されていると発表したインド人科学者らの論文を、ファウチ所長たちがいかに無視し、言い紛らせようとしていたかを相談していたことが明らかとなった。
この論文『2019-nCoVのスパイクタンパク質にある固有の挿入部分はHIV-1 gp120とGagに異様なほど類似している(原題:“Uncanny similarity of unique inserts on the 2019-nCoV spike protein to HIV-1 gp120 and Gag”)』は、新型コロナウイルス(武漢ウイルス)のRNAの一部が、SARSのような他のコロナウイルスとは全く関係がなく、むしろHIVに近いと仮の結論を下していた。
その後、この論文は撤回されたが、HIVウイルスを発見しノーベル賞を受賞したフランスのリュック・モンタニエ博士が、昨年4月に「SARS-CoV-2(武漢ウイルス)は人工的に操作されたウイルスであり、武漢の研究所から事故で市中に広がったものである」という分析結果を公に語り、その際、このインド人科学者たちの論文について次のように言及していた:
インドの研究者たちがすでに分析結果を公開しようとしていた。彼らの研究成果では、このコロナウイルスのゲノムが別のウイルス・・・HIVウイルスの一部配列を含んでいることが示されていた。しかし主流(メディア)からの圧力があまりに強かったため、彼らはその発見内容を強制的に撤回させられてしまった。・・・
・・・HIVの配列をこのゲノムに挿入するためには、複数の分子ツールが必要であり、それは研究室でおいてのみ実施することが可能である。
当時、モンタニエ博士が発表したこの分析結果が、日米欧の大手メディアから黙殺されていることについて、BonaFidrでは次のように指摘していた:
モンタニエ博士の発言が公になってから丸3日経過するが、日米欧の大手メディアは同博士の発言について一切報道していない。肯定も否定もせず、ダンマリを決め込んでいるようだ。
しかし、情報公開法により明らかとなったファウチ所長のeメールから、WHOや米国立衛生研究所(NIH)はこのインド人科学者たちによる論文の存在を知っていただけでなく、いかにこの論文が招いた騒ぎを収拾するかを議論していたことが明らかとなっている。
▼ 2020年1月31日(金曜)、AFP通信のイサム・アフメド氏は、米国立衛生研究所(NIH)の免疫学者であるバーニー・グラム博士にコメントを求めるeメールを送信している。
【訳】Dr.グラム様
私はAFP通信で科学担当の記者です。お願いがありこのメッセージをお送りしています——金曜夜にご連絡していることお許しください!コンタクト先の1人から、あなたがこの発表されたばかりの論文について意見を聞かせてくれるかもしれないと言われました(URL)。これは、新型コロナウイルスがHIV-1に類似した4カ所の挿入があり、それは偶然ではないと示唆しています。
もしご協力いただけるなら大変感謝します。
イサム・アフメド
▼ 翌2月1日(土曜)、グラム博士は、この問い合わせメールをすぐさまNIHの「コミュニケーション&政府関係室(OCGR)」に転送し、次のように記している:
【訳】ニッサとジェンへ
これは、ハイレベル(組織上層部)からのアドバイスなく、私たちが回答したくはない問い合わせだが、あなた方にこの物議を醸していることについて知っておいて欲しいと思ったので。
BG(バーニー・グラム)
▼ さらにその翌日となる2月2日(日曜)、OCGR室のジェニファー(ジェン)・ルース氏はグラム博士に次の返信メールを送っている。
【訳】バーニーへ
私たちは保健社会福祉省(HHS)とASFと相談しました。OCGR室は、この論文が査読を受けていないことを言及しつつ、この記者に(コメントすることを)拒否するメッセージを送信することにします。もしあなたが(さらに)類似のリクエストを受け取ったら、私たちに知らせてください。
ジェン
▼ そして同じ2月2日(日曜)、ファウチ所長にも英国人のジェレミー・ファーラー卿からこのインド人科学者たちが発表した論文についてeメールで連絡が入っている。ファーラー卿は英国の医療研究者であり、オックスフォード大学の元教授。本件について、WHOのテドロス事務局長と同組織のバーンハード長官が「コンクラーベ(秘密会議)」を行っているとファウチ所長に連絡している。
【訳】(ジェレミー・ファーラー卿からファウチ所長へのメッセージ)
テドロスとバーンハードは、どうもコンクラーベ(秘密会議)に入っているようだ・・・私の意見では、彼らは今日中に決断する必要がある。もし彼らが言い紛らす(原文の“prevaricate”には「ウソをつく」という意味もある)ならば、今夜または明日、あなたと電話をして今後の進め方を考えたいと思う。
(ファウチ所長は、ファーラー卿からのメッセージをNIHで同僚のフランシス・コリンズ氏に転送し次のように記している)
フランシス:
ちょっとだけ電話する時間はある?
トニー
▼ 同じく2月2日(日曜)、ファウチ所長は同僚のフランシス・コリンズ氏に、このインド人科学者たちの論文は「奇抜(異様、とっぴ)だ」とするメッセージも送信している。
このインドの論文は実に奇抜(異様、とっぴ)だ。(雑誌『サイエンス』に掲載された)ジョン・コーエンの素晴らしい(インドの論文を批判する)要約に同意する。
* * *
そして、ファウチ所長のeメールについて報じたワシントンポスト紙は、新型コロナウイルスに関する研究所漏洩説を「誤りであることが証明された陰謀論」と報じた自らの2020年2月の記事を、ついに訂正する発表を行っている。
Just saw this. The Washington Post has now “corrected” its Feb 2020 article declaring the lab leak theory a “debunked conspiracy” after I reported that journalist @paulina_milla had flagrantly mischaracterized a key expert she quoted in the article https://t.co/pYMc8edeCq pic.twitter.com/lgwkbpm40b
— Michael Tracey (@mtracey) May 31, 2021
BonaFidrをフォロー【訳】たった今、見つけた。ワシントンポスト紙は、研究所漏洩説を「誤りであることが証明された陰謀論」と断定した2020年2月の同紙の記事をついに「訂正」した。この訂正が行われる前、私はポーラ・ミラ・フィロツィ記者が、この記事で発言を引用した鍵となる専門家のことを著しく誤って描写していると報じた。
(添付されたワシントンポスト紙の訂正文)
訂正
この記事の初期のバージョンおよびその見出しは、新型コロナウイルスの起源に関するトム・コットン上院議員(アーカンソー州選出・共和党)のコメントを正確に伝えていませんでした。また、「誤りであることが証明された」という言葉や、ワシントンポスト紙が使った「陰謀論」という表現も削除しました。その理由は、当時も現在も、このウイルスの起源については確定していないからです。