ナンシー・ペロシ下院議長のインサイダー取引疑惑を指摘したツイッター・ユーザに弁護士から「停止命令」が送り付けられる——連銀パウエル議長のインサイダー取引疑惑も報じられ米国の権力者の間でモラルハザードが深刻化
アメリカ政界で長年権力の座にあるナンシー・ペロシ下院議長であるが、彼女の夫ポールが行っている投資の収益率(ROI)を年率に換算すると平均69%に達すると報じられている。そしてインサイダー取引を行わなければ不可能と思われるこの高い投資リターンについて投稿したツイッター・ユーザに、弁護士から「停止命令」が送り付けられたとして話題となっている。
「ナンシー・ペロシ投資ポートフォリオ・トラッカー」というユーザ名の人物が投稿したツイート:
【訳】世界で最も優れた投資家の年率換算リターン
– ウォルター・シュロス 15.3%
– ビル・アックマン:16.9%
– ウォーレン・バフェット:20%
– ジョージ・ソロス:20%
– ピーター・リンチ:29%
– メダリオン・ファンド:66%
– ナンシー・ペロシ:69%
投資を行っている人であれば、年率20%のROIですら達成するのが難しいことを知っている。伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏でも、全盛期の年率投資リターンは平均30%程度だった。
さらにこのツイッター・ユーザーは次のように投稿している:
【訳】これらは、外部収入を得たことのある高所得議員トップ10(最終報告は2018年)。これらの議員は合わせて840万ドルの外部収入を得ている。誰がこれらのペテン師たちにお金を払っているのか?なぜ彼らは私たちの銀行口座を監視したいのか?
【訳】すべての政治家に600ドル以上の銀行取引(*)を報告させるべきだ。
*民主党が提出した法案の中に、年間600ドル以上の資金のやり取りがある銀行口座については、その口座の資金の流出・流入履歴を銀行が米国国税庁(IRS)に報告することを義務付ける条項が含まれている。
そしてこれらの投稿を行ったツイッター・ユーザは、弁護士から「停止命令」が送り付けられてきたと投稿している:
【訳】政治家事務所の誰か偉い人の代理人である弁護士から、停止命令(a cease and desist order)を受け取った。名前は伏せておく。しかし私は停止(cease)も断念(desist)もするつもりはない。
実際に弁護士から送りつけられた「停止命令」の文書とされるもの:
【訳】漠としているけど、私にできるのはこれだけ。
(文書に記された1文)「この書簡は、■■■■に関係するいかなるコミュニケーションに対する停止命令を意味する」。
34年近く政治家を務めるナンシー・ペロシ議員であるが、彼女の夫は、いかにして平均年率69%という投資リターンを達成しているのだろうか?
FOXニュースの番組ホスト、ジェシー・ワターズ氏は、ペロシ下院議長の議員時代の金融取引を調べ、その資産は3億1500万ドルにまで膨れ上がっていると10月10日に伝えている:
現在の下院議長の給与は10万ドル台前半(数千万円)だが、ペロシ氏は最も裕福な議員の一人である。
「では、彼女の秘密は何なのでしょうか?それは、彼女の夫ポールが理由のようです」とワターズは言う。
さらにワターズは次のように語る:
「結婚後、ポールは不動産とベンチャーキャピタルの会社を設立しました。そして、その人脈を使ってナンシーを政界に押し上げ、彼女を1987年の連邦議会議員選挙に当選させました。
夫妻は長年にわたってマーケット(株式市場)のタイミングを完璧に合わせてきました。その一方で、ナンシー・ペロシはワシントンDCのインサイダーであり続けています。不動産、そして株と、ペロシ夫妻は常に正しい投資先を知っています」。
ペロシ夫妻は、ナパバレーにある2500万ドル相当の豪邸、ワシントンDCのウォーターフロントにある200万ドル相当のマンション、カリフォルニア州のパシフィックハイツにある赤レンガ造りの豪邸など、複数の不動産を所有している。
彼女の夫は、サンフランシスコに複数の商業施設を所有しており、その価値は「合わせて5,000万ドルにもなります」とワターズは続ける。
「2018年、ペロシ夫妻の資産は急上昇しました。その年、彼女の財務開示報告書では、1億1400万ドル以上の純資産が明らかになりました。2019年には、ペロシの資産は合計でなんと2億7100万ドルに上り、2020年にはその数字がさらに上がり、3億1500万ドルにもなりました」。
グレン・グリーンウォルド記者も次のように指摘する:
下院議長に就任して以来、ペロシと夫のポールはますます金持ちになっている。その多くは、ペロシが下院議長として多大な影響力を持つ業界や企業の株やオプションの売買時期を決めることで、非常に有利で「ラッキー」な判断をしているからである。
ペロシ夫妻が最も頻繁に株式を売買しているセクターは、断然、シリコンバレーのハイテク産業だ。過去2年間のペロシ夫妻の株取引の75%近くがビッグテック関連で、3300万ドル以上の取引が行われている。
Markets Insiderも次のようにその問題を伝えている:
・・・この取引は大きな議論を呼んだ。というのも、下院司法委員会で反トラスト規制に関する投票が行われる直前だったからだ。最終的には、ハイテク業界の大企業にとって大きな脅威にはならなかったようだ。
ペロシ議長の広報担当者は当時、メディアに対し、(夫が行った株式の)購入については知らないし、彼女自身は株式を保有していないと述べていた。Markets Insiderはペロシ氏の事務所に問い合わせたが、返事はなかった。
彼女は規則に違反したわけではないが、この金融取引は多くの人に怪しいと思われ、ペロシ氏を題材にした2つのミームがすぐにネット上で生まれている。
そして個人投資家たちの間で、ペロシ議長の夫ポールが行う株取引を模倣する「ソーシャル・トレード」が広がっていると米Yahoo! newsが報じている。
ペロシ一族の犯罪の歴史については、今年3月にここでも紹介した。
* * *
米国政府の権力者たちに広がるモラル・ハザードは、米連銀にも蔓延している。今月ここで紹介した通り、ボストン連銀とダラス連銀の総裁は、コロナパンデミックの最中に連銀が経済刺激策を導入する一方で、それと関連した個人的な金融取引を行っていたことがインサイダー取引ではないかという批判を受けて9月27日(月曜)に両総裁は辞任している。
そして10月18日(月曜)、パウエルFRB議長は、2020年10月1日に個人口座から100万ドル~500万ドル相当の株式(バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド株式)を売却していたと、開示された書類を確認した極左雑誌Prospectが報じている。ダウ平均株価が大幅に下落する直前に、パウエル議長はこの株式を売却していた。この他にも、パウエル議長は、2020年に個人口座で26件の金融取引を行っていたことが開示されている。
パウエル議長の個人的な金融取引がスクープ報道された理由は、エリザベス・ウォーレン上院議員ら急進左派勢力がこのスキャンダルを言い訳にしてパウエル議長を解任、もしくは再任を阻止し、民主党が推す社会主義者ラエル・ブレイナード氏と交代させるためではないかと一部では噂されている。
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