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レバレッジド・ローン債券市場を襲うメルトダウン:400億ドルの債券価値が10%の急落

債券市場を襲うメルトダウン

過去10年間で、レバレッジド・ローン市場は約2倍に拡大した。これにより、非投資適格債券(sub-investment grade loans)が過剰に積み上げられてきており、次の不況が押し寄せる際にはこれらが時限爆弾になると警告されている。非投資適格債券は、「ハイイールド債」や、「投機的格付債券」、又は「ジャンク債」とも呼ばれる。

 

バンクオブアメリカ・メリルリンチ銀行は、過去10年間連続でレバレッジド・ローンの最大手事務幹事会社であり、レバレッジド・ローンの発行は同行が独占していると言っても過言ではないほどの主要事業であった。

 

今年6月、ブルームバーグ紙のコメンテーター、ジェームス・クロンビー氏も、「バンクオブアメリカ・メリルリンチ銀行は、これらローンのほとんどを販売した」とツイートしている。

 

しかしそのバンクオブアメリカ・メリルリンチ銀行のCEO、ブライアン・モイニハン氏が6月4日、ニューヨーク経済クラブでスピーチを行い、米国経済には唯一問題点があり、それがレバレッジド・ローンだと警告している。

 

昨年後半、すでにレバレッジド・ローン市場は少なくとも1ヶ月間、フリーズしてしまっていた。というのも、世界経済不況の脅威が高まったため、米国債の利回りが急落したためである。しかし2019年には、「米中貿易戦争の緊張が緩和する」とか「まもなく合意に至る」といったフェイクニュースと、中央銀行が実施した量的緩和のおかげでウォール街は救われ、レバレッジド・ローン市場も今年初めに再開されている。しかし2020年に向けて再び不況の脅威が高まっていることを受けて、ほころびが再び露呈し始めている。

 

少なくとも400億ドルのローンを借り受けている企業50社は、直近の3ヶ月間でそのローン債権の額面価格の10%を失っているとブルームバーグ紙が報じた。(原文記事日本語記事

 

夏の終わりから秋口にかけて市場の流動性が失われつつある中、レバレッジド・ローン市場から大挙して投資家たちが脱出していることが報告されている。国債の利回りが低下していることや、来年には不況に突入する可能性があることから、経済周期が終わりを迎えていることに対する恐怖心が高まっていることなどがその主な理由だ。

 

過去3ヶ月間、ローン市場で最も損害を被った企業には、アムニール・ファーマスーティカルズ(Amneal Pharmaceuticals)とシードリル・オペレーティング(Seadrill Operating)が含まれるとブルームバーグ紙は報じている。アムニール・ファーマスーティカルズ(Amneal Pharmaceuticals)は、2025年が返済期限である27億ドルのローンを抱えているが、額面価格が1ドルあたり約80セントまで下落した。シードリル・オペレーティング(Seadrill Operating)は、2021年に返済期限を迎える26億ドルのローンを抱えており、これもまた額面価格が1ドルあたり53セントにまで下落している。

 

(Source: Bloomberg)

 

損失に関して、ブルームバーグのデータによると、デラックス・エンターテインメント・サービス・グループ(Delux Entertainment Services Group)は、直近の3ヶ月間で1ドルあたり77セント下落し、額面価格が12.5セントまで下落した。これにより、その第一順位抵当権付きローン(first lien loan)の額面価値から6億ドル以上が消し飛んでいる。

 

レバレッジド・ローン市場が1兆2000億ドル規模であることを考えると、400億ドル(そのうち10%に当たる40億ドルが消失したこと)は些細な額かもしれないが、市場にメルトダウンが起き始めていることは見逃せない。

 

「人々は、投資リターンに優れたローンを欲しており、(経済)状況がネガティブに転じた中でリスクをとることにますます慎重になっている」と、イートン・バンス・マネジメント(Eaton Vance Management)のローン部門共同ディレクターのアンドリュー・スヴィーン氏は語っている。

 

ローン市場で最も大きな打撃を受けているのがエネルギー分野である。120億ドル規模の発行済みローンを抱えているが、1ドルあたりの額面価値が10セント以上下落している。次に大きな打撃を受けているのは、一般消費財分野とヘルスケア分野である。両分野を合わせて130億ドルの発行済みローンがあり、これらがすでに不良貸出債権化し始めている。

 

(Source: Bloomberg)

 

ローン市場における引受基準が劣化していることが、経済が減速する際に信用格下げされやすい企業でもローンを借り入れることを可能にしてきた。

 

しかし引受業務を「緩和」するということは諸刃の剣だ。現在の弱含みの経済では、信用格下げを招き、資産管理会社はすでに流動性が失われた市場でローン債権を売らざるを得ない。というのも、資産管理会社のポートフォリオ(多くの場合ローン担保証券=CLO)は、満たさなければいけない特定の格付け基準があるため、これら信用格付けの下がったローン債権を維持することができないためである。

 

つまり、レバレッジド・ローン市場というのは、10年前のサブプライム住宅ローン市場に匹敵する。次の不況が起きる際にはこの重大な不均衡が修正されることになり、これが次の景気悪化を増大させることになる。

 

ローン市場におけるほころびは起き始めているが、現在起き始めているメルトダウンは、ウォール街の金融機関はほとんど注意を払っていない。

 

過剰なレバレッジド・ローンが積み重なっていることや、非金融企業のローンに高いエクスポージャーを抱えていることは、すでに高レバレッジのかけられたアメリカの経済界にとって不確実性を高めており、早ければ2020年に突入する可能性がある次の不況が訪れる際には、これらが(再び)未曾有の内部崩壊を起こす可能性がある。

 

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