ドイツ銀行のニューヨーク社員は諦めの境地：大量解雇まで間近か？
Impressionen von der Hauptversammlung 2018, Foto: Mario Andreya / Deutsche Bank AG
ドイツ銀行の米国本社（所在地：60 Wall Street, New York）では、すでに「店じまい」が始まっているようだとBloombergが報じた。
ドイツ銀行NY本店の46階にある幹部オフィスには段ボール箱が積み上げられ、取引フロアは平日の午前中だというのに無人となっている。コンピュータ・スクリーンは電源が切られ、出社している数人の社員は隠すこともなく転職のために履歴書を競合先の銀行に送付している。それを見て、上司は何も言わない状況だという。ドイツ銀行ニューヨーク本店の社員は、本国ドイツ・フランクフルトの本社からさらに悪いニュースが伝えられるだろうということを、幹部からトレーダーに至るまで誰もが感づいている。
ドイツ銀行CEO、クリスティアン・ゼーヴィング氏は、米国における投資銀行部門が同社の企業アイデンティティにとって欠くことのできない重要な部門であり、JP Morganに対抗しうる欧州の銀行として長期的戦略に位置付けられていると主張してきた。しかし同社のニューヨークにおける投資銀行部門を大胆に縮小しなければ、ドイツ銀行のCEOとして彼自身も続投することはできないと気が付いているはずだ。
先週、ウォール・ストリートジャーナル紙は、ドイツ銀行が数百人のトレーダーを含む2万人規模の大量解雇を行うだろうと報じており、ドイツ銀行の米国オフィスの社員たちは次の準備を着々と進めている。空のデスク、積み上げられた段ボール、トレーダーや若手社員がオフィスを長時間抜け出し、中には戻ってこない人がいることなど、これらは2008年の金融クライシスの時に見慣れた光景だ。
ドイツ銀行の上級幹部の何人かは、既に退社しているか間もなく退社する計画である。その中には2017年に一度定年退職した幹部で再雇用されたピーター・ゼルマン氏がいる。彼は下降気味であったドイツ銀行の米国株式部門を立て直すために再雇用されていた。
ニューヨーク・オフィスの幹部たちは、米国部門が売却、大幅削減、もしくは切り出されるかもしれないという暗雲が立ち込めた中、1年以上勤務してきた。
全ての部門が細かく審査される中、典型的な内輪もめは、誰が特定の経費を負担すべきかということにより比重が置かれていた。2017年に株式部門を再建するために再雇用されたピーター・ゼルマン氏は、昨年、彼の不採算事業に割り振られていた3億ユーロにのぼるコストを、債権部門に移し替えるよう財務担当のディクジット・ジョシ氏を説得しようとしたが失敗に終わったと、同案件の説明を受けた人々が語った。
CEOのゼーヴィング氏は、常に（そして公に）彼が昨年CEOに就任してから米国の投資銀行部門にコミットしていると言い続けている。しかし、同行の収益性が消滅しかけである中、投資家や規制当局の信頼を回復できていない。ドイツの財務大臣が推進しようとしたCommerzbank AGとの合併も失敗に終わった今、株主は別の再建計画を執拗に求めているが、多くの幹部たちはそれを求めていない。
ゼルマン氏は、既に退社することを決めた数十人の幹部の一人であると内部の人間たちは言う。米国ドイツ銀行の証券業務部門CEO、ジア・ヒュッケ氏が勤務している姿は、何週間も目撃されていない。10年前に入行し、南北アメリカ事業トップで、米連邦準備理事会との関係を監督するトム・パトリック氏も、既にオフィスの整理を始めている様子であるため、ドイツ銀行は彼の後任を検討中である。
シニアトレーダーたちの何人かも退社を決めたようだ。
長年トレーダーとして勤務してきたブラッド・クルツマン氏、クレイグ・ベンチ氏、そしてパウウェル・フレイザー氏は、既に同行を退職しており、彼らよりも下の２級、３級の幹部たちも数十人単位で彼らに続いて退職している。しかし彼らの多くが、新しい職を見つけられていない。彼ら米国部門の管理職たちは、収益性を高めるためにトレーディング部門をより細分化する提案を行ってきたと語る。彼らは退職の手続きを進めながら、シニア幹部たちが彼らの意見を聞き入れず、今になって大なたを振るう必要があることを嘆いている。
現在、南北アメリカの株式取引部門の再編成を任されているのは、同部門の共同トップであるアシュリー・ウィルソン氏だ。しかし、彼女の職務期間もそう長くはないだろう。既に競合他社に転職を打診しているかもしれない。
ドイツ銀行の米国部門は、まさに沈没する船からネズミが一斉に逃げ出すような状況に陥っている。転職先が見つかったり独立する技能やコネを持っている人たちは、既に退社している。今年、ドイツ銀行は米連邦準備理事会のストレステストをどうにかパスしたが、Commerzbankとの合併が失敗した今、CEOのゼーヴィング氏にとって、同行の不採算ビジネスである投資銀行部門を救う言い訳は残されていない。残されている道は、同部門の中で収益性のある一部だけ選び抜くか、同部門を売却または完全閉鎖するかのどれかだだろう。
Photo courtesy of Deutsche Bank
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