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オールドメディアが伝えない海外のニュース

【連載】エプスティーン事件Part 3:火消しに躍起のクリントン元大統領

エプスティーンはどのように億万長者になったのか

先週、連邦検事がエプスティーンを再逮捕した際、検察は起訴状の中で彼のことを「ほぼ無制限の資金源がある人物」と説明している。また、「エプスティーン事件Part 2」でも紹介した、保守派コメンテーターとして有名なアン・コルター氏は、そもそもエプスティーンがどのように何十億ドルもの資産を持つ大富豪になったのか、彼の富の源泉を調べるべきだとラジオ番組790 KABCで発言している。

同様に、元CIA情報捜査官のフィリップ・ジラルディ氏も、いかにエプスティーンが巨額の富を築いたかを明らかにすることで、今回の事件の真相を暴く大きな手がかりになるだろうと指摘している。というのも、今回、再逮捕されたエプスティーンを、メディアはこぞって「ビリオネアー(10億ドル以上の資産を持つ富豪)」と紹介しているが、本当に彼はビリオネアーなのか、そしてどのように富を築いたのかは不明と言われている。

 

エプスティーン事件Part 1」を読む

エプスティーン事件Part 2」を読む

 

まず、過去にフィナンシャルタイムズ紙が、2011年の有価証券報告書を調べ、エプスティーンの富の源泉について報じている。

 

エプスティーンの金融業界でのキャリアは、まず投資銀行ベアスターンズの当時の会長、アラン・グリーンバーグ氏の息子の家庭教師になったことからスタートする。優秀な数学の教師だったエプスティーンは、そこで会長に気に入られ、ベアスターンズに入社する。そして1981年にベアスターンズを退社し、自身の金融サービス会社Financial Trust Companyを始める。そこでビリオネアの富豪らに対して、資産運用サービスを数十年行なっていたと報じられているが、具体的な顧客名やエプスティーンが何を行なっていたかは不明である。

 

2011年の同社の有価証券報告書によると、彼の非公開企業Financial Trust Companyは、Apollo Global Managementの創業者でビリオネアのレオン・ブラック氏が支援するEnvironmental Solutions Worldwide(ESW)社の6.1%の株式を取得していたとある。ESWは触媒コンバーター製造企業。

 

ESW社自体がいわくつきの過去がある。2002年、当時の同社会長であったベングト・オドナー氏が、自社株を操作し150万ドル分の利益を上げた詐欺事件に関与しているとして米証券取引委員会(SEC)に訴えられている。1年後に決着したが、オドナー氏は民事罰として2万5000ドルの罰金を支払うことが命じられた。ちなみに、ESW社は、エプスティーンがフロリダ州で性犯罪者として有罪になった2008年の数年後に、エプスティーンの会社からの出資を受け入れている。

 

エプスティーンとブラック氏の関係はこれだけにとどまらない。2012年以降、10年以上にわたって「レオン・ブラック家族財団」の重役の職に在任していたことが税務局(IRS)に提出された書類で明らかとなっている。同財団の広報担当者は、エプスティーンは2007年7月に辞任したこと、そして「管理エラーにより」彼の名前が税務局への提出書類に5年間、誤って記載されていたと主張している。2015年にエプスティーンが署名をしてフィナンシャルタイムズ紙に提出した文書でも、そのことが確認されている。

 

エプスティーンは、スティーブ・J・ホッフェンバーグ氏とレスリー・H・ウェクスナー氏らとも協力して財を築いたようだ。ホッフェンバーグ氏は、出資金詐欺で有罪判決を受けた人物であり、ウェクスナー氏はアパレル業界の有力者。

 

「エプスティーンの富の源泉は、彼の優れた数学の能力というよりも、二人の人物とのコネクションにあったようだ。その一人はスティーブン・J・ホッフェンバーグ氏。かつてニューヨークポスト紙のオーナーでもあったが、悪名高い4億6000万ドルという巨額の出資詐欺を行なった罪でのちに有罪判決を受けた。もう一人はレスリー・H・ウェクスナー氏。彼はアパレルチェーンのThe Limitedを含む小売りチェーンの創業者でビリオネアー。さらに(女性下着メーカー)ヴィクトリアズ・シークレットを所有する企業のCEOでもある。

 

ホッフェンバーグ氏は、1980年代にエプスティーンが行なった2件の買収案件のパートナーでもあった。これら2件の買収は失敗に終わったが、その1件はパンナム航空(Pan American World Airways)に対するものだった。ホッフェンバーグ氏は、彼が有罪判決を受けた出資詐欺にエプスティーンも関わっていたと後に主張したが、エプスティーンはこの件で起訴されていない。エプスティーンは、ウェクスナー氏とは金銭的そして個人的な強いつながりを構築していた。ウェクスナー氏の周囲の人たちは、彼とエプスティーンとのつながりに困惑していた。エプスティーンに出資した人物として一般公開されているのはウェクスナー氏だけである。New York Times 」

 

ウェクスナー氏は、2003年に雑誌Vanity Fairに掲載された記事で次のように語っている:

 

「彼(エプスティーン)と私は共にパターンを認識する能力を備えていると思う。しかし、ジェフリー(エプスティーン)は、政治と金融市場のパターンを理解し、私はライフスタイルやファッション・トレンドのパターンを理解するという違いはある」。

 

ウェクスナー氏の周囲のスタッフたちは、同氏とエプスティーンのつながりを不思議に思っていたようだ。

 

The Limited社の元副社長ロバート・モロスキー氏は次のように証言している:

 

「誰もが、エプスティーンの魅力が一体何なのか不思議に思っていた。私は調査を行い、彼が高校生向けの数学の塾講師だったことを突き止めましたが、それ以外は何も彼に関する情報が出てきませんでした。全く彼に関する情報はありませんでした」。

 

先週ニューヨークタイムズ紙が報じたように、エプスティーンの「無制限の資金源」というのは蜃気楼なのかもしれない。彼は紛れもなく非常にお金持ちではあるが、「彼がビリオネアー(10億ドル以上の資産を持っている人物)であるという証拠はほとんどない」。

 

エプスティーンは、彼の投資会社に出資することに興味がある人たちに対して、最低10億ドル以上の出資でないと受け付けないと語っていた。しかし彼の投資企業は、株主から8800万ドルの出資金を受けていたと報じられており、2002年に法廷に提出された文書から従業員は20名とある。これら数字は、当時報じられていた数字よりもずっと低い。

 

エプスティーンの詳しい事業内容は不明だが、彼の会社Financial Trust Companyは、2008年に倒産したDB Zwirn & Coにも1億2100万ドルを投資し、さらに世界金融恐慌を引き起こしたベアスターンズのファンド(High-Grade Structured Credit Strategies Enhanced Leverage Fund)にも出資していた。

 

エプスティーンは、2008年に起きた世界金融恐慌で多大な金銭的被害を受けただけでなく、同年には未成年少女に対する性暴力の罪で有罪判決を受け、彼の多くの知り合いが彼から離れていった。

 

「エプスティーンにとってキャリアのスタート地点を与えてくれた銀行ベアースターンズは、金融恐慌が起きた時に依然として彼の投資先でもあった。同行に対してエプスティーンが後に起こした訴訟によると、2007年8月時点でエプスティーンは同行の約17万6000株をコントロールしており、それは当時の時価で1800万ドル近くあった。

 

エプスティーンは、2007年8月、そのうち5万6000株を1株101ドルで売却した。彼は残る12万株を2008年3月に売却したが、すでにベアスターンズは倒産が明らかとなっており、2万株は1株35ドル、そして残りは1株3.04ドルという売却価格だった。同社株で巨額を損失しただけでなく、エプスティーンはベアスターンズのヘッジファンドにも5000万ドルを投資していたがそれも全て失った。 New York Times

 

エプスティーンの正確な保有資産額をつかもうと、Bloombergが調査し次のように報じている:

 

「エプスティーンの現在の事業内容や顧客についてほとんどが不明であり、確実に資産価値がわかるものは彼の不動産だけである。彼の保釈のための聴聞会を前に連邦政府に提出された文書によると、彼のマンハッタンの大豪邸は、少なくとも7700万ドルの市場価値があると見積もられている。

 

彼は、ニューメキシコ、パリ、米国バージン諸島にも不動産を持っており、バージン諸島ではプライベート・アイランドも所有している。さらに、フロリダ州パームビーチには1200億ドル以上の価値があると見積もられている広大な敷地を所有している。連邦政府当局によると、これらの不動産の間を、彼は自家用ジェットで移動し、少なくとも15台の車を所有している。 Bloomberg

 

Bloombergはまた、今年初めに、ドイツ銀行がエプスティーンとの関係を絶っていたと報じた。情報源は事情に詳しい人物とだけ報じられており、エプスティーンがドイツ銀行にどれくらいの金額をどれくらいの期間、投資していたのかは不明である。

 

 

火消しに必死のクリントン元大統領

 

先週末7月6日(土曜)にエプスティーンが逮捕され、その週末が開けた7月8日(月曜)、ビル・クリントン元大統領は声明を発表した。その声明で、クリントン元大統領は2002年と2003年に「ジェフリー・エプスティーンのプライベートジェットに合計4回しか乗っていない」と発表し、しかも全てシークレットサービスが同乗していたと説明した。しかし、調査報道を行なっているジャーナリストのコンチータ・サーノフ氏の報道内容Fox Newsが入手した飛行記録により、この声明の内容は嘘であることが判明している。

 

ビル・クリントン元大統領の広報担当者が、ツイッター上で発表した声明:

 

 

 

主要メディアの一つで、全米4大ネットワークテレビ局の一つNBCは、月曜夜のニュース番組で、「クリントン元大統領は4回しかエプスティーンのプライベートに乗っていない」、と声明通りの主張を報道した。

 

しかしサーノフ氏はこれが誤りであると指摘する。サーノフ氏は同月曜夜にFox Newsに出演し、次のように語っている:

 

「パイロットたちが記録しているログ情報から判明しています。これらは様々なパイロットが記録したログで、クリントンが搭乗した別々のフライトのログです。彼はエプスティーンの飛行機に27回乗っていることが判明しています。(略)

 

シークレットサービスが同乗する時も多くありましたが、同乗していないフライトも数多くありました。(略)

 

残念ながら、彼は真実を語っていません。

 

まず、昔最初に彼が逮捕・捜査された時に彼を弁護した一人、ジェラルド・ルフコート弁護士が、書簡を書きそれが公表されています。その書簡では、ルフコート弁護士はエプスティーン氏が「クリントン・グローバル・イニシアチブ」の初期の出資者の一人であると説明しています。この件に詳しい人物によると、エプスティーンはクリントン大統領に400万ドルを寄付しています」。

 

このことは、2007年に当時エプスティーンを弁護していたアラン・ダーショウィッツ弁護士とルフコート弁護士が連邦検事に提出した別の書簡でも確定している。この書簡には次のように書かれている:

 

「エプスティーン氏は、クリントン・グローバル・イニシアチブを創設した当初グループのメンバーの一人である。(このプロジェクトは)世界の最も喫緊の課題に対する革新的な解決策を考案し実行するため、世界の指導者たちを一つに集結させるためのものである」。

 

サーノフ氏が出演した番組はここで視聴できる:

 

 

さらに具体的な報道では、2002年、ビル・クリントン大統領とエプスティーンは、未成年者への性的暴行の罪で現在起訴されている俳優のケビン・スペイシーらと共に、彼のプライベート・ジェット(記事冒頭の写真。「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれていた)に乗りアフリカまでの長距離フライトに参加していることも明らかとなっている。そのフライトには、「マッサージセラピスト」として雇用されていた、肌を露出した多くの若い少女も搭乗していたと報じられている

 

ジェフリー・エプスティーンに関するWikipediaのページでも、何者かがクリントン元大統領との関係を示す部分を削除しているのが見つかった。エプスティーンが再逮捕された翌日の日曜、「エプスティーンは、ビル・クリントン、ケビン・スペイシー、そしてクリス・タッカーを彼のプライベート・ジェットでアフリカまで連れて行った。飛行記録では、ビル・クリントンはエプスティーンの飛行機に26回乗ったことが示されている」という文章が改変されていた。まさに翌日の月曜、クリントン元大統領の広報担当者が否定した内容に関することだ。同じWikipediaのページで、ドナルド・トランプ大統領に関する部分は変更されていない。

 

 

エプスティーン事件Part 4」へ続く。

 

Photo from Fox News

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