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香港から民間資金が大量流出:終わりの見えないデモに市民の不安が加速

香港の大規模デモは11週目に突入した。デモ活動が長引く中、香港の市民たちは、自分たちの預貯金がもはや安全ではないと考えるようになり、大量の資金が香港から流出する事態に発展している。先週金曜には、香港デモのリーダーの一人が、中国への抗議として預金を香港の銀行から引き出そうと呼びかけていた。

 

香港の活動家リーダー、明日銀行預金を全額引き出すよう呼びかけ

 

香港ドルは、長年にわたって米ドルにペッグされていた。しかしヘッジ・ファンドのHayman Capital Managementでマネージング・パートナーを務めるカイル・バス氏は、自社の投資家向けに書簡を発表し、香港が「時限爆弾」を抱えた状態であると警告している。

 

その書簡には「香港における静かなるパニック」という題名が付けられている。以下はその書面の冒頭部分を翻訳したもの:

 

各位:

 

香港はその通貨を米ドルにペッグし通貨政策の権限をアメリカの連邦準備制度理事会に委譲して以来、過去36年の大部分において、香港は中国大陸および東南アジアに投資するための金融および政治的なオアシスであった。今日、新たに喫緊の経済的かつ政治的なリスクが、この香港が数十年に渡って享受してきた安定性を脅かす状況となっている。これらリスクは非常に大きく、両面において迅速に注意を払う必要がある。この書簡で、我々は次の項目を説明する:香港に差し迫った危機の起源、簡略な香港の歴史、通貨理事会/ペッグの経済学、米国が香港と締結している経済的かつ政治的関係性を定めた合意内容、習近平の中国がいかに香港政府に強制し、最恵国待遇の貿易特権を失いたくなければ、自治を維持する合意を反故にさせようとしているか、そしていかに香港を中国と同じように扱おうとしているか。

 

デモ活動が始まった当初は香港市場も安定していたが、先週の香港国際空港を占拠したデモや中国政府からの強まる圧力を受けて香港市場が停滞し始めると、香港市民たちは自分たちの個人資産を安全な場所へ移動し始めている。

 

香港にある経済系コンサルティング会社Lantau Groupのパートナーであるサラ・フェアハースト(52歳)さんは、デモを懸念して、先週20万香港ドル(約270万円)を英ポンドに換金したと語る。

 

香港に12年間住んでいるフェアハーストさんは、彼女の勤務先の近くで警察が催涙ガスを使う動画を見て、特に不安になったと言う。「とても不安定な状況です。何が起きるかわからない。私の資産がここで身動きが取れない状況にだけはしたくない」と語っている。

 

観光業と景況感が打撃を受けているため、経済指標データも悪化している。一方、デモ活動により香港で「一国二制度」が維持されるかを疑う声が高まっているとウォール・ストリート紙が報じている

 

 

先述のバス氏の見解はまだ全員一致の意見ではないが、1986年以来ずっと香港ドルが米ドルにペッグした体制が、危機にさらされていると信じる人は彼だけではない。建設資材を輸出する事業を展開しているミン・チュン氏(42歳)は、香港で不動産を購入する計画を取りやめにしたと言う。代わりに、400万香港ドル(約5400万円)を米ドル建ての保険商品に投資したという。その理由は、香港市場をもう信用していないからとしている:

 

「香港での不動産投資に比べてより安全な投資だ。デモのせいで香港市場を信用していない」とチュン氏は言う。また、同氏は長年、香港ドルが米ドルにペッグした状態が崩壊するのではないかと心配しているとも語り、米ドルの方が安全だと考えている。

 

 

こうした状況は、海外送金や個人間の国際送金のデータを見るとより鮮明だ。明らかに香港に流入する資金よりも、流出する資金の方が多い。

 

ロンドンを拠点に、主に個人および小企業を相手に国際銀行間送金を提供しているTransferWiseによると、デモが始まって以来ここ10週間で、資金の流出が急増しているという。それ以前は、香港からの資金の流出と流入は安定的だったという。

 

同社によると、8月のデータでは、香港へ送金する1ドルに対して、香港から海外へ送金されるのは2.64ドルだという。

 

先週の香港国際空港で起きた暴力的な衝突から一転して、日曜には比較的平和なデモが行われている。報道によると、170万人が道路を行進したと言われている。

 

しかし中国政府は軍隊を香港との境に駐留させており、いつ中国政府が軍事力によるデモの沈静化に乗り出すか予断を許さない状況であることは間違いない。

 

 

 

 

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