2008年の金融危機を予測したスティーブ・アイズマン氏、「中央銀行が世界不況を阻止できるとは思わない」
2008年の米サブプライム・ローン市場の破綻を予言していた実在の人物たちを映画化した『マネー・ショート 華麗なる大逆転(原題:The Big Short)』−−その主人公の1人であるマイケル・ビュリー氏(映画では彼の役を俳優クリスチャン・ベイルが演じた)は、今月行われたBloomberg紙とのインタビューの中で、次の金融市場の崩壊はインデックス・ファンドが引き起こすと語っている。そのことについてはここで報じた:
米サブプライム・ローン市場の破綻を予言したマイケル・ビュリー氏、次の破綻はインデックス・ファンドが引き起こす
そして今週、この映画のもう1人の主人公で、同様に2008年の金融危機を予見していたスティーブ・アイズマン氏(映画では彼の役を俳優スティーブ・カレルが演じた)は、今週、Bloomberg TVに出演した。アイズマン氏は、現在Neuberger Bermanでポートフォリオ・マネジャーをしている。
この番組で、アイズマン氏は、現在の産業界の低迷がグローバル経済不況につながるのか、そして各国の中央銀行は、世界経済がまた収縮期に突入することから救うことができるかについて議論した。
まず、アイズマン氏は、世界の購買担当者景況指数(PMI)が悪化していることに言及し、それが先進国の間ではすでに製造業不況に突入しているサインであることから語り始めた。
このPMIの悪化が引き金となって、この先数ヶ月の間に世界経済が不況に突入したとしても(アイズマン氏はその可能性は十分あると考えている)、前回の金融危機の後に起きた壊滅的な不況ほどは悪くないだろうとアイズマン氏は語っている。その理由の一つとして、金融システムは2007年当時と比べて何倍も安全になっているという。
世界の産業界が低迷していることについて疑いの余地はない・・・それがグローバル経済不況へと発展するか否かについては議論の余地がある。(中略)
たとえ不況になったとしても、前回の(金融危機の)ように制度そのものが崩壊するということはないだろう。その理由は、銀行はずっと(当時よりも)健全だからだ。
米中間で貿易交渉が合意にいたることがグローバル経済を救うことになるかと質問されると、アイズマン氏は、貿易戦争は枝葉の問題(余興)にしかすぎないと語る。
投資家たちは米中間の貿易戦争とそれが世界の経済成長に及ぼす影響に固執してしまっているが、アイズマン氏は、産業界の低迷が、貿易戦争が始まるよりも前にすでに始まっていたと指摘する。
それよりも、アイズマン氏は各国の中央銀行が行なっていることの方に興味があるという。例えば、(金融政策効果の)「波及経路」は複雑であるため、中央銀行による経済刺激策が実経済に影響をもたらすには、1年はかかるとエコノミストたちは主張する。しかしアイズマン氏は、金利がすでに非常に低いため、経済刺激策そのものに果たして効果があるのか疑わしいと考えている。
産業界の低迷は、貿易戦争が過熱するよりも前から起きていた・・・それよりも興味深い話題は、世界の中央銀行が何を行なっているのかということだ・・・エコノミストたちは、波及効果には少なくとも1年はかかると言う。
しかし真の疑問は、これだけの低金利で波及効果が機能するだろうか?ということだ。私はそれを疑っている。
ゼロ金利政策およびマイナス金利政策を10年間続けてきた結果、あふれた「タダのお金(free money)」がグローバル経済に流れ込んだ。その結果、投資会社は紹介された投資案件すべてに出資し、その一方で、企業は自社株買いを行うために社債を発行して資金を調達するというインセンティブが与えられたとアイズマン氏は語る。
これほどの低金利になり、マネーはタダになった・・・そのため全ての投資案件は成立し、全てのプロジェクトは資金提供を受け、全ての株式は買い戻され、全てのVC案件は成立し、全てのプライベート・エクイティー案件は成立した。
これ以上金利を下げることがなぜ問題解決になるのか?私は疑問を抱いている。本気でそう思っている。
アイズマン氏へのインタビュー番組はここで視聴することができる:
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