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PayPalがFacebookの仮想通貨Libraからの脱退を表明

PayPal

Facebookが計画している安定的な仮想通貨Libraが頓挫している。当初、Libraのプロジェクトを支援することを表明していたクレジットカード大手のVisaやMastercardも、米国政府や欧州政府がLibraに対して強く非難したことを受けて再考しているとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が報じた。その報道が行われた数日後の先週金曜、オンライン決済サービス大手のPayPalもまた、Facebookが仮想通貨を元にした世界的な決済ネットワークを展開するべく複数の企業を集め進めている計画から脱退すると発表した。金融サービスを根底から覆そうとするFacebookの野望にとって手痛い一撃となっている。

 

PayPalは具体的な脱退理由について言及していないが、「現時点では、これ以上Libra協会に参加することを見送る決定を下した。十分なサービスを受けていない人々に金融サービスを平等に提供することに努めつつ、当社の今あるミッションと優先事業を発展させることに継続して集中する」と語っている。

 

またPayPalが発表した声明ではさらに次のように述べている:

 

我々はLibraの志を引き続き支援し、将来にわたって協力するための様々な方法について会話を続けることを楽しみにしている。FacebookはPayPalにとって長期的かつ価値ある戦略的パートナーであり続けてきている。これからも様々な局面で我々はFacebookとパートナー関係を続け、協力し続けるつもりである。

 

Libra協会でポリシー兼広報責任者を務めるダンテ・ディスパート氏は、The Verge紙に対して送った声明の中で、同NPOは「世代間決済ネットワークを構築すること」にコミットしていることを再確認している。ディスパート氏はさらに、Libra協会の本部が置かれているスイスのジュネーブで、10月14日に開催される理事会が予定通り開かれることを確認した:

 

金融サービスを十分に受けていない何十億もの人々に対して、近代的で、抵抗が低く、セキュリティが高い決済ネットワークを構築することは、旅の行程であって目的地ではない。Libraプロジェクトのような世代間決済ネットワークを構築するという旅は、容易な行程ではない。我々は、変化を起こすことは困難であると認識しているし、この旅を開始した各組織は、Libraが約束するような変化を受け入れることにコミットすることで、どのようなリスクそして見返りがあるか、各社独自に評価を行わなければいけないこともわかっている。10日後に開かれる第1回Libra理事会を楽しみにしている。その理事会が開かれた後、参加することに情熱的な興味を示してくれている1500の組織の詳細も含めて、更新情報を共有するつもりである。

 

PayPalが脱退を決めたことは、必ずしも驚きではない。先週木曜、フィナンシャル・タイムズ紙は、規制当局の注目が高まる中、PayPalが同プロジェクトから距離を取り始めていることをすでに報じていた。PayPalは、先週金曜、ワシントンDCで開かれた会議を欠席するつもりであるという意思表示をすでに行なっていたとも報じられている。The Verge紙は、Facebookの幹部らがLibraに対して相当な反発が起きていることに対してほとんど関心を払っていないということが、少なくともPayPalが抱く一つの大きな懸念であると指摘している。もう一つの大きな懸念は、Libraがどのようにマネー・ロンダリング対策を行うかということである。

 

皮肉だったのは、Libraのアイディアが、元PayPal社長のデービッド・マーカス氏が考案したものだということだ。彼は2014年、Facebookのメッセンジャー部門を統括するために同社に入社している。そして2018年、彼はFacebook社内でビットコインやその他の仮想通貨の基礎となる技術であるブロックチェーンを応用した技術開発を行うためのチームを結成している。

 

PayPalと同様、Libraは個人間やオンラインでの商品・サービスに対する支払い方法として利用されることを想定している。しかしPayPalと異なるのは、Libraが既存の決済インフラ上で実行されるだけでなく、実在する資産や通貨を後ろ盾にしたブロックチェーン・ネットワーク上においても実行されるということだ。このLibraのブロックチェーン・ネットワークはまだ開発されていない。

 

Facebookがデジタル決済市場に参入することは、仮想通貨のエコシステムをひっくり返すことになる脅威である。Facebookを毎年利用するユーザ数は、PayPalのユーザ数の約10倍である。これら巨大なユーザに対して金融サービスを提供することは、PayPalにとって大きな魅力であり、そのためLibraにも早期から参画していた。PayPalは、Facebookの既存ネットワーク上における決済機能の強化も行なっている。例えば、今年3月に発表されたアプリ内における新たなショッピング機能などである。Libraは、両社の関係をさらに強化するものと思われていた。

 

今年6月、PayPalのCEO、ダン・シュルマン氏は、ブログに次の投稿を行なっていた:

 

当社の20年以上にわたる決済事業に関する専門性は、Libra協会に価値を貢献するだけでなく、その他の主導的立場にある組織と協力し、彼らから学ぶ機会を我々に与えてくれると信じている。

 

しかし現在、このブログ投稿は削除されている。

 

おそらく、PayPalがLibra協会から脱退する最大の理由は、Libraが6月に発表されて以降、米国および欧州の政治家や規制当局者がすぐさまLibraへの批判を行なったことと関係している。Facebookやこれに参画する企業が、どのようにユーザのプライバシーを保護し、犯罪者やテロリストたちが資金洗浄のためにそれを使うことをいかに防止するかに対して、各国の政治家や規制当局者は懸念を表明していた。さらに、この夏、米国財務省は、各社に対して資金洗浄防止対策とLibraがその対策の中にどのように組み込まれるのか、漏れのない完全な概説の提出を求める政府書簡を送っている。PayPalはその書簡を受け取った1社であるとWSJ紙は報じている。

 

PayPalが抜けることで、必ずしもLibraの勢いが終息してしまうわけではない。しかしクレジットカード大手のMastercardやVisaもLibra協会から脱退することを検討していると報じられる中、PayPalが正式に脱退を表明したことは今後のLibra協会の運営にとって大きな一撃となったことは間違いない。

 

また、突然Libra協会からPayPalが脱退するニュースが、他の仮想通貨に対してどのような影響をもたらすかについては不透明だ。金曜にこのニュースが報じられた際はビットコインの価格は大きく変化せず安定していたが、土曜以降は数%の下落が続いている。

 

 

 

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