ニュースレター登録

Loading

オールドメディアが伝えない海外のニュース

米中通商交渉は「大統領選挙が終わるまで延期したほうがいい」とトランプ大統領:この発言を受けてアメリカ株式市場は急落

米中通商交渉は「大統領選挙が終わるまで延期したほうがいい」とトランプ大統領:株式市場は続落

Trump

これまで、日米の大手メディアは米中間の通商交渉が、「第1弾(フェーズ1)」と呼ばれる一部合意にまもなく達すると報じてきた。しかし本日、そんな楽観論が悲観論に変わり、アメリカの株式市場は急落した。(ただし、ブルームバーグ紙だけは「第1弾(フェーズ1)の貿易交渉の一部合意は、まもなく破綻すると中国政府の高官が密かに疑っており、両国が包括的な最終合意に至る可能性は実質上ゼロである」と10月末の時点で既に報じていた。)

 

ロンドンを訪問中のトランプ大統領は、本日、記者会見で次のように語った

 

中国との通商交渉は、これ次第である。つまり、私が交渉を行いたいかどうかということだ。(略)

 

私は期限を設定していない。もし君たち(記者)が真実を知りたいと思っているなら、ある意味、(来年の大統領)選挙まで待った方がいいかもしれないと私は考えている。しかし、私はそうとは発表しない。私はそういう考えを持っているだけだ。

 

もしトランプ政権がなにもアクションを取らなければ、12月15日、1600億ドル分の中国製品(主に消費財)に対して15%の追加関税が自動的に課されることになる。

 

このトランプの発言を受けて、ここ数週間、米中通商交渉について楽観論が主流だったウォール街で、突然、悲観論が広がり始めており、大恐慌以来、最悪の12月となった昨年の悪夢の記憶が蘇ってきている。

 

トランプ大統領の発言が、交渉戦術の一つなのか、それとも本当に当分の間、交渉を完全に取り止めるのかは不明である。深読みするのではなく、発言をそのままの意味で解釈すれば、「(通商交渉は)来年一杯、世界貿易にとって半永久的な様相になる」とBMO Capital Marketsの戦略部門責任者であるイーアン・リンゲン氏は予想している

 

連銀が積極的に第4弾の量的緩和(QE4)を実施しているため、トランプ大統領は対中強行姿勢を貫き、実際に12月15日に1600億ドル分の中国製品に15%の追加関税を課す余裕はあると考えられる。

 

一方、ウォール街のストラテジストの1人、マニュライフ生命のマネージング・ディレクター、スー・トリン氏は、「12月15日に予定されている通り関税が引き上げられれば、市場にとって非常に大きなショックとなるだろう。(略)トランプは、『クリスマスを盗んだグリンチ』になる」と語っている

 

さらに1週間前までアメリカの株式市場が史上最高値を更新する状況を楽観的に捉えていたウォール街のアナリストたちは、本日、ブルームバーグTVに出演して以下のようなコメントを行なっている

 

Deepblue Global Investmentのチーフ・インベストメント・オフィサー、トングリ・ハン氏:

  • 「最近起きたことは、中国の指導者たちにとってこの通商交渉をより高くつくものにする。そのため、1、2ヶ月という短期的には、暗い見通しであると私は予想している」
  • 「市場全体を通して、リスク・オフになるのは確実だ」

 

スタンダードチャータード銀行のチーフ投資ストラテジスト、スティーブ・ブライス氏:

  • 「投資家たちは、多少リスクを下げるタイミングだ。ベスト・シナリオだったとしても、来年初頭までプレッシャーはかけられた状態が続くように見える」。投資家へのメッセージは、「株式のエクスポージャーを多少下げたほうがいいかもしれない。絶対に現在の段階で市場を追いかけてはいけない。もし5〜7%の(株式市場の)引き戻しが起きれば、この先数週間以内にそうするよう試みるべきだ」
  • 長期的にはブライス氏は楽観的:「米中通商交渉は、いずれなんらかの合意に至るだろう。そうすれば不安定性が軽減され、世界経済の成長を助けることになる」

 

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、ケリー・クレイグ氏:

  • 「主要な懸念事項は、まだ調印していない通商交渉の合意について、市場は既に価格に織り込んでしまっているということだ」
  • 「通商交渉に関しては既に多くの楽観論が組み込まれてしまっており、この先数ヶ月にわたって、それが市場に大きく重しとしてのしかかっている。一方、こうした不確実性を埋め合わせるために、世界経済はさらに回復する必要がある」

 

シンガポール銀行の投資戦略部門責任者、イーライ・リー氏:

  • 「トランプ大統領が、南米および欧州へ新たな関税の圧力をかけているのは、中国との通商交渉を前に、彼が『関税をかけることに積極的な男』というイメージを誇示するためである可能性が高い」
  • 「経済は非常にデリケートな状況であり、関税をあげれば、不況リスクを徐々に高めることになる。トランプ政権は、2020年の大統領選挙へ向かう中でこうした状況を避けたいと思っているはずである」

 

Pepperstone Groupのリサーチ責任者、クリス・ウェストン氏:

  • 「私たちは混乱に直面する可能性がある」とクライアント向けのメモの中でウェストン氏は記している。「S&P500は約2%下落する可能性があり、人民元、オーストラリア・ドル、韓国ウォンを含む通貨もまた値動きが起きる可能性が高い」
  • 「特に2020年に通商交渉を再開する合意が行われれば、近い将来、(緊張がほぐれ)株価の急反騰が起きる可能性がある」

 

Barings Investment Instituteのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クリストファー・スマート氏:

  • 「たとえ通商交渉が合意に至っても、私たちが中国に対して抱えているほとんどの問題を解決することにならない。それは市場が時間をかけて反映させなければいけないことである。それどころか、(通商交渉に合意することは)二国間の関係をより困難なものにするだろう。なぜなら、(合意に達することで)私たちは(中国に対する)関税を引き下げるためである」
  • 「大統領が会談を行うのに必要なロジスティックスの調整を考えると、今年中に合意に達するには時間が足りなくなってきている。救いなのは、各国の中央銀行が緩和政策を導入しており、市場に流動性を投入していることである。これにより、投資家たちが懸念している景気後退は先延ばしされている」

 

Investecのチーフ・エコノミスト、フィリップ・ショー氏:

  • 「現在の状況は非常に不安定である(ボラティリティが高い)ことを忘れてはいけない。それは行ったり来たりを繰り返す。ある日に起きた出来事を取り上げて、それだけを重視するべきではない」

 

【関連記事】

連銀による金利引き下げの翌日に米国株式市場ははやくも下落:トランプ大統領は「問題は中国ではなく連銀だ!」とツイート

モルガン・スタンレーのストラテジスト「先週金曜の株価が最高値。この先は売りが続く」と予測

 

 

BonaFidrをフォロー

執筆者

コメントを残す

error: コンテンツは保護されています。