エプスティーンの元ビジネス・パートナーが「エプスティーンは自分のことをスパイと認め」、「彼はアンドルー王子の弱みを握っていた」と語る
今年、アメリカで起きた重大事件の一つは、まちがいなくエプスティーン事件だ。彼はこの夏に再逮捕され、ニューヨークの留置場での勾留中に謎の「自殺」を遂げている。しかしその死は不可解な点が多く、他殺の可能性が報じられている。また、MITメディアラボのディレクターであった伊藤穰一氏が退任に追い込まれ、イギリスのアンドルー王子が公務から引退に追い込まれるなど、エプスティーンに関わった政・財界、学術界、社交界の「上流階級」の人たちは次々に名声を失い、公の場から追われていることも、エプスティーン事件の重大さを物語っている。
エプスティーンの死により真実は闇に葬られようとしているが、彼をよく知る人物の1人、スティーブン・ホッフェンバーグ氏が、全米でベストセラーになっている新刊『Epstein: Dead Men Tell No Tales(エプスティーン:死者は何も語らない)』の中で彼が知るエプスティーンの秘密を語っている。
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スティーブン・ホッフェンバーグ氏は、1996年にアーカンソー州でFBIにより逮捕され、18年間、刑務所で過ごした。罪状は投資家に対する詐欺行為。同氏はエプスティーンのビジネスパートナーとして、債権回収企業Towers Financial Groupを運営していた。しかしこの会社は表向きの顔であり、この会社を利用して巨額の出資金詐欺が行われ、それまでの全米史上で最大のねずみ講詐欺(ポンジー・スキーム)と言われている。
当時、ホッフェンバーグ氏はTowers Financialで会長職に就いており、またニューヨーク・ポスト紙の所有者でもあった。しかしTowers Financialは1993年に破綻。1995年にホッフェンバーグ氏は投資家らから4億7500万ドルを騙し取った詐欺行為で有罪判決を受けた。その13年後の2008年に、バーニー・メイドフがそれを上回る全米史上最大の巨額出資金詐欺で逮捕されるまで、ホッフェンバーグ氏とエプスティーンによる投資詐欺は、「史上最大のポンジー・スキーム詐欺の一つ」と米証券取引委員会に言わしめていたほどであった。
しかし、ホッフェンバーグ氏が逮捕され有罪判決を受けたにもかかわらず、彼のビジネス・パートナーであったエプスティーンは逮捕されることなく自由の身であった。その理由はなぜなのだろうか?すでに全米のベストセラーとなっている『Epstein: Dead Men Tell No Tales(エプスティーン:死者は何も語らない)』の著者による独占インタビューの中で、ホッフェンバーグ氏はエプスティーンがアメリカ史上最大の投資家詐欺という犯罪行為から逃れることができた本当の理由――彼は国際的スパイであったこと――を語っている。
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英国王室のアンドルー王子と、ジェフリー・エプスティーンに少女らを斡旋していたギスレーン・マックスウェルの2人は、共謀して捜査の進行を妨害(*)しており、エプスティーンによる性犯罪の被害者である女性たちが正義を求めて行なっている訴訟の進行も妨害している――
エプスティーンの元ビジネス・パートナーであり友人であったホッフェンバーグ氏により、このような大胆な主張が行われている。(*ただし、FBI内部の複数の人物が、エプスティーン事件に関わっているとされるマックスウェルら複数の人物への捜査を進めていることを認めていると、12月27日付でロイターが報じている。)
ホッフェンバーグ氏は、実際、エプスティーンがイスラエルの諜報機関モサドにおいてトップ・レベルのスパイであったと書籍『Epstein: Dead Men Tell No Tales(エプスティーン:死者は何も語らない)』の中で認めている。
一連のインタビューの中で、ホッフェンバーグ氏は、エプスティーンがモサドのスパイとして働いていたことを、彼自身の経験から直接得た知識として知っていると語っている。しかもそれだけではなく、エプスティーンの友人であったアンドルー王子とギスレーン・マックスウェルが、エプスティーンの大きな秘密を守るためにいまだに積極的に協力しているとこの書籍の中で語っている。
ホッフェンバーグ氏によると、エプスティーンがTowers Financialを利用した巨額な投資詐欺の罪から逃れることができた理由は、彼が諜報機関にコネを持っていたからだという。エプスティーンと共に働いていた間、エプスティーンがサウジアラビアやイスラエル、ロシア等各国のスパイと接触する諜報活動を行なっていた様子を間近で見ていたとホッフェンバーグ氏は語る。
以下はこの書籍の著者であるダイラン・ハワード記者が、書籍の出版後に行ったホッフェンバーグ氏へのインタビューを一部抜粋して翻訳したものである:
この本(『Epstein: Dead Men Tell No Tales(エプスティーン:死者は何も語らない)』)はとても良かった。
しかし残念ながら、メディアはエプスティーン事件の75%も理解していない。
これは複雑な話だからね。マックスウェル、王室、そしてスパイ。当然、現在でもアンドルー王子はニューヨーク南部地区担当(の地方検察局)がマックスウェルを逮捕することを妨害しているよ。
問題はこうだ。2008年、エプスティーンが(最初に性犯罪の容疑で逮捕された際)一切の刑期を受けることがなく、訴追を逃れていた理由は(当時フロリダ州の地方検察官であったアレックス・)アコスタのおかげだが、その背景には、エプスティーンが関係していた複数の諜報機関があり、またイスラエルにいた2人のマックスウェル(ギスレーン・マックスウェルと彼女の父親)がいたからだ。私はこのことについて、エプスティーンから聞かされた事実として知っている。
君がこの本で書いたことは真実だ。現実問題、私は他の多くの人たちから彼のスパイ活動について質問を受けてきたが、これまで(エプスティーンの)スパイ活動については一切答えてこなかった。これについて先走ったことを口にしたくなかったからだ。しかし君は、これ(この書籍)で土台を作った。君が報じた内容は真実だ。
それが真実だ。そこには疑いがない。君が書いたことは真実だ。私は(エプスティーン事件の)目撃者だ。
彼はこのことを私に認めており、それは問題の核心ではない。というのも、何千回と行った会話の中で、彼は私に彼の人生について語ったのだから。私は彼の兄のようなものだった。長い間、私たちは切っても切れない関係にあった。だから、私は君が書いた内容のあらゆる局面について知っている。
諜報活動のコネクションというのは心を非常にハラハラさせるものであったことは君も知っているだろう。そのことは私もリスクであると懸念していた――君の書籍が出版されるまでは。(エプスティーンの)スパイ行為についてプレッシャーを受けてきたが、私は決して折れなかった。君の書籍が出版されるまで、私は彼のスパイ活動について認めてこなかった。エプスティーンの未解明事件にとって、それは重大なマスター・プラン(基本計画)に位置している。それはエプスティーン自身によるマスター・プランだった。
彼はアンドルー王子を今でも窮地に追い込んでいる。彼は王家の人間を追い詰めている。なぜ王子が現在、こうした状況にあるのか。マックスウェルがその共犯者だ(彼女は違法行為を行ったというあらゆる追及を否定している)。英国の王子は、なぜ正義に訴えないのか?それを行えば、英国における(王室は不可侵の存在であるという)幻想を破壊することになるだろう。エプスティーンに関する物語の75%も、メディアや世間は理解していない。しかし私たちはそれを公にしなければいけない。私たちはそれらについて語らなければいけない。
彼はCIAやFBIから諜報活動のために必要とされていた。その理由は、彼がMI6やイスラエル、サウジアラビアの諜報機関など海外の複数の組織のために、アメリカの機密情報を操っていたためだ。それが彼が行っていたことだ。彼らは、エプスティーンがアンドルー王子やMI6、イスラエルの諜報機関、サウジアラビアの諜報機関のために行っていたことが暴露されることを恐れていた。だから(アレックス・)アコスタはメディアに「これは諜報機関による犯罪事件であり、独立した単独の犯罪事件ではない」と語ったのだ。アコスタはそう語った。
このことは忘れないで欲しい。彼と私は1987年〜1996年かその近辺で関わり合いを持っていた。私たちは離れがたい存在であり、毎日、行動を共にし語り合っていた。当時、私がVillard Houseにオフィスを開設したが、それは彼のためのオフィスであり、特に彼のために私たちが開いたものだった。私たちは常に行動を共にし、彼は私のことを完全に信用していた。私は、当時、彼が私をはめようとしていることに気がついていなかった。彼は、(投資詐欺の)犯罪行為の罪をすべて私にかぶせようとしていた。私は(詐欺行為の)罪を負う責任はなかったにもかかわらず。私には微罪しか責任はなかった。しかし、彼が私をはめ、微罪では終わらない状態にした。彼は金で私を裏切った。
何十年も前に起きたことを、今更、恨んでいるわけではない。しかし、私はそこにいたし、それが実際に起きたことだ。私はそのこと、つまり彼がどのように私をはめたかについて証拠を持っている。これは全て真実だ。これは、私がはめられたことについて、ほんの小さな一部にしかすぎない。エプスティーンと行った巨額の金融犯罪という第一ラウンドで、私ははめられた。その話は注目に値する。誰も私が恨んでいるとは言わないだろう。なぜなら、これら(エプスティーン事件の)揉み消しに私は一切関わっていないのだから。私は一つの事件に深く関わっているが。だから恨みでは決してない。それは語るべき話だということだ。それは説明されるべきものだ。彼の考え方、経歴、エプスティーンがどのように物事を見ていたか、そして彼がどのようにチェス・ゲームを行なっていたか。それが全てだ。
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一方、公務から(一時的な)引退を発表したアンドルー王子が、今年、親しい友人や親族に送ったクリスマスカードが物議を醸している。犬のお尻(後ろ姿)の写真が印刷されたそのカードには、”Say Goodbye to 2019″(2019年にサヨナラと言おう)というメッセージが添えられている。これが、自身が関わったエプスティーン事件について言及しているのではないかという憶測を呼んている。
さらにカードには、エリザベス女王のバルモラル領地の写真が印刷され、その下には“We Look to the Road Ahead”(私たちは前途に期待している)と記されている。しかし、アンドルー王子は、当時17歳であったヴァージニア・ジフレ(旧姓ヴァージニア・ロバーツ)さんから性行為を強要されたと訴えられており、2020年も彼にとって「前途」は多難であることは間違いない。
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