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ゴーン被告の逃亡を主導したのは元米陸軍グリーンベレーのマイケル・テイラー氏と各紙が報道

ゴーン被告の逃亡を主導したのは、元米陸軍グリーンベレーのマイケル・テイラーと各紙が報道

マイケル・テイラー - Photo via The Salt Lake Tribune

ゴーン被告による海外逃亡劇の詳細が、徐々に明らかになっている。まず、ゴーン被告の「日本脱出」を計画し実行したチームが特定された。ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)とブルームバーグは、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の元隊員であるマイケル・テイラー氏(冒頭の写真)がこの作戦を主導したとそれぞれ報じている。マイケル・テイラー氏が経営する民間軍事警備会社は、これまでにアメリカ連邦政府、ニューヨークタイムズ紙、ABC、デルタ航空、ディズニー・オン・アイスなどの依頼を受けて活動を行った経歴がある

 

テイラー氏自身、犯罪歴の過去がある人物である。彼は、2012年に2件の犯罪事件に関して訴追され、24ヶ月の禁固刑を受けている。そして実際に合計19カ月間の禁固刑に服している。この2件の犯罪事件は、もともと24年間FBIに勤務していた人物が関与する、連邦政府入札の不正操作に対する捜査が火元となっている事件。テイラー氏と彼の民間軍事警備会社は、ユタ州で大陪審の調査が行われた後、最終的に契約詐欺と資金洗浄の罪で訴追された。犯罪内容の詳細については公表されていないが、連邦政府はテイラー氏を連邦職員(先述のFBI職員)への収賄罪で起訴した。2015年にテイラー氏に判決が下された日、検察官のマリア・ラーナー氏は、「テイラー氏にとって連邦職員へ賄賂を贈ることは全く目新しいことではない」と語っている。

 

裁判を待つためユタ州の拘置所に収監されている間、テイラー氏は容疑について精力的に反論を繰り返していた。しかし、2件の容疑に対して、テイラー氏は最終的に罪を認めている。判決が下される前、テイラー氏の元クライアントらは、彼はこのような罪を犯す人物ではないと裁判官の心情に訴える手紙を送っていた。

 

1人の母親は、1997年に誘拐されていた彼女の娘をレバノンから救出するためにテイラー氏が活躍したことを称賛する手紙を裁判官に送っている。

 

「私とマイケル(テイラー)との関係は、単なる仕事上のこと以上のものです。・・・彼の心と魂は、彼が常に正しいことをするよう一歩ずつ彼を導いていました」とこの母親は手紙に記している。

 

またこれよりも前に、テイラー氏は別件でもマサチューセッツ州で起訴されている。この時は、不法な盗聴行為を行ったことなど複数の罪状で起訴されている。本件でも、テイラー氏は軽罪について有罪を認めている。

 

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ゴーン被告自身が海外逃亡することを最終的に決断した後、約3ヶ月前にテイラー氏の軍事警備会社はゴーンの逃亡支援プロジェクトを引き受ける契約を締結した。テイラー氏がどのようにゴーン被告に紹介されたかは明らかになっていないが、2人ともレバノンと深いつながりがある。また、第3の人物がこの逃亡劇に関与していると報じられている。この第3の人物は、ゴーン被告を日本から脱出させたプライベートジェット機にも搭乗していたと報じられている。

 

WSJ紙によると、この人物はジョージ・ザイエク(George Zayek)氏である。彼はレバノン生まれのアメリカ国籍保持者であり、過去にテイラー氏の軍事警備会社と共に活動した経験がある。ジョージ・ザイエク氏は、レバノンにおけるキリスト教民兵組織の設立者の1人であるエリアス・ザイエク氏の兄弟。エリアス・ザイエク氏は、1990年、レバノン国内における激しい内戦が終結する数ヶ月前に暗殺されている。ジョージ・ザイエク氏は、1970年代に起きた戦闘で負傷したため、現在でも足を引きずって歩くことが知られている。

 

ゴーン被告が日本を脱出する際、実際に隠れていたとされる音響機器のケース

 

テイラー氏も、レバノンのキリスト教コミュニティーとつながりがある。彼は米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の落下傘兵として、1980年台初頭、レバノンで従軍している。テイラー氏は、彼の妻とレバノンで知り合い、アラビア語を流暢に話す。その後、民間請負業者として働き、レバノンのキリスト教民兵組織を訓練する支援を行った

 

2012年、テイラー氏はふたたびレバノンに渡り、極秘の米麻薬取締局(DEA)の作戦に参加している。この作戦に関わった複数の人物によると、これは「米麻薬取締局にとって歴史上、最重要な作戦の一つ」であったという。また、テイラー氏がこの作戦にとって「カギとなる人物」であったとも証言している

 

2009年、テイラー氏の以前の民間軍事警備会社(彼が訴追される前まで存在していた)は、ニューヨークタイムズ紙から連絡を受け、タリバンによってアフガニスタンで拘束されていたデービッド・ロード記者を救出するための支援を行うよう依頼されていた。そしてテイラー氏は、ロード記者を救出するために「ひったくり作戦」を計画したが、彼がその作戦を実行する前に、ロード記者は自ら脱出することに成功している。

 

このように、海外で誘拐された犠牲者たちを救出することが、テイラー氏の専門分野になっていった。実際、ここ数年間にわたってテイラー氏はFBIおよび国務省と契約関係を結んでいる。

 

テイラー氏は訴追された際、彼の会社の資産500万ドルが連邦政府当局により押収されていたが、そのうちの200万ドルを取り戻すことに成功している。この資金を元手に、テイラー氏は新たな民間軍事警備会社を再建した。

 

WSJ紙はテイラー氏が主導した脱出計画の詳細について長文の記事を掲載している。一方、ブルームバーグは元々レバノンの報道機関が報じた脱出作戦の一部に関する詳細についてまとめたものを報じている。例えば、ゴーン被告の「救出」チームは15名の男性によって構成されており、東京から大阪までは公共交通機関(新幹線)を利用したことなどは、もともとレバノンの報道機関が報じた。

 

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テイラー氏は、数ヶ月前に関西国際空港まで下見に行った際、チャーター便に使われるターミナルにセキュリティ上の重大な欠陥があることに気がついたとWSJ紙が報じている。それは、荷物をX線検査するために使われる機械が、巨大な荷物を通すには小さすぎるということだ。実際、これが決め手となり、ゴーン被告を隠して運搬していた音響機器ケース(その底には息ができるようドリルで穴が開けられていた)は、空港職員に詳しく検査を受けることなくチャーター機に持ち込まれた。

 

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逃走する前、ゴーン被告は日本に留まり自分にかけられた容疑を晴らすために闘うつもりであることを周囲に語っていたと報じられている。一方、彼は日本の司法制度が不正操作されていることや、彼が不当に不利な状況に置かれていることについて不満を漏らしていた。

 

彼を支援する人たちからすると、ゴーン被告にかけられた容疑は不透明である。退職後ボーナスという形で支払われる予定で、実際にはまだ支払われていない所得を申告していなかったことなどが容疑に含まれているためだ。彼の支援者の多くは、ゴーンを追い出したい日産の幹部たちが、この内部抗争を裏で操っていると疑っていると報じられている。ゴーン被告が逮捕されるまでは、日本そして世界中で彼は日産を復活させた男として絶賛されており、世界の数少ないスーパースターCEOとして目されていた。

 

テイラー氏は、ゴーンに同情していると知人に語っていたことや、ゴーンが日本政府によって「人質」にとられているとまで知人に語っていたと報じられている。

 

日本政府は自国の司法制度を擁護していることが海外メディアでも報じられているが、日本の司法制度では検察による起訴後の有罪確定率が99%であることが人権擁護派の専門家などから問題視されていると報じられている。ゴーンがレバノン到着後に発表した声明で、彼の家族はこの作戦に関わっていないこと(*)、また日本で「非人道的な」扱いを受けたことを非難している。(*ただし、ゴーンの妻がレバノンの諜報機関の車に乗っていることなどが報じられていることから、家族が関与しているという容疑は晴れるどころか深まっていると言える。)

 

しかし情報戦という観点からすると、日本政府は国際的には不利な立場に立たされていると言えるだろう。ゴーン被告の主張を元にした映画作品が海外で製作されてしまう前に、日本側の主張を正当に織り込んだ映画やテレビドラマを、海外企業のネットフリックスやHBOに製作依頼して配信することができれば良いが、ゴーン被告はすでにハリウッドの大物プロデューサーであるジョン・レッシャー氏と接触していたことが報じられていることから、同氏は日本政府より何歩も先をいく「反撃作戦」を立てていることが想像できる。

 

一方、先週末ここで報じた通り、ゴーンの逃亡に使われたチャーター機を運行していたのは、トルコのMNG Jet Havacilik ASと呼ばれるチャーター会社であった。ベネズエラのマドゥロ政権が、同国の中央銀行から不法に金塊を海外に持ち出すのにもこの会社のチャーター機が利用されたと、過去に複数のメディアが報じられており、すでに悪い評判がたっているチャーター会社である。

 

同社は声明の中で、テイラー氏と彼のチームによって不法に同社の機体が配備されたため、同社はゴーン被告が乗客としてそのフライトに搭乗していることは知らなかったと述べている。同社を欺くために書類が意図的に改竄されていたと、同社はその声明の中で主張している。

 

ゴーン被告に次に何が起きるのかは不明である。日本が犯罪人引渡条約を締結しているアメリカなどの国にゴーン被告が渡航した場合、逮捕されてしまう可能性がある。そのためたとえ南米のブラジルなどへ行く経由地としてでもアメリカに渡航するのはリスクとなるため、ゴーン被告の海外渡航には多くの制限が発生することが予想される。また、現時点でレバノン政府はゴーン被告の引き渡しを拒んでいることから、日本の当局は代わりにゴーン被告の逃亡を手助けしたテイラー氏や彼のチームへの捜査を本格化する可能性がある。実際、トルコはゴーン被告の逃亡のためにチャーター機を操縦していたパイロットを逮捕している。また、国際刑事警察機構(インターポール)は日本政府の要請を受けてゴーン被告に対する国際指名手配を発表している。

 

ゴーン被告は、1月8日に逃亡後初となる記者会見をベイルートで開くことを予定していると報じられている

 

 

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