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ボーイング社が融資限度枠の138億ドルまで銀行から借り入れを行う計画:金融恐慌の前触れか、それともその引き金となるのか?

ボーイング社が融資限度枠の138億ドルまで銀行から借り入れを行う計画:金融恐慌の前触れか、それともその引き金となるのか?

Photo via Flickr

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ボーイング社は、取引先の銀行が約束している融資の限度額(つまり与信枠)である138億ドルについて、その限度額ぎりぎりまで早ければ今週金曜にも借り入れを行う予定であるとブルームバーグが報じた。本件に詳しい複数の人物からの情報として報じている。

ボーイング社が、これまで前例のない「融資額の上限まで借入を行う」というニュースは投資業界に衝撃を与えている。ボーイング社ほどの規模と時価総額を持つ超巨大企業が、その与信枠いっぱいまで借入を行うなどというのは前代未聞である。

投資業界の中には、このニュースを聞いて、ボーイング社のキャッシュフローが焦げ付きかかっているのではないかと心配する声が聞かれる。同社は、2度の墜落で多数の犠牲者を出したMax 8の機体が運行停止状態となっており、業績が悪化しているのは事実である。また、デフォルトの可能性を示す指標と言われている5年ものCDSの価格を見てみると、確かにボーイング社の5年ものCDSは2008年のレベルまで急騰している。

しかし、もしボーイング社がキャッシュフローの問題に直面している場合、巨額の与信枠が銀行から約束されている中、その限度額ぎりぎりまで一度に借金する必要性は低い。また、一度に限度額まで借金することで、投資家たちの注目を不必要に集めてしまうことにもなる。また、昨年12月31日の時点で、ボーイング社のバランスシートには約100億ドルのキャッシュがあったと報じられている。

ボーイング社が心配しているのは自社のキャッシュフローではなく、融資(シンジケート・ローン)を約束してくれている銀行そのものである可能性のほうが高い。ボーイング社が融資限度額ぎりぎりまで現金を引き出すことにした本当の理由は、特に2008年の金融恐慌のときに何が起こったかを記憶している人にとっては容易に想像できることだろう。ボーイング社は、銀行が約束している融資限度枠を突然引き下げることを心配しているのだ。日本でも「貸し渋り」や「貸し剥がし」という言葉が横行した。銀行自体に流動性の危機が発生した場合、それまで企業に約束していた融資限度枠を強制的に引き下げることをボーイング社は懸念していると考えられる。

アメリカ企業の中でも最も時価評価額の高い企業の一社が、銀行による融資限度枠の引き下げを不安視し、そうなる前に限度枠ぎりぎりまで借入を行うというニュースが報じられたということは、ボーイング社よりも与信枠の低いその他何千もの企業も同様に融資限度枠まで借金に走る可能性が高い

一方、今週水曜、世界の二大プライベート・エクイティー企業であるブラックストーンとカーライルが、自社のポートフォリオ企業に対して、ボーイングが行なったのと同様のことを早急に実行するようにと指令を出したとブルームバーグが報じた「信用収縮を回避するためにできることはなんでもしろ」という指令である。ボーイング社の場合は、「取引銀行が破綻し与信枠がなくなる前に、将来現金が必要になる時にではなく、今、手に入る現金はすべて手元に蓄えておこう」ということになる。

ブルームバーグが報じた内容によると、ブラックストーンとカーライルが経営権を持つ数十社(数百社の可能性もある)が、金融市場にストレスが高まっている兆候が見られる中、資金が枯渇する前に銀行から与信枠ぎりぎりまで現金を借りる動きをみせているという。

ブラックストーンは過去35年間、様々な危機を乗り越えてきたが、今回、新型コロナウィルスによって打撃を受けているサービス業、そして原油価格の急落に直面しているエネルギー産業に焦点を絞っている。

一方、カーライルによる対策はそれほど広範囲に及ぶものではない。ただし、同社はポートフォリオ企業の経営層と幅広い議論を行っており、「業界、地理的要因、その他の要素に基づいた判断」を行うことで、状況によっては与信枠内で借入を行うことを推奨している。

ボーインング、ブラックストーン、そしてカーライルに加えて、与信枠いっぱいまで銀行から借入を行う計画であると発表した企業には、ヒルトン・ワールドワイド(Hilton Worldwide)およびウィン・リゾート(Wynn Resorts)がある。

これは、取り付け騒ぎが起きる一歩手前のような状態である。ブルームバーグはこうした状況を次のように分析している:

企業が与信枠から現金を引き出そうとする行為が急増しそれが持続することは、もし借り手が返済義務を果たせないような危機的状況となる場合、最終的に銀行にそのしわ寄せが来ることになる。

ブルームバーグの記事は頑なにそれを認めようとしないが、市場環境(市況)ではなく、金融セクターに対する信用の喪失こそがこの問題の本質である。消費者がトイレット・ペーパーを求めて買付け騒ぎを起こすことくらいでは金融システムの崩壊には至らないが、企業が紙幣(キャッシュ)を求めて借入れ騒ぎを起こせば金融システムは崩壊する。米国の金融システムに対する信用が失われれば、それは簡単に起き始める。その最初の「ドミノ」を倒すのは、ボーイング社かもしれないし、金融業界に携わる一握りの人たちかもしれない。

最大の皮肉は、融資限度枠ぎりぎりまで借入を行おうと大挙するアメリカの企業は、リスク回避のために行なっているにもかかわらず、その行為自体が流動性の枯渇と金融危機を発生させる引き金を引いているということだ。

アメリカの金融市場では、昨年9月から流動性の枯渇危機がいまだに続いており、日々悪化している。連銀は、今週月曜、オーバーナイト・レポ取引市場に対して提供している流動性の救済枠の上限を、1000億ドルから1500億ドルにアップする発表を行なっていた。しかし水曜、それでは足りないと判断し、今週2度目となるレポ取引市場への介入を発表している

2020年3月12日木曜から2020年4月13日月曜末日まで、公開市場取引デスクは少なくとも毎日のオーバーナイト・レポのオペレーションにおいて1750億ドルを提供し、この間、週に2度行われる2週間タームレポのオペレーションでは少なくとも450億ドルを提供する。

これに追加して、連銀は、1ヶ月間タームレポのオペレーションを提供する。第1回目のオペレーションは、2020年3月12日木曜に実施される。これら3回のオペレーションでは、毎回少なくとも500億ドルが提供される。

* * *

【追加更新】

ブラックストーンがそのポートフォリオ企業に対して融資限度額の最大限まで借入れするよう通達したというブルームバーグのスクープ記事を受けて、ファイナンシャルタイムズ紙で資本市場に関する記事を執筆しているロバート・スミス記者は次のツイートを投稿している:

【訳】銀行にとっては速攻で資本への打撃となる。

このニュースを報じるCNBC:

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