スターバックス創業者のハワード・シュルツ氏、「チャイナはライバルだが、敵ではない」、「米国は協力する方法を見つけなければいけない」——しかし米国は西側の同盟諸国と連携し大規模な対中制裁を発動
スターバックスの創業者で、同社の元CEOでもあるハワード・シュルツ氏は、3月18日(木曜)ブルームバーグ主催のEquality Summit(平等サミット)に登壇し、トランプ政権の強硬な対中姿勢を引き継いでいるバイデン政権に、米中は協力しなければいけないと訴えた。シュルツ氏は、2019年、民主党にも共和党にも属さない独立候補として大統領選挙に出馬を検討していた。
シュルツ氏は、Equality Summit(平等サミット)の聴衆に向かって、チャイナは「ライバル(adversary)だが、敵(enemy)ではない」と語り、米中は「協力する方法を見つけなければいけない」と語った。
“Adversary”にも、「敵」、「敵対者」、「敵対国」という日本語訳が充てられているが、“enemy”にはさらに「(害を及ぼす)危険な人・国」、「政治的な敵国」という意味がある。英語の辞書は、“adversary”と“enemy”の違いを次のように説明している:
Adversaryはenemyと同義語。
名詞としての“adversary”と“enemy”の違いは、adversaryが反対者(opponent)またはライバルであるのに対して、enemyは敵意を抱いている人物、憎しみを抱いている人物、利害が対立する人物、または他人に危害を加えようとする人物。
2020年の大統領選挙のテレビ討論会で、カマラ・ハリス副大統領候補(当時)は、進行役のUSA Todayの記者から次のように質問されたが、この質問を無視し回答しなかった:
私たち(米国)のチャイナとの根本的な関係をどのように表現しますか?私たちは、競争相手(competitors)、ライバル(adversaries)、それとも敵(enemies)でしょうか?
米中関係が「ライバル(adversary)」か「敵(enemy)」かというのは、近年、米国においてホットなテーマとなっている。元大統領補佐官(国家安全保障担当)のジョン・ボルトン氏は、先週ワシントンポスト紙に寄稿した論説記事の中で次のように記している:
ブリンケン(国務長官)とサリバン(大統領国家安全保障担当補佐官)は、バイデンがオバマとは異なり、チャイナを敵(enemy)ではないにしても、少なくともライバル(adversary)と認識しており、米国はそれに応じて政策を調整するということを、できれば明確にしておかなければならない。
(太字強調はBonaFidr)
トランプ前大統領は、明らかにチャイナを「敵国(enemy)」と認識して対中政策を打ち出していた。
これに対して、スターバックスのシュルツ元CEOは、トランプ大統領の「過去4年間の発言」が米中間で共通の土台を見出すのに役に立たなかったと言い、それが「今後、深刻な問題を引き起こすだろう」と語った。しかし、「残る他の世界に利益をもたらすために(米中間で)協力する方法を私たちは見つけ出せるということに自信がある」とも語った。シュルツ氏はさらに次のように語っている:
私は、チャイナの人々、そして私たちが会社としてチャイナで構築してきた人間関係に対して大きな敬意を抱いている。アメリカはチャイナが望むものすべてに合わせようとはしないのと同じ文脈で、チャイナもまたアメリカが望むもの全てに合わせようとはしないだろう。
シュルツ氏がどれほど利他的な意図を持ってチャイナとの協調路線を提唱しているかは不明であるが、昨年のスターバックスの売上にチャイナ市場が大きく貢献していたことは留意しておく必要がある。昨年、米国内の店舗はその多くが一時閉鎖されていたのとは対照的に、チャイナにあるスターバックス店舗はその多くが営業されていた。そのため、2020年の同社の海外からの売上比率は拡大している。
* * *
しかしシュルツ氏の希望とは裏腹に、先週、アラスカで開かれた米中会談は冒頭から非難の応酬となった。米中の対立が一層鮮明になったと報じられた矢先の3月22日(月曜)、米国は西欧の同盟諸国と協力して、新疆ウイグル民族に対する「深刻な人権侵害」が行われているという理由でチャイナの政府上層部に対する大規模制裁を発表した。
まず、EUの各国外相が過去に例を見ない制裁を発表し、4人のチャイナ国籍の人物と1組織の渡航禁止と資産凍結を承認した。これは過去30年間で初となる大規模な制裁であると報じられた。するとすかさず、チャイナ政府はその報復としてEUの10人と4組織に対する制裁を発表している。
そして同日、米国政府もチャイナの政府上層部をターゲットにした制裁を発表した。米財務省外国資産管理局のアンドレア・M・ガッキ局長は次のように声明を発表している:
新疆での残虐行為が行われ続ける限り、チャイナ政府当局者たちはその報復に直面し続けるだろう。
チャイナ政府によるウイグル民族や他の少数民族に対する人権侵害(その中には恣意的な拘束や拷問を含む)、その説明責任を追及することに米財務省はコミットしている。
(太字強調はBonaFidr)
米国による対中制裁は、EUと連携しているだけでなく、カナダと英国とも連携していると米財務省は説明している。
一方、米保守系ニュースサイトのザ・フェデラリストは、先週開かれた米中会談を次のように報じている:
"if there were ever to be a date for historians to mark the televised humiliation and official end of American hegemony, it would be the public verbal slapping of Secretary of State Antony Blinken and NSA Jake Sullivan by Chinese ambassador on U.S. soil." https://t.co/dWPBs13GdA
— Mollie (@MZHemingway) March 22, 2021
【訳】「もし歴史家たちが、テレビ放送された屈辱の出来事と、アメリカ覇権の正式な終焉を示す日があるとすれば、それはアメリカの土地でチャイナ大使がアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官を公に言葉で平手打ちした日だろう」。
(太字強調はBonaFidr)
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