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「企業によるクーデターを止めろ!」:米上院予算委員会の元上級政策アドバイザー、マット・ストーラー氏が連邦議会による企業救済を阻止するようアメリカ国民に呼びかける声明を発表

「企業によるクーデターを止めろ!」:上院予算委員会の元上級政策アドバイザー、マット・ストーラー氏が連邦議会による企業救済を阻止するようアメリカ国民に呼びかけ

民主党ナンシー・ペロシ下院議長(左)と共和党ミッチ・マコーネル上院院内総務(右)

ニューヨーク州やカリフォルニア州、イリノイ州など大都市が集まる米国経済の中心地で自宅待機命令が出され、米国経済は一部でフリーズが始まっている。そしてすでに資金繰りが悪化していたボーイング社が政府に救済を要求し、同様に政府救済を求める企業は、観光産業、航空産業、外食産業、自動車産業、防衛産業などあらゆる産業に続々と広がりを見せている。

上院予算委員会の元上級政策アドバイザーで予算アナリストであったマット・ストーラー氏は、こうしたアメリカ企業による政府救済を求める動きを「コロナウィルス・クーデター(Coronavirus Coup)」と呼び、救済が実際に行われればアメリカの巨大企業はますます巨大になり、逆にアメリカの中小企業のほとんどが消滅することになると警鐘を鳴らしている。その理由は、軍産企業から富豪のイーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏、食肉業者や酒造メーカーにいたるまで、彼らが雇っているワシントンDCのロビイストたちが政治家たちに働きかけることで、こうした大企業や富豪たちだけが政府による救済の恩恵にあずかることができるからだ。一方、ロビイストたちなど雇えない家族経営企業には政府救済が行われず、この先数週間で閉店することになる。

ストーラー氏は、現在、アメリカの連邦議会の内部で起きている壮大な動きについて次のように総括している:

危機にあるとき、我々は産業を支援しなければいけない。しかし、ここで鍵となるのはその条件だ。ムニューシン財務長官に全ての支援策の条件を決めさせることで、わずかな人間(企業)の手に権力が集中してしまうということが起きてしまう可能性が高い。中小企業は消滅する。アメリカは認識できないほど全く異なるものになってしまうだろう。

以下はストーラー氏の声明文を翻訳したものである。

* * *

コロナウィルス企業クーデターを止めろ

読者たちにはこの声明を再投稿し、転送し、政界にいる知り合いの誰でもいいから連絡してほしい。その理由はこうだ。

連邦議会の指導者たちは、アメリカ国民の前に非常に醜い合意内容を示す可能性が高い。もしそれが議会を通過すれば、このパンデミックが終結した後、アメリカは認識できないほど全く異なるものになってしまうだろう。しかし左派のポピュリストと右派のポピュリストが協力すれば、それを止める方法はある。

今の状況はこうだ。共和党のミッチ・マコーネル(上院多数党院内総務)、民主党のチャック・シューマー上院議員(上院少数党院内総務)、そしてトランプ政権は、コロナウィルス危機に対処するための救済パッケージについて交渉している。経済がフリーズ状態に突入するに伴い、就労者を支援する必要があると多くの討論が行われてきた。これは世界中で起きている。例えばイギリス政府は、今回の危機の影響を受けた人々に対して、現在の経済停滞中に賃金の80%を支払う方向である。

しかし米国では、我々の指導者たちは「助けを求める企業の狂乱」としか呼べないような状況の犠牲に陥っているように見える。とあるロビイストは、「危機が発生し、しかも連邦議会がその真っ只中にある時はいつでも、私のような人間には絶好のビジネス機会となる」と語っている

まず最初に、最終的な(救済)法案が正確にどのような内容になるか、私は知らないということをはっきり述べておく必要がある。なぜなら、全ての(審議)プロセスは不透明であり、まさに今、信用ならない政治指導者たちによって交渉されている最中だからである。我々がその詳細について知るのは、(法案が可決される)最後の間際になるだろう。そのため、私が注意喚起する内容は全て、噂話と報道から得られた情報である。しかし、もし我々がその完全な輪郭が分かるまで待っていれば、行動を起こすには遅すぎとなる可能性が高いだろう。私は自分が間違っていればよいと望む。しかしロビイストたちが要求している項目リストは長く醜悪だ。しかも、資金や法律上の優遇策の要求というのは、コロナウィルスが蔓延する前にすでに発生していた自らの失敗を隠すために行われることが多い。

ボーイング社の例を見てみよう。航空機製造業界の大企業は、600億ドルの救済を要求している。この企業に生じた財政問題は、737 Max機の問題に帰結する経営ミスや、機能しない防衛・宇宙関連製品(私は昨年7月ボーイング社に対して政府救済が行われるだろうと記していた)など、今回のコロナウィルス危機よりも以前に遡ることができる。同社は、過去10年間にわたって650億ドルもの自社株買いと株主配当を行ってきた。そして現在の危機が発生する前に、(金融機関が保証する)融資上限いっぱいまで借入を行った。同社はまた、政治家たちとも非常に深いつながりがある。同社取締役には、キャロライン・ケネディー、ロナルド・レーガンの首席補佐官であったケネス・デュバースタイン、フォーチュン100に入る3社のCEO、元米国通商代表、2人の最高司令官(そのうちの1人は取締役会で唯一のエンジニアである)。コロナウィルスを言い訳に利用することで、ボーイング社は自分たちの過ちを納税者に負わせようとしている。そうすることで、再びさらなる過ちを繰り返すことができるように。

しかしこれが全てではない。防衛関連企業たちは、彼らが簡単に金儲けできるよう希望しており、彼らが法外な利益を得ることを制限する規制を迂回するために、「その他の取引権限(other transaction authority)」と呼ばれる巨大な抜け穴をさらに大きくしたいと考えているという話を私は聞いている。イーロン・マスクとジェフ・ベゾスは、商業宇宙開発企業の社員たちを雇用し、施設を運営し続けるために、50億ドルの補助金もしくは融資を希望している

CNBCは、ホテル業界が1500億ドル、外食産業が1450億ドル、そして製造業社が1兆4000億ドルを要求していると報じている。そしてショッピング・センター国際協議会(International Council of Shopping Centers)は、最大1兆ドルの保証を希望している。ビール業界は50億ドルを希望している。菓子業界は5億ドル。ニューヨークタイムズ紙は、「アディダスは、消費者がフィットネス施設の会費や器具を購入するのに税引き前所得が使えることを可能にするよう、長年要求してきた法律改正への支援を要求している」と報じている。現在、フィットネス・ジムは当然閉鎖されてしまっている。食肉梱包業社は、彼らが従業員の給料を引き下げられるよう(外国人労働者への)特別ビザを要求し、そして輸入業社は、(外国企業が)米国市場で製品の違法ダンピングを行うことで国内産業を傷つけてしまわないよう、彼らに支払うことが義務付けられている関税を払うのをやめたいと考えている。

私は、産業界を支援することに反対しているわけではない。これはクライシス(危機)である。そのため、パンデミックが原因で米国における製造キャパシティーの多くが崩壊してしまうことを我々は望まない。しかし、企業を支援することにとって鍵となるのは、権力が独占業者やディストレスド資産を選り好みする金融家の手に集まらないよう、そこに厳しい条件を確実に付帯するようにすることだ。そうでなければ、このパンデミックが終息した後、アメリカは認識できないほど全く異なるものになってしまうだろう。例えば、CNBCのパーソナリティーであるジム・クレイマーは、このパンデミックの後、アメリカにはたった3社の小売企業しかいなくなるということを懸念している。それを心配している彼は正しい。

我々がこれを止められる方法はこうだ。救済パッケージには到底見えず、むしろ企業によるクーデターに見える内容を阻止するために、行動を起こすことができる連邦議員は十分いる。しかし、問題はこうした連邦議員たちが異なる政党に分かれていることだ。そして連邦議会の指導者は、このことをうまく利用してこの救済パッケージを無理やり通過させようとしている。ミッチ・マコーネルは、大企業たちに好きなようにさせようと考えているため、策略を用いている。彼は就労者たちへの救済を拒否しているのだ。民主党議員たちは、彼と交渉し、失業扶助と社会福祉を勝ち取ろうとしている。ミッチ・マコーネルは、国民を人質に取れば、民主党議員たちは企業への救済内容など気にしないことを知っている。そして民主党議員たちもまた、彼らが就労者たちのためにより多額の救済金を勝ち取ることができたと語ってさえいれば、彼らが巨大企業に甘い救済パッケージを与えることができることを知っている。

そしてミッチ・マコーネルは、失業保険といった国民受けするいくつかの内容を含んだ法案を民主党のナンシー・ペロシ下院議長の前に差し出すだろう。しかしその法案には、アメリカという国そのものを巨大企業に差し出すという非常に醜い内容もまた含まれているだろう。民主党内の協調組合主義者たち(巨大な利権集団に国や組織を支配させることを主張する人たち)は、ペロシ下院議長に対して、「企業によるクーデター法案を可決しろ。いずれにしても我々は今すぐに何か対策を行わなければいけない!」と言うだろう。こうした協調組合主義者である議員たちのせいで、ペロシ下院議長は自身の党員集会内で十分な支持が得られないため、そして、彼女自身もアメリカという国が巨大企業に売られてしまうことを特に気にも留めないため、彼女はそうするだろう。唯一残された希望は、この見せかけの芝居に反対するために、左(民主党)と右(共和党)から議員が集まり党派を超えて連携することだ。

過去にその前例がある。

2008年、ウォール街を救済するため7000億ドルの予算が連邦議会で通過されそうなとき、驚くべきことが起きた。党派を超えたおおよそ100名の雑多な議員集団と、そして外部の専門家が、「懐疑論者の党員集会」と呼ばれるグループを形成し、この救済パッケージを取り下げるのに十分な投票数を組織したのだ。しかし株式市場が暴落した後、連邦議会の指導者たちはいくつかの些細な修正を付け加え、この救済パッケージを強引に通過させた。残念ながら懐疑論者たちは失敗した。そしてこの救済策は、富と権力を無責任なエリート層に移行する結果となった。

しかしこのわずかな瞬間、企業への補助金に関して連邦議会の指導者たちに(その他の議員たちが)反対することは可能であるということが明らかとなった。我々は、また新たな「懐疑論者の党員集会」を必要とする。早急に。そして今回、それは成功することができる。なぜなら、今回、今起きていることに騙される人など誰一人としていないからだ。我々は状況を明瞭に理解することができる。

そのため、あなたが共和党であろうと民主党であろうと、新しい「懐疑論者の党員集会」に参加しよう。そしてあなたを代表している連邦議員に要求しよう。大企業だけではなく、失業、家賃、住宅ローンに負われる人々を支援しよう。甘い汁が吸える今の身分を守ろうとしている大企業の重役たちではなく。

これが今の状況だ。読者たちには、この声明を投稿し、転送し、そして政界にいる知り合い(あなたの地元の代議士も含む)に連絡してもらう必要がある。彼らに、人々を直接支援しなければいけないと伝えてほしい。そして、「厳しい条件」なしで大企業に支援をしてはいけないと。そうでなければ、このパンデミックが終結した後、我々はいまよりもずっと自由度のない社会に生きることになる。

読んでくれてありがとう。もし自宅隔離する間、何か本を読みたければ、私のこの本を読んでほしい:『ゴリアテ:独占権力と民主主義の間の100年戦争(Goliath: The 100-Year War Between Monopoly Power and Democracy )』

敬具

マット・ストーラー

【追加情報】

【訳】「米財務省のスティーブン・ムニューシン財務長官は、2000億ドル以上の救済パッケージを管理するための援助を、ゴールドマン・サックス・グループとその他ウォール街の金融会社の幹部たちから受けられるよう模索している。」

【訳】連銀は、投機家に融資しようとしており、それはノンリコース融資(無償還)だ。これが意味するのは、もし投機家はローンが返済できなくても、彼らは何も失わないということだ。

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