ドイツ財務相が新たな銀行連合プランを発表:EUとドイツ銀行を救済するため
欧州最大の銀行であるドイツ銀行を救済するため、ドイツ連邦財務省が仲介して進めていた同行とコメルツ銀行を合併させる計画が失敗してから1年も経たずして、ドイツのオーラフ・ショルツ財務大臣(冒頭の写真)は、包括的な銀行連合を完成させるためにEUを説得するキャンペーンを推進している。
欧州において包括的な銀行の規制枠組みが欠如していることは、金融システムに対して、混沌とした状況や犯罪組織による侵入といったことに特に脆弱性をもたらしていると多くの人々が主張している。(特に近年、北欧における大手銀行の間で資金洗浄スキャンダルが多発していることがその証左である。)
ブレグジットがようやく最終局面を迎えつつある中(少なくともそう見える中)、ショルツ財務大臣は、ユーロ圏の金融セクターを統合しなければ、ヨーロッパの世界における地位は危機にさらされると主張している。欧州の主要な金融センターの一つであるロンドンがその地位を失いつつあることをその一例として挙げている。
ユーロ圏の銀行に対する監督機能を中央集約化するという計画は、2010年代初頭に欧州大陸全体を不安定化させる危機をもたらした債務危機に対応するために、何年も前に考え出されていた。多くの人たちは、流動性の「蛇口」を開けたままにするよう設計されている、新たな預金保証制度により、この中央集約化された監督制度が、税金を投入する救済を避ける助けとなると主張している。しかし、一部の人たち(特にドイツ国内)はこの計画を批判している。その理由は、この制度は、甘い経営が行われている外国の銀行に対して、依然としてドイツの納税者にその責任の一旦を担わせているためである。
ファイナンシャル・タイムズ(FT)紙に掲載された長文の論説記事で、ショルツ財務大臣は、銀行連合を実行可能にすることを妨げるような政治的な対立を終わらせるときだと主張している。このプロジェクトは、欧州の銀行を(政府が)救済することなく確実に安定化するためには欠かすことができない重要なものであると論じている。この論説記事で、ショルツ財務大臣はブレグジットとのタイミングにも関連付けしようと試みている。
ここで、ドイツが欧州の銀行を再び補強しようとしているもう一つの理由が考えられる。それは経営難にあえぐドイツ銀行だ。
欧州で最大手のドイツ銀行は、何十兆ドルものデリバティブへのエクスポージャーを抱えている。何年にもわたって行われてきた経営上のミスや犯罪行為により、ドイツ銀行はヨーロッパの金融システムにとって最大のドミノ倒しを引き起こす存在となっている。毎四半期、ドイツ銀行は多額の損失を計上し続けており、社員を大量解雇することで帳尻をあわせようとしている。
一方、ドイツ銀行の株価は常に下がり続けている。それはゼロに向かって突き進んでいるようにすら見える。
ドイツ銀行の株価の推移
FT紙が報じているように、ショルツ財務大臣の計画の中で最も議論を引き起こしているのは、ドイツ国民たちですらその計画を受け入れていないということだ。その預金保証制度は、銀行が破綻する際、預金者を保護するためのものである。まず、それは細かいことにうるさいドイツ人が決して考慮しないようなことだという。(厳格に経営すれば銀行の経営破綻など心配する必要がないとドイツ国民は考えている。そのため、この預金保証制度というのが、経営がルーズなその他の国の銀行の預金者を救済するためのものであるとドイツ国民は考えている。)
この政策は今後も向かい風に合うだろうが、新たに欧州委員長に選ばれた、ドイツのフォン・デア・ライエン氏からの支援は取り付けている。しかしロイターによると、この計画はドイツ政府内では正式に議論されておらず、メルケル首相がそれを支持しているかについても不明である。
FT紙によると、ショルツ財務大臣の計画には多くの保障条項が含まれており、ドイツよりも脆弱な金融制度である外国の銀行を救済する責任を、ドイツ国民が背負わされずに済む内容となっているという。しかし、まさにその保障条項が、イタリアへの支援を低減させることにつながる可能性がある。
一方、預金保証制度とは別に、ショルツ財務大臣の計画にはEUの資本ルールを修正することも含まれている。それは、銀行が自国の政府債務を大量に購入するインセンティブを排除するものである。また、企業に対してその収益への課税ルールをEU内で共通化するという修正も含まれている。
ショルツ財務大臣は、EU内で銀行破産法を調和させたいと考えており、各国内のルールをパッチワークのようにつなぎ合わせるという既存の方法では、優先債権者たちに破綻した銀行に関するコストを確実に分担させようとするEUの試みを骨抜きにしていると主張している。
ロイターが報じた内容によると、これまでのところ、ショルツ財務大臣の計画は「熱のこもっていない歓迎」を受けているにとどまっている。欧州中央銀行と欧州委員会は、ともに新たなトップが就任しており、両氏ともにこの欧州大陸の銀行連合を完遂することを支持していると報じられている。依然としてショルツ財務大臣の計画に反対している人たちはいるものの、彼らの間でもさらなる議論を「始めるための土台としては非常に良い」と好感触であると報じられている。
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