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イタリア国債がギリシャを抜きユーロ圏で最もデフォルト・リスクが高い政府債務に:FT紙が報道

Roman ruin

先週、世界の市場で楽観論が広がり債券の利回りが高騰したことにより、マイナス利回り債が12兆ドルを下回った。これは今年6月以来の低いレベルである。ただし、マイナス利回り債が依然として約12兆ドルもあるというのは異常な状況であることに変わりない。そして各国の中央銀行が絶えず世界の金融市場に介入していることにより、資本市場ではまた未曾有の歪みが起きている

 

これまでユーロ圏ではギリシャが最もデフォルト(債務不履行)リスクが高い国であった。2010年に起きた「ギリシャ経済危機を記憶している人も多いだろう。しかしそんなギリシャの国債利回りが2008年以来初めてイタリアの国債利回りを下回り、「ユーロ圏で最もデフォルト・リスクが高い国」という汚名を返上したとファイナンシャル・タイムズ(FT)紙が報じた

 

投資家の間で高利回り資産への投資意欲が旺盛であるため、今年、ユーロ圏における経済危機の震源地であったギリシャ国債にも投資資金が流れ、その価格を急騰させている。先月末、S&Pがギリシャの与信格付けを「BB-」へと引き上げたことも後押しとなり、このギリシャ国債に対する投資トレンドがさらなるモーメンタムを獲得している。

 

しかしFT紙が報じているように、ギリシャ国債の市場規模は小さい。その政府による借金のほとんどは、EUおよびIMFからの低金利の融資である(EUとIMFがギリシャに対して行った一連の救済で貸し付けた低金利融資)。つまり、これはギリシャの政府財政をすぐさま圧迫するような借金はイタリアに比べて少ないことを意味している。一方イタリアは、政府が抱える巨額の借金を借り換えることを市場のみに頼っている

 

「私たちは、ギリシャ経済が底を打ったと見ており、ある程度のギリシャ国債をまだ保有している。しかしより重要なのはその債務構造だ。この先5年間、(ギリシャ政府は)キャッシュ・フローが必要になることはほとんどない。しかしイタリアは、常にロールオーバー・リスク(*)がある」と、Legal & General Investment Managementの債券ストラテジストであるクリス・ジェフリー氏は語った。

 

(*)ロールオーバーとは

ロールオーバー(Rollover)とは「乗り換え」を意味し、先物取引などで保有しているポジションを取引最終日までにいったん決済し、次の期限(次限月)以降のポジションに乗り換えることを指します。

(引用元:https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ro/J0561.html

 

2012年初頭、ギリシャの5年もの国債の利回りは最高60%をつけていた。しかし現在はわずか0.5%を下回っている状況である。

 

一方、イタリア国債も、この夏の世界的な債券投資ブームの波に乗り、力強いパフォーマンスであったが、一部の投資家の間では昨年のイタリア国内における政治的緊張の高まりを懸念しイタリア国債への投資を手控える動きが残っている。

 

しかし本当に懸念すべきことは、通貨ユーロの「リデノミネーション・リスク」(**)なのかもしれない。ブルームバーグによると、通貨ユーロの「リデノミネーション・リスク」は2018年半ば以降イタリアで起きる可能性が最も高かったが、現在はそのイタリア(リスク指数34.55)を抜いてスペインで起きるリスク(リスク指数41.34)が最も高い状態となっている。

 

(**)リデノミネーションとは

2002年、欧州の通貨統合(=ユーロ導入)が行われたが、リデノミネーションは、参加国が自国の通貨を新通貨に変換するなど、通貨単位を変更することをいう。ユーロ導入に伴い、参加国の既発国債について、コンバージョン・レートが適用され、ユーロ建てに変換された。これも通貨単位の変更なので、リデノミである。

(引用元:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ri/redenomination.html

 

S&Pは、依然としてイタリア国債に対してギリシャ国債よりも数段高い格付けを行なっているが、イタリアの格付けの見通しは暗い(ただしまだ投資適格レベル)。しかしリデノミネーション・リスクがスペインで高まっている状況を考えると、ユーロ圏における経済危機を引き起こす可能性はスペインが握っているのかもしれない。

 

新たに欧州中央銀行の総裁に就任したラガルド総裁は、マイナス金利は経済にとって良い政策と確信しているようだが、ユーロ圏におけるデフォルト・リスクは依然としてくすぶっている。

 

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