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【論説記事】反トランプ弁護士が、トランプ訴訟団の弁護士へ脅しと嫌がらせを行う|司法制度そのものを標的にすることは暴徒の正義

【論説記事】反トランプ弁護士が、トランプ訴訟団の弁護士へ脅しと嫌がらせを行う|司法制度そのものを標的にすることは暴徒の正義

ジョナサン・ターリー教授(Photo via Jonathan Turley's Twitter)

トランプ陣営の訴訟を担当している弁護士事務所が、反トランプである共和党グループの「リンカーン・プロジェクト」から訴訟案件を取り下げるよう圧力を受けていると報じられてまだ数日しかたっていない中、新たに、トランプ陣営の訴訟に加わっている弁護士がハラスメントの被害に遭っていることが明らかとなった。

 

フィラデルフィアを拠点に活動するリンダ・カーンズ弁護士は、11月15日(日曜)に法廷に提出した文書の中で、ワシントンDCにあるカークランド&エリス弁護士事務所の弁護士から、1分間の留守番電話メッセージを受け取ったと記している。そのメッセージの内容は、「プロフェッショナルな行動基準に抵触している」ものだったという。ちなみに、カークランド&エリス弁護士事務所は、トランプ陣営が起こしたペンシルバニア州での訴訟で、被告となっているキャシー・ブックバー州務長官の弁護を担当している。

 

リンダ・カーンズ弁護士は、法廷に提出した申し立ての中で次のように記している:

本訴訟案件が提出されて以降、その署名者である訴訟代理人弁護士は、嫌がらせのeメール、電話、物理的および経済的な脅迫、そして国家反逆罪という非難まで受けるという形で、継続したハラスメントの被害に遭っている——これらは全て、アメリカ合衆国大統領の代理人になっているからという理由である。・・・

 

2020年11月14日午前8:43、カークランド&エリスの1人の弁護士が、署名者の訴訟代理人に1分間の留守番電話メッセージを残した。この留守番電話メッセージは・・・それを聞けば明らかなように、到底受け入れることができないものでありプロフェッショナルな行動基準に抵触している。

 

カークランド&エリス弁護士事務所は、当初、留守番電話メッセージの中でハラスメントを行ったとされるこの弁護士が、自分たちの事務所で勤務している社員ではないとはぐらかそうとした。しかし後に彼らはこの弁護士が同事務所で勤務していることを認めながらも、本訴訟案件には携わっていないという言い訳をしている。しかし、彼が残した留守番電話メッセージは「失礼なもの」だったことには同意している。

 

こうしたトランプ陣営の訴訟弁護士たちを個人的に攻撃する動きについて、憲法学者のジョナサン・ターリー教授が以下の論説記事を保守系メディアのThe Hillに寄稿している(同じ論説記事を自身のサイトにも掲載している)。以下はそれを翻訳したものである。(太字強調は編集部)

 

* * *

 

ジョナサン・ターリー筆|11月16日掲載

 

大統領選挙の勝者が宣言されてから24時間もたたずして、メディアと多くの法律アナリストたちは、結果を変えるような不正選挙の証拠は一切ないと宣言した。問題は、その時、トランプ陣営が法廷に提出した書類や証拠を、我々はまだ目にしていなかったということだ。トランプの弁護士たちが、死亡した人が投票していたであるや、(選挙の法律や手続きの変更について)バイアスのかかった承認が行われていたと主張する訴訟を起こし始めるにつれて、彼ら(反トランプ)の解決策は次のようなものになった:弁護士を排除しろ。弁護士がいなければ訴訟もないしトランプもいない

 

非常に懸念を抱かせるのは、こうした行動が弁護士によって主導されたり後押しを受けているということだ。ワシントンポスト紙のコラムニストであるランダル・エリアソンを見てみよ。彼はトランプに対する弾劾裁判に関する数多くの陰謀論を支持したり、犯罪行為が行われたと主張したことで悪名高い。その中には、連邦最高裁によってかなり前に否決された収賄の解釈が含まれており、これについては弾劾裁判を行うことに熱心だった下院司法委員会ですらその解釈を採用しなかった。エリアソンは、「Yes、トランプの弁護士事務所を攻撃することは公正なゲームだ」というコラムを執筆している。(最終的な標的がトランプであれば、なんでも公正なゲームとなるようだ。)エリアソンは、その人の主張ではなく、その人の弁護士を攻撃するというのは常軌を逸したものであるという考えを一笑に付している:「法律とは専門職であるが、これら巨大弁護士事務所は、大会社でもある。他のどのビジネスとも同じように、彼らは社会に対して説明責任を負っている——そして彼らの他の顧客に対しても」。

 

しかし法律は、他のどのビジネスとも同じではない。弁護士は他者の代弁を行う。その中には、社会の中で悪者とされる人たちがいる。私は、判事や議員、内部告発者からスパイ、テロリスト、一夫多妻主義者にいたるまでクライアントにして彼らを弁護してきた。彼らの多くが世間では非常に嫌われていた。世間は、私がロースクール(法科大学校)から解雇されるべきだと要求した——しかし、私は弁護士が他の弁護士に対して攻撃するこのような組織的運動をいまだかつて見たことがない

 

我々の司法制度は、有能な弁護士が、私情を挟まない判事に訴訟案件を提示する場合、最も上手く機能する。今回の案件では、7200万人のアメリカ人がトランプに投票し、多くがその(投票)プロセスの変更——特に郵便投票が大量に行われたこと——が選挙の完全性を土台から壊したと信じている。これこそ、これら訴訟案件が重要な理由である:我々の司法制度および政治制度に対する信頼は、裁判所に抗議することができるという公正な権利にかかっている。

 

過去に行われてきたように、メディアと活動家との間には、懸念すべき共生関係があるバイデンが勝者となることが確実と見るや、不正投票という仮説はまたたくまに「陰謀論」になった。リンカーン・プロジェクトのようなグループは、弁護士事務所を標的にし、トランプをクライアントからはずさせようと強制する組織活動を開始した。

 

この組織活動が原因となり、ツイッター社は、(ドクロ・マークの絵文字をつけて投稿した)ツイートは脅迫であるとみなし、トランプの弁護士たちを個人的に標的にしていたリンカーン・プロジェクトをブロックしている。しかしこれはリンカーン・プロジェクトを興奮させただけにすぎなかったようだ。同組織は民主党と協力し、ポーター・ライトといった複数の弁護士事務所を標的にして、その所属弁護士を脅し、彼らの職業人生を終わりにすると脅していると報じられている。リンカーン・プロジェクトは、選挙訴訟においてトランプのために働くいかなる弁護士事務所も、「我々の民主主義にとって危険な攻撃」の一部だと主張している。人々から彼らの弁護士を奪い去ろうとする試みこそ、当然、我々の民主主義に対する本当の攻撃である——しかし彼らの試みは効果を挙げている:ポーター・ライト弁護士事務所は屈服し、訴訟を取り下げた。同弁護士事務所は、こうした圧力が社内に争いを引き起こし、少なくとも1人の弁護士が退職したと述べている。

 

マッカーシー時代には、かつて他の組織活動が弁護士個人や「共産党のシンパ(fellow travelers)」と呼ばれる人々を標的にしたことがある。今年の大統領選挙後、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州選出・民主党)は、リベラル派たちに、トランプ政権に「加担している」敵のリストを作成するよう呼びかけた。(皮肉にも、バーニー・サンダースの代理人によってこのリストに記入された最初の人物たちは、リンカーン・プロジェクトを創設した共和党員たちであった。)オバマの元上級広報官であるハリ・セブガンは誇らしげにこうツイートしている:「ホワイトハウスのスタッフたちは、転職先を探し始めている。彼らを雇用する検討を行なっている雇用主たちは、トランプがアメリカの価値観を攻撃することを手助けしたこれら人物を1人でも採用すれば、それに伴う結果(報復)があることを知るべきだ」。

 

しかし、トランプや彼の選挙陣営の代理人を勤める弁護士たちを脅そうとする活動は、報復とは関係ない。これは保険と関係している。こうした法廷闘争が成功する可能性はますます低くなっているが、(トランプの)敵対者たちは司法が票を精査するというリスクを犯したくないと思っている。ソーシャルメディア上で行われている組織活動は、ジョーンズ・デイ弁護士事務所といった会社のクライアントまでも標的にしている。その一方で、リンカーン・プロジェクトは、こうした弁護士事務所で勤務する弁護士たちの人生を生き地獄にするために50万ドルの資金提供をすることを約束している。これはまさに、声を上げる人たちを「(SNSなどの)プラットフォームから追い出し」たり、自宅にいる個人に嫌がらせをするといったANTIFAやその他の活動家たちが利用する戦術である

 

トランプは多くのアメリカ人の間で——そして実質的に全てのメディアで——非常に人気がなく、そのため、彼を支持したり代弁する人にハラスメントを行うことが蔓延している。司法制度そのものを標的にすることは暴徒の正義(mob justice)だそれでもなお、エリアソンのような弁護士たちがこの活動に賞賛の声をあげている

 

エリアソンは、トランプ陣営と共和党グループが「不正選挙という根拠のない疑惑を含んでいるように見える訴訟を起こし、合法的な票を拒否させようとしている」と言い、このようなハラスメントを正当化している。ここで、「〜ように見える(appear)」という一言に注目だ。エリアソンはこのコラムを書いた時、(疑惑の真偽について)知らなかった。なぜなら、彼は証拠を見ていなかったからだ。私も見ていない。今週、法廷が係争中である異議申し立ての公判を開くにつれて、我々は初めて、根拠となる証拠(もしくはその根拠がないこと)を目にし始めている。何かが真実であって欲しいと望むことと、何かが真実であると知ることとは違う。それは一般的に法廷が決めることだ。

 

しかし、議論を行う辛抱強さなどは(今のアメリカに)ほとんど存在していない。訴訟や今回のこうした法的問題などは言うまでもなく。金曜、私は、数千ものトランプ票が当初バイデン票として集計されていたミシガン州の選挙区を含むさまざまな法廷闘争について議論を行なった——この選挙区は、全米で大きな議論を巻き起こしているのと同じ投票システムを使っていた。私はミスが起きた票集計は、人的エラーの結果であり「悪意のあるものではない」と説明したが、こうした新しいシステムやソフトウェアが人的エラーに対して脆弱性があるかどうかについては議論の余地が残っている。システム上の問題がある証拠はないと私は記したが、コロラド州のポール・カンポス法学部教授は、私のことを公然と非難し、「ホロコースト否定論者」も同然であり解雇されるべきだと発言している。

 

特にこうした活動によって最も害を受けているのは、ジョー・バイデンである。選挙で当選した次期大統領として自らの正当性を証明するために、こうした(不正疑惑の)事例を透明性を持って精査することを求めるのではなく、彼の支持者たちは弁護士に嫌がらせをし、ヒステリーに満ちた報復キャンペーンを進めている。これはアイロニーに満ちた意外な展開だ:我々の多くは何年にもわたって、トランプが彼を非難する人たちをひどく迫害し、そしてロシアゲート疑惑への捜査を断念させようとしていることに驚嘆してきた。トランプが優れているところは、彼が完全で開かれた捜査を行うことを支持したということだ。そして現在、同様に、組織的な不正が行われたという説得力ある証拠はない。ここでバイデンが行うべきことは、完全で開かれた捜査を支持するということだ。脅迫やバイアスに満ちたメディア報道は、トランプへ投票した人たちの猜疑心を深めるだけである。

 

代替策はある。全ての票がカウントされるべきであり、全ての選挙訴訟について公判が開かれるべきだということに、我々は全員合意することができる。我々の政治制度と司法制度はともに人々の信頼を必要とする——そして今回の信頼に対するクライシスは、政治制度から司法制度へと移行した。法廷は、法廷の外に蔓延している怒りを理性が超越する場であるべきである。しかしそのためには、やはり弁護士が必要となる

 

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