ビデオ通話アプリZoomの創業者エリック・ユアンCEOが60億ドルの同社株を譲渡——同氏が持つ純資産の40%に相当
約1年前、「ビデオ会議アプリZoomはマルウェアである」とプリンストン大学の教授が指摘したが、世の多くの人たちはその警告を問題視しなかったようだ。パンデミックにより世界中のホワイトカラー労働人口がZoomのビデオ通話アプリを利用し始めたことにより、昨年、同社の株価は高騰した。同社の売り上げと利益率も同様に急増した。2020年夏に同社の株価がピークに達した時、1株500ドル以上の値をつけた。これはロックダウンが始まる直前数日間の株価から4倍の高騰である。
エリック・ユアン氏が2011年に創業したZoomは、2019年末に新規株式公開(IPO)を果たしていた。その直後にパンデミックが発生して株価が高騰したことで、創業者のエリック・ユアン氏が個人で保有する純資産は160億ドル近くにまで跳ね上がり、世界で122番目の金持ちに躍り出た。しかしユアン氏は、その個人資産の大部分を譲渡したと、ウォールストリートジャーナル紙が3月8日(月曜)に報じた。
有価証券報告書によると、ユアン氏は彼が保有するZoomの所有権の40%、価値にして約60億ドルを、2回の取引に分けて匿名の人物(1人か複数かは不明)に譲渡した。この取引は3月3日付け(そして2度目は3月5日と報じられている)に行われ、ユアン氏と彼の妻が管理する信託(トラスト)から所有権が移動されている。各取引で約900万株、合計で1800万株が譲渡されたと記録されている。かつて、ユアン氏はZoom株の15%を支配する最大株主であると同時に、同社の議決権の40%を支配していた。
Zoomの広報担当者は声明の中で、次のように記している:
エリック・ユアン夫妻の信託が定める条件に従ってこの分配は行われ、ユアン夫妻が通常行っている遺産計画となんら違いはなく一貫した取引である。
しかし同社は、現在、ユアン氏が譲渡した株式を誰が管理しているかについては語らなかった。また、ユアン夫妻はコメントを求められたが何も回答しなかった。
Zoomは先週、大幅に予想を上回る収益を計上した。パンデミックが収まり、対面での仕事が間も無く戻ってくると予想されているにもかかわらず、同社は今後も力強い成長が続くと予想している。
Zoom はカリフォルニア州サンノゼに本社を置いているが、昨年、有名活動家グループが天安門事件31周年のオンライン追悼集会を開いたところ、Zoomがそれを強制閉鎖するという事件が起きていた。この事件が発生した時、アメリカの上下院はユアンCEOに対して質問状を送付しており、ジョッシュ・ホーリー上院議員は「アメリカとチャイナどちらにつくか選択せよ」と迫っていた。
チャイナ生まれのユアン氏は、帰化して米国民となっている。シスコでエンジニアとして働いた後、Zoomを立ち上げるために退職した。しかし帰化して米国民となった後も、ユアン氏は彼の母国と密接な関係を持ち続けていることや、同氏がチャイナ共産党(CCP)とつながりがある可能性があること、そしてCCPがZoomへ浸透している可能性が疑われていることは、一部の人々の間で不安を煽っている。(明らかにZoomのユーザの大多数はそんなことを気にも留めていないが。)
Zoomとその創業者であるエリック・ユアン氏には、すでにチャイナと不透明なつながりがあることを考えると、同社の新しい所有者が匿名となっていることは一部の人々の間でいっそうの不信感を招いている。
仮に、ユアンCEOがZoomの所有権の40%を譲渡した先が、習近平やその家族、またはチャイナ共産党の高官であることが判明した場合、市場はどのような反応を示すだろうか?それでもZoomのユーザたちは気にすることなく同社サービスを使い続けるだろうか?
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