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アーキゴスがデフォルトした余波で野村HDとクレディスイスに巨額の損失が発生——アーキゴスが失敗した「証券CFD(差金決済)取引」は2008年金融危機と同じ隠れたシステミック・リスクを孕む

アーキゴスがデフォルトした余波で野村HDとクレディスイスに巨額の損失が発生——アーキゴスが失敗した「証券CFD(差金決済)取引」は2008年金融危機と同じ「隠れたリスク」を孕む

アーキゴス・キャピタルのビル・ホワン氏(Photographer: Emile Wamsteker/Bloomberg)

【この記事の短縮URL】 https://bonafidr.com/u1e4X (『https://』は省略可能です)

ヘッジファンドのアーキゴス・キャピタル・マネジメント(Archegos Capital Management LLC)に、米国時間3月26日(金曜)、巨額の追証(マージンコール)が発生し、債務不履行(デフォルト)に陥った。その余波が、週末が明けた29日(月曜)、プライマリー・ブローカーの野村HDとクレディスイスを襲った。

 

(この記事は、3月27日付けの「NY市場でチャイナのIT関連企業と米メディア企業の株価が暴落・・・原因は1社のヘッジファンドに発生した追証(マージンコール)」の続報です。

 

日本経済新聞は日本時間の3月29日(月曜)、次のように報じている

野村HD、2200億円の損失か 米国での顧客取引で

 

野村ホールディングスは29日、米国の顧客との取引に関連して多額の損失が生じる可能性があると発表した。損害が生じる事案が発生したのは26日で、同社から当該顧客に対する請求額は26日時点の市場価格ベースで約20億ドル(約2200億円)。発表を受けて野村HD株は29日、一時前週末比16%安となる場面もあった。

 

実際、野村HDの株価は、この日16.3%下落し、同社にとって過去最大の下げ幅を記録した。

 

アーキゴス・キャピタルがデフォルトした余波は、クレディスイスにも及んだ。クレディスイスは、クライアントの1社である米国のヘッジファンドが追証の要求に応じられずデフォルトしたことにより、「かなり深刻な」損失に直面する可能性があると発表した。すると、クレデイスイスの株価は16%近く急落した。これは昨年3月以来、1日の下げ幅としては最大であり、同社の2021年の株価上昇分を全て消し去っている。

 

クレディスイスに発生した実際の損失金額は明らかにされていないが、おおよそ20億ドル〜30億ドル(約2000億円〜3000億円)の範囲と見積もられている。

 

クレディスイスはeメールで以下の声明を発表している:

現時点で、このエグジットから発生した損失の正確な規模を数量化することは時期尚早であるが、これはかなり深刻なものになる可能性があり、我々の第1四半期の結果に重要な影響をもたらす可能性がある

 

クレディスイスは、未解決のグリーンシル・キャピタル倒産スキャンダルの渦中にもあり、スイスの大手投資銀行は立て続けに2つの巨額損失に襲われている。

 

アメリカの金融関係者は、野村HDとクレディスイスが、「ウォール街のサメ」ことゴールドマンサックスに「ババ」を引かされたとコメントしている。

【訳】2社が「ババ」を引かされた。(添付画像は野村HDとクレディスイスのこの日の株価。)

 

クレディスイスは、たった「1日」で1年間の全ての利益を失った。別名ウォール街のサメことゴールドマンサックスに出し抜かれたからだ。

 

(添付画像のメッセージ)この業界で生業を立てるためには3つの方法がある:

 

1番になること、賢くあること、または(他人を)騙すこと。

 

本件を知る1人の人物からの情報によると、ドイツ銀行も、アーキゴスにある程度のエクスポージャーを抱えているが、ドイツ銀行はまだ損失を被っておらず、ポートフォリオを管理しているという。一方、アーキゴスに追証を最初に発動したと報じられているゴールドマンサックスは、株主やクライアントに対して、同銀行がアーキゴスとの取引で直面した損失額は取るに足らない金額である可能性が高いと伝えていると報じられている。

 

* * *

 

3月26日(金曜)、巨額の追証に応じられずデフォルトを起こしたアーキゴス・キャピタルのニュースは、株式市場の片隅で行われてきた「証券CFD(差金決済)取引」に改めて光を当てることになっている。

【そもそも「証券CFD取引」とは?】

証券CFD(差金決済;Contract For Difference)取引とは、少額の証拠金を預託し、国内外に上場する株式、世界の主要な市場の株価指数・株価指数先物、債券先物等の価格を参照し、取引開始時と終了時の価格差により決済が行われる差金決済デリバティブ取引の一種です。 (出典:日本証券業界

 

ビル・ホワン氏が運営するアーキゴス・キャピタルが利用したレバレッジの多くは、野村HDやクレディスイスといった投資銀行が提供していたとブルームバーグ通信は報じている

 

取引所を通さずに行われる「証券CFD取引」により、ホワン氏のような運用マネージャーは、上場企業の株式を申告することなく保有することができる(規制当局への報告が必要な5%をはるかに超える株式を保有していた)。

 

これは、「証券CFD取引」が取引開始価格と取引終了価格の差額を現金で決済する非公開の(つまり取引所外の)先物契約のようなものであるため、アーキゴスは、同社が投資する株式のほとんどについて、その原証券(現物の証券)を一度も保有していなかった可能性があるとブルームバーグ通信は記している。(証券CFD取引では物理的な商品や有価証券の受け渡しは行われない。)

 

さらに状況を悪化させているのは、アーキゴスが様々なプライムブローカー(野村HDやクレディスイスのような投資銀行)でこれら証券CFD取引のポジションを保有していたと言われていることだ。これらの投資ポジションは、その性質上、中央でクリアリングされたり集約されることがないため、プライムブローカーAは、プライムブローカーBが抱える顧客のエクスポージャーを知らされない状態に置かれていた。そして今回のアーキゴスのケースでは、そのエクスポージャーが巨額だった。

 

各プライムブローカーからホワン氏に与えられたレバレッジは、ホワン氏をあたかも証券取引の天才であるかのように見せていた。なぜなら、巨額のレバレッジにより、彼の投資先は(「ガンマ・スクイーズ」の助けを借りながら)株価がどんどん膨張して行ったからだ。しかし賭けが大失敗した現在、彼はただ無謀なギャンブル狂にしか見えない。

 

株式に連動する証券CFD取引(2020年6月末時点の時価総額は合計約2820億ドル)は、公的な取引所を通さずに投資家同士、もしくは店頭取引で、非公開取引するビスポーク・デリバティブの一種である。これこそ、2008年の金融危機で損失を拡大させることになった隠されたリスクと全く同一のものである

 

ブルームバーグ通信が指摘するように、規制当局は近年、証券CFD取引が個人投資家にとって複雑でリスクが大きすぎるデリバティブであることを懸念して、証券CFD取引の取り締まりを始めている。2018年には欧州証券市場監督機構(ESMA)が個人による参加を制限し、レバレッジに上限を設けている。米国では、証券CFD取引はアマチュア・トレーダーにはほぼ禁止されているが、「洗練された」ヘッジファンド・マネージャーには禁止されていない。

 

しかし、それでもなお銀行は証券CFD取引を支持している。その理由は、実際の有価証券を取引するのに比べて、それほど多くの資本を預託する必要がなく、大きな利益を得られるからだ。2008年の金融危機(リーマンショック)後に厳しい規制が導入された結果、投資銀行はこのような不透明な市場に追い込まれたとも言える。

 

アーキゴスの場合、ホワン氏が行っていた取引に関する透明性はほとんどない。しかし市場関係者によると、ホワン氏が運用する資産は、近年50億ドルから100億ドルに拡大し、エクスポージャーの総額は500億ドル(5兆円)を超えていたという。これは、従来の意味での「レバレッジ」(つまり、銀行がそのクライアントに対して資本金のX倍の株を買えるように許可すること)ではなく、純粋に人工的に作りあげられた取引である。アーキゴスは追証が発動された時に現金化できる原資産を保有しておらず、それどころか、証拠金ベースの損失(および利益)に直線的に比例するリスクにさらされている。

 

そして冒頭で述べたように、アーキゴスの追証(マージンコール)によって生じた損失は、さらなるマージンコールを誘発し、複数のプライムブローカーの潜在的な損失を増大させるため、今回、1社が起こした債務不履行はよりシステミックなものになる可能性がある。実際、クレディスイスのカウンターパーティ・リスクをヘッジするコストが、ここ数日で爆発的に高騰している・・・。(デリバティブ商品のカウンターパーティ・リスクを管理するマネジャーたちが、自身が抱えるリスクをヘッジするために着目するのがこのヘッジング・コストである。)

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