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迫り来る次の金融危機では複数の銀行が同時破綻する可能性大+取り付け騒ぎを防ぐため「国民に知らせるのは慎重に」——米連邦預金保険公社(FDIC)の諮問委員会で議論【動画あり】

Screenshot via FDIC

米連邦預金保険公社(FDIC)が2022年11月9日に開いた「FDICシステミック・レゾリューション*諮問委員会会議(FDIC Systemic Resolution Advisory Committee Meeting)」の中で、参加者たちは迫り来るビジネス・セクターの崩壊に伴い預金者保護が難しくなる可能性や、一般預金者には金融機関の破綻リスクを公表するのは慎重になるべきということ、そして預金保護の代替策として「ベイル・イン(bail-in)」について議論する動画が公開された

(*「レゾリューション(resolution)」は、この場合、「破綻処理」、「整理」、「問題解決」の意味。)

会議の参加者(主に預金ブローカー)たちは、迫り来る金融危機について議論しながら、彼ら自身も米国の金融システムについて信頼していないことを公然と口にする一方、預金者が取り付け騒ぎを起こすことをいかに防ぐかについて議論している。

FDICの公式HPは、この日の会議の目的を次のように説明している:

2022年11月9日、システム上重要な金融会社の整理・破綻処理に関する幅広い政策課題について助言・提言を行うため、FDICシステミック・レゾリューション諮問委員会の会合が開催される。

米連邦預金保険公社(FDIC)とは?

米連邦預金保険公社(FDIC)は、アメリカ合衆国において、被保険銀行における所定の預金を保護するために、預金保険業務を行う米国政府の独立機関(公社)をいいます。

1929年に始まった世界恐慌により多くの銀行が破綻したことを受けて、預金の保護政策を迫られた当時の連邦議会が、マサチューセッツ州で運用されていた預金保険基金を参考として、1933年に設立されたものです。

現在、FDICの加盟銀行については、万が一破綻した場合、普通預金や当座預金、譲渡性預金などの預金者一人当たりに対して10万米ドル、個人退職勘定として更に25万米ドルまでの預金保険を提供しています。

ちなみに、日本の預金保険機構は、預金者の保護を主な目的として、FDICをモデルとして1971年に設立されました。(出典:iFinance

とある会議参加者は、「もしこれを公表したら国民を怖がらせてしまうのではないか」と言い、さらに、「この部屋にいる人たちよりも銀行システムを信頼している一般の人たちに伝えることで生じる意図しない結果について、私たちは慎重に考えなければいけない・・・このことを一般国民に大きく公表し始めることによる意図しない結果について、私だったら慎重になる」と語っている。

さらに別の参加者は、「一般の人々(預金者)には“ベイル・イン(bail-in)”の可能性があることを理解してもらうことが重要だが、いずれにしても金融機関に大規模な取り付け騒ぎが起きることは避けたい…(しかし)彼らはそうする(取り付け騒ぎを起こす)ことになるだろう…それはFDICと他の主要規制当局にとって早期警戒シグナルになる可能性がある」と語っている。

ベイル・イン(bail-in)」とは、銀行が破綻した際に、預金を返金してもらう代わりに、破綻した銀行の新株が預金者に渡されること。預金者は、破綻した銀行の所有権を得ることになり、将来的に運が良ければ、その株を売却し、もともと預け入れていた預金の一部を回収できる可能性がある。

預金者に預金保険を提供しているFDICの諮問委員会が、銀行が破綻した場合には「ベイル・イン(bail-in)」が行われる可能性を公然と議論していること自体が、アメリカの銀行、そして金融システムそのものがどこへ向かっているかを物語っている。

3時間半にわたるこの会議を収録した動画は、FDICの公式HPで視聴することができる。

この会議動画は、ユーチューブにも投稿されている:

* * *

▼以下は、この会議の中で行われた発言の一部を抜粋し翻訳したもの。

0:57 「結局のところ、システム上重要な金融機関の秩序ある破綻を私たちがマネジメントできるかどうかが、おそらく、この機関(FDIC)の究極の信頼性テストになるでしょう。そしてこの機関がどう見られるかは、私たちがこの課題にどう対処するかで決まります。その責任を果たすために準備することが、私たちの活動の絶対的中心となるものです」。

11:38「そして、消費者金融保護局(CFPB)の長官が、消費者金融やリテールバンキングで巨大な存在感を持っている金融機関、つまり非常に多くの口座を持つ金融機関が破綻することを懸念していること、そして破綻したときに地域的影響、全国的な影響がある金融機関が破綻することにCFPB長官が懸念していることは、なんら不思議ではないと私は思います」。

19:20「ここで、議長がおっしゃったように、透明性というトピックについて議論したいと思います。FDICには、国民の信頼を育んできた長い実績があります。銀行の建物に入ってFDICのロゴの看板を見れば、自分の預金は安全だということは誰でも知っています。私たちは、(ドッド・フランク法で定められた「秩序ある清算権限」である)「タイトルII」の権限を行使する際に、その育まれた信頼性を足場にして事を進めたいと考えています。要するに、私たちが皆さんに求めているのは、国民の信頼と信用を高めるために、誰がいつ、何を知る必要があるかということです。

22:10  「連携するには多くの課題があります。管理・監督者は破綻について多くを語りたがりませんし、破綻処理の専門家は破綻についてしか語りたがりません。ですから、私たちは、渡らなければいけない橋があって、それを渡って人々を一致団結させる必要があります」。

24:09 「…そして第3に、そしてこれが本当に最も重要なことですが、私たちは、情報、リソース、そして専門知識を事前に共有し、危機的状況の際にすぐに利用できるように確実にしておく必要があります」。

31:44「最後に、これは既にグリュンバーグ議長やジョンが述べていることですが、ここまでの私のコメントは、銀行と銀行持株会社に焦点を当てたものだということに言及しておきたいと思います。私たちは、銀行と銀行持株会社に対して監督上の見識と「タイトルI」の業務(権限)を持っています。私たちは、これらの金融機関に対する破綻処理を強固に準備することを支援するためにそれを活用しています。 しかし、ノンバンクの破綻が米国の金融の安定性を脅かすような場合には、ノンバンクの破綻処理にも責任を負うことになります。しかし、ノンバンクの金融機関が関わる業務はより難しさが増します。FDICは、ノンバンクの破綻処理に必要なツールを同じように持っておらず、そうした金融機関の破綻処理の経験や見識も(銀行の破綻処理の知見と)同じものは持っていません。2020年の時点で私たちがよく議論していた共通の課題は、これら(ノンバンク)企業の1社の破綻処理を行っていた最中、またはそれに向けた準備段階で、FDICは必要となる特定のデータにアクセスできないということでした。

59:06次の出来事(金融危機)は、(投球の)サインも、ワインドアップ(ピッチャーが投球するために両腕を頭上に上げる仕草)も、ピッチングも、球すらなく、それはただ突然、起きるのかもしれません。ですので、私たちは非常に加速された世界に住んでいるので、このような出来事の多くにおいて、私たちは思考を加速させなければいけないと思います。また、私たちは二律背反の結果(破綻するか否か)という事象の中に住んでいます。そしてその事象は、複数の機関に同時に影響を与える(つまり同時破綻の)可能性が高いのです

1:24:14危機という点で、それを本当に知る必要のある人たちとコミュニケーションするFDICの能力について、私は少し悲観的です。これは、私がこのようなことを教えてきた経験からも言えることです。(別の会議参加者から高らかな笑い声。)(2008年の)金融危機の直後は、多くの人が関心を示しました。しかし、時間が経つにつれて人々の関心は下がりました。このように、人々は、(金融危機についての)細かい部分や本当に興味深い展開にますます興味を示さなくなっていきました。FDICのあるべき戦略は、専門的にそれを知る必要がある人々にできるだけ多くのことを開示することだと私は思います。そしてその対象には・・・当然、格付け会社と、そうした判断に責任を負う銀行内部の人間たちが含まれるべきです。そしてもっと知りたいと思ったときに、彼らが行ける公開された場所を提供するだけでいいのです。私たちは、ツイートで情報を得る社会になっているのですから。・・・誰でもアクセスできる場所に公開さえすればいいのです。人々が知る必要があるときにアクセスできるようになっていればいいのです。しかし、職業上知る必要のない人々にもFDICが情報を届けることは、あまり期待できないと思います。

1:25:19「私はまったくもってそれに同意見です。もしこれを公表したら国民を怖がらせてしまうのではないかと思うくらいです。『なぜ彼ら(FDIC)は私にこんなことを言ってくるんだ?』というようになるでしょう。『私は自分の銀行を心配する必要があるのか?』(と国民を怖がらせてしまうでしょう)・・・この部屋にいる人たちよりも銀行システムを完全に信頼している一般の人たちに(この情報を)伝えることで生じる意図しない結果について、私たちは慎重に考えないといけないと思います。彼らには銀行システムに対して完全な信頼と信用を持ってもらいたいと私たちは考えるべきです。彼らは、FDIC保険があることを知っています。それが機能していることも知っています。彼らは自分のお金をそこに預けている。(破綻リスクを伝えれば)彼らは自分のお金を引き出してしまうでしょう。

機関投資家サイドに属する優秀な人たちがいますし、もし彼らがこのことを理解しようと思えば、それを理解する方法を見つけるでしょう。この部屋にはたくさんの法律事務所を代表する人たちが参加しています。彼ら(機関投資家サイドの人たち)にこのことを説明するために、時間単位で大金を請求する人たちがたくさん参加しています・・・私はそれについて問題だとは思っていません。彼ら(法律事務所)はどこも大量のスタッフを抱えています。ですが、このことを一般国民に大きく公表し始めることによる意図しない結果については、私だったら慎重になるでしょう」。

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