イーロン・マスク氏が独自のAI開発プロジェクトのために1万個近いGPUを購入=報道——先月アルファベット社のDeepMindから2名のエンジニアがTwitterに移籍
イーロン・マスク氏は、Twitter社(*)でAIプロジェクトの計画を進めているようだとBusiness Insiderが4月11日に報じた。Twitter社に詳しい2人の匿名の人物によると、マスク氏は最近、開発中のAIプラットフォームで使用するため1万個近いグラフィック処理ユニット(GPU)を購入したという。
(*Twitter社は新設されたペーパーカンパニーX Corpに統合されもはや存在していないが、便宜上、ここではTwitter社と表示する。)
イーロン・マスク氏は、「GPT-4より強力な新しいAIツールの開発を6ヶ月間休止するよう求める公開書簡に署名した」とウォールストリート・ジャーナルが3月29日に報じていた。もしBusiness Insiderの今回の報道が本当なら、人類の未来を憂いた公開書簡は、しょせん自社がAI開発競争に追いつくための時間稼ぎのパフォーマンスだったということになるのかもしれない。
通常、GPUは、大規模なAIモデルに利用される。というのも、大規模なAIモデルには膨大な計算能力が必要とされるため。マスク氏は3月18日に投稿したツイートで、Twitter社はAIを使って「世論操作を検出&あぶり出す」と発言していた。
【訳】今後数ヶ月の間に、私たちはAIを使って、このプラットフォーム(Twitter)での世論操作を検出&あぶり出す予定です。
心理作戦ネコが何を引きずり込むか、見てみよう(**)…
(**)“ネコが家の中に引きずり込んだようなもの(=like something the cat dragged in)”は、「どぶねずみのような汚らしいもの」を意味する英語の表現。つまり、マスク氏のツイートは、「Twitter上で展開されている心理作戦や世論操作といった汚らしいもがどんなものか、あぶり出されるのを見てみよう」という意味。
Business Insiderに匿名で情報を提供した人物らは、Twitter社のAIプロジェクトは初期段階にあると判断したと報じられているが、これだけの量のGPUを購入したことは、マスク氏がこのプロジェクトに「コミット」していることを示している。情報源の1人は、このプロジェクトは大規模な言語モデルを使って作業していると述べている。ただし、この情報源の人物は、TwitterにおけるジェネレーティブAI(***)の明確な役割は不明であるとも語っている。
(***)ジェネレーティブAIとは、「コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法」。(出典)
さらに、Twitterは最近、AI分野で豊富な経歴を持つ新たな人材を獲得している。3月には、グーグルの親会社であるアルファベットのAI研究を行っている子会社DeepMindで働いていたエンジニアのイゴール・ブシュキン(Igor Babuschkin)氏とマヌエル・クロイス(Manuel Kroiss)氏が、マスク氏のチームに加わっている。
マスク氏は、2017年にも、全米知事会のイベントで、AI研究は「手遅れになる前に」規制する必要があると、規制当局に警鐘を鳴らしていた。
一方、マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏は、OpenAIのGPT-4よりも高性能なAIチャットボットを開発することを中止するよう求める声をはねつけたと、ロイター通信が4月4日に報じている。
ゲイツ氏は、3月21日に自身のブログサイトThe Blog of Bill Gatesに掲載した「AI時代は始まった(The Age of AI has begun)」と題する論説記事で、テクノロジー分野における今後のパラダイムシフトはAIであるとその概要を説明している。
BonaFidrをフォロー