FRBパウウェル議長が量的緩和を否定したことは茶番:「連銀は嘘つきの集団」とピーター・シフ氏
昨日、アメリカの連邦準備制度理事会(Fed)のジェローム・パウウェル議長が、新たな量的緩和(QE)をまもなく実施すると発表した。しかし、パウウェル議長は、頑なにそれは量的緩和ではないと主張した。
「これは量的緩和(QE)ではない。決して、QEではない。(”This is not QE. In no sense is this QE.”)」
パウウェル議長によると、連銀が行おうとしているのはバランスシートの拡大である。パウウェル議長は、そのプロセスの詳細について、数日以内に説明すると語ったが、米国債の買い取りが含まれるという。
これはまさに量的緩和(QE)のように聞こえると、ピーター・シフ氏は自身のポッドキャストで語った。シフ氏は、投資アドバイザリーサービスを提供するEuro Pacific Capitalのチーフ・グローバル・ストラテジスト。
正式に否定されるまで何も信じるな、という古い格言がある。今日、ジェローム・パウウェル議長はその声明と質疑応答の中で、連銀は量的緩和(QE)を行わないと語った・・・しかしあらゆる意味においてそれは量的緩和だ。というのも、それは紛れもなく量的緩和だからだ。また別の古い格言がある。「アヒルのように歩き、アヒルのように見え、アヒルのように鳴くものがあれば、それはアヒルである」。まさに、これは量的緩和のように見えるし、量的緩和の匂いがするし、量的緩和のように鳴くし、量的緩和のように歩く。つまり、これは量的緩和だ。
連銀によるこの動きは、翌日返済のレポ取引市場で、最近、流動資金が枯渇しかかるという騒動が起きていたことへの対応となっている。連銀は、数週間前からレポ取引市場への介入を始めており、先週、金融システムへキャッシュを追加投入するため、分担金の上限を上げていた。
昨日行われた記者会見で、パウウェル議長は次のように語っている:
我々が3月の声明発表でバランスシートの標準化を示唆し、いつかの時点で我々は引当金を適切なレベルに維持するために保有証券を高めることを始めると語っていた。それが今である。
これに対して、シフ氏は次のコメントを行なっている:
こんなに早く?3月に、彼らは『いつかの時点』と言っていた。当時、『いつかの時点』が『今』を意味すると考えていた人などいただろうか?
3月の時点で、連銀はわずかに量的引き締めを緩めていた状況だった。数ヶ月前まで連銀のバランスシートは自動運転されているかのように縮小を続いていた。昨日、パウウェル議長は、次に行われるバランスシートの拡大は、3回行われた量的緩和策の時のような「積極的な」バランスシートの拡大とは異なると語った。これは「より有機的なプロセス」であり、金融危機が起きる以前に連銀が行なっていたオペレーションに似ているという。
これに対してシフ氏は次のように語っている:
ということは、別の言い方をすると、これは積極的なバランスシートの拡大ではないため、これは量的緩和ではないと。しかし直近の3週間だけは例外で、バランスシートは1760億ドル拡大している。これが積極的ではないとどうして言えるのか?パウウェル議長は、これが金融危機よりも前に連銀が行なっていたことに似ていると、どうして言えるのか?
(Source: Fed)
2008年に金融危機が起きる前、連銀のバランスシートは8000億ドル程度だった。アメリカの中央銀行が、この8000億ドル近くまでバランスシートを積み上げるのに100年近くかかっている。しかし、連銀はたったの3週間で1760億ドルを積み増ししている。
シフ氏の批判は止まらない:
実際、過去3週間の数字をベースに見ると、連銀は現在、それぞれの(量的緩和)プログラムを実施していた時よりも急速にバランスシートを拡大している。そのため、現在連銀が行なっていることが量的緩和ではないという唯一の理由は、ただ単に連銀がそれを量的緩和と呼ばないことに決めたというだけのことだ。
パウウェル議長は、バランスシートの拡大を行う理由は、「引当金のために十分な供給量」を維持するためであると語った。
これに対して、シフ氏は、
この発言が示す本当の意味は、「我々は金利を低く維持したい」ということだ。それこそが、彼らがやろうとしていることだ。彼らは、金利を人為的に低く抑えるために、十分な引当金を必要としている。それがまさしく、量的緩和の本質だ。それこそが金融政策の目標だった。人為的に金利を低く抑え込むこと、もし連銀が介入せず、量的緩和を行なっていなければ、到達していたであろう金利レベルよりも低く抑えることだ。
それでは、なぜ連銀は金利を低く抑えたいのか?それは、資金の借入を活発化させ、資産価格を高騰させるためだ。
連銀は、株価を、そして不動産価格を上昇させたかった。それでは、なぜ今になって、連銀はまた同じことを繰り返そうとしているのか?しかもそれを量的緩和とは呼ばずに?
彼らは、連銀が介入しなければ今より高くなっていたであろう金利を下げるために、人為的に操作しようとしている。その目的は、彼らが保有する全ての米国債の返済コストを一定に保ち、資産価格、株価、不動産価格を買い支えするためだ。彼らは、量的緩和を行なっていた時と全く同じ理由で、基本的には彼らが量的緩和として行なっていたことと全く同じことを実行している。唯一の違いは、彼らはそれを量的緩和とは呼ばないということだけだ。そして彼らがそれを量的緩和と呼ばない理由は、彼らが再び経済を救済しなければいけない状況にあるということを認めたくないからだ。量的緩和の成功は、それが一時的であるという前提の上に成り立っているためだ。それは、連銀が進路を反転することができるという前提に成り立っていた。
しかし現在、量的緩和は一時的なものというのは現実ではなくなっている。量的緩和は一時的なオペレーションではなくなっている。シフ氏が以前指摘しているように、この連銀による量的緩和スキームは次は機能しない:
連銀が反転させることができないのに、なぜこの金融政策が成功だったと彼らは主張することができるだろうか?為替市場におけるドルの反騰、ゴールドの下落は全て、市場が連銀のことを信用しているという前提に成り立っていた。連銀は、嘘つきの集まりだ。
パウウェル議長による声明の原文はここで閲覧することができる。
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