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WeWorkが抱える33億ドル分の商業用不動産担保証券(CMBS)の内訳分析

WeWork

Trepp社のマナス・クランシー氏とキャサリン・リュー氏が、『WeWorkが抱える33億ドルの商業用不動産担保証券(CMBS)の内訳分析』を発表している

 

これまでにも、すでにWeWorkの企業バリュエーションが暴落していることや、IPOの申請を正式に取り消す発表を行ったこと、同社の与信格付けがBマイナスに格下げになったことなどを報じてきた。その原因となったのは、同社の社債価格が暴落しているためであり、そのためその社債に大量の空売りが仕掛けられている。最近では、WeWorkジャパンのトップが退社したこと、社員の2000名規模の大量解雇が早ければ今月から始まることなどを報じてきた。

 

さらに、WeWorkの失敗により、SoftBankのビジョンファンド2が閉鎖される可能性が高まっていることや、同社に出資しているゴールドマンサックスも多額の損失を計上していることを報じてきた。

 

しかしWeWork崩壊がもたらす余波は、出資者であるSoftBankやゴールドマンサックスだけにとどまらない。もしWeWorkが破産申請する状況になった場合、同社が借りている不動産の家主やテナント企業が被る被害は甚大だ。

 

Trepp社の両氏は、それがどれほどの規模になるのか、商業用不動産担保証券(CMBS)の内訳分析を行っている。

 

WeWorkが関わっている50件の不動産契約に付随して、33億ドル以上の商業用不動産担保証券(CMBS)が発行されている。その裏付けとなっている36件のオフィス施設に関して、そこに入居しているテナント企業の中で、WeWorkはトップ5位の位置にある。これらオフィスの大部分のリース契約は2024年〜2025年に期限を迎える。

 

全米の州別にこれらオフィス施設の分布状況を見てみると、WeWorkが関わる商業用不動産担保証券(CMBS)が最も集中しているのがニューヨーク州となっており、その金額は29件の支払手形を合わせて15億ドルに上る。次にカリフォルニア州であり14件の支払手形を合わせて8億330万ドル、そしてマサチューセッツ州の3件の支払手形を合わせた2億3000万ドルと、これら各州にWeWorkの融資案件が集中している。

 

全米の都市・州別WeWorkが関わるCMBSエクスポージャー

 

 

 

WeWorkは、最近もサンフランシスコの『600カリフォルニア通り』にあるオフィス購入用に、3億3000万ドルの資金を調達するため商業用不動産担保証券(CMBS)を活用していた。この物件は、同社がサンフランシスコ市で購入する最初の物件である。2億4000万ドル分の融資が単一資産契約により証券化されている。同契約は8月末に成立した。この場合は、WeWorkがもたらすエクスポージャーは2段階、つまり物件の所有者とその借り主で発生していることになる。

 

WeWorkが裏付けているCMBSローンのトップ5

 

 

WeWorkが裏付けている商業用不動産担保証券(CMBS)ローンの約78%が、2016年以降に発行されている。そのため、同社は今でも全てのローンに対して資金返済が行われている状況である。与信(クレジット)の観点から見てみると、同社のローンは、55.89%の加重平均ローン資産価値(LTV:loan-to-value)であり、加重平均元利返済金(DSCR:debt service coverage)は1.92倍である。すでに多くの情報が明らかとなっており、WeWorkをテナントとして物件を貸し出す投資家たちが不安になっているため、新規に発行するローンの価格にそれが反映されるようになっている。この極度な不安が緩和されるにはしばらく時間がかかる見込みである。

 

 

WeWorkが関わるCMBSエクスポージャー

 

 

先月、Trepp社はDebtwireのポッドキャストにも出演していた。その時のテーマが、「資産担保証券(ABS)に注意:WeWorkは招かれざるテナント」であった。

 

 

この中でTreppは、WeWorkが商業用不動産担保証券(CMBS)市場に占めるエクスポージャーを増大させており、人々を不安に陥れていると指摘していた。さらに、WeWorkが商業用不動産担保証券(CMBS)の裏付けとして抱えたローンが、全CMBS市場の1%を占めるまで近づいており、オフィス物件ローンの約4%を占めている。WeWorkがもたらしているエクスポージャーは看過できない規模になっている。

 

つまり、WeWorkが抱える問題は、単にIPOの申請を撤回したことにとどまらない。同社の存続に関する不安が、同社を取り巻くより大規模な市場にまで及んでいる。ボストン連銀の総裁が、WeWorkのビジネスが米経済に対するシステミック・リスクを孕んでいると警鐘を鳴らす理由はここにある。

 

最悪のシナリオは、WeWorkが残る運転資金を使い尽くしてしまい、契約済みのリース返済が全く行えなくなることだ。もしWeWorkが家主に対する家賃を支払えなくなり、しかしオフィスに入居するテナント企業は物理的にオフィスを使用し続け、また家賃をWeWorkに払い続ける場合、家主と仲介業者WeWorkとの間でどういった交渉が行われるのだろうか。

 

 

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