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AIより優秀?:FBIのインタビュー手法を使って投資先を選定している資産運用会社が、年率10%以上のリターンを達成

Rhett Kessler

オーストラリアのヘッジファンド会社のシニア・ファンド・マネジャーであるレット・ケスラー氏は、テロリスト、大物犯罪者、サイコパスと対峙するプロのFBI捜査官たちから対人交渉術を学んだ。

ケスラー氏は、ペンガナ・オーストラリア株式ファンドの資産7億2700万ドルを運用している。同氏は、FBIが犯罪捜査を行う中で容疑者をわざと困らせるようなインタビュー手法について、それを企業やその経営層たちを評価するために行う投資分析にも適用できるとブルームバーグとのインタビューで語った。このFBIが活用しているインタビュー手法は、犯罪者たちが嘘をつき、彼らが自身の犯罪行為を誇張したり逆に責任追求を逃れようとしたりする行為を暴くために使われている。

ケスラー氏のヘッジファンド会社は、まさにFBIのように運営されている。同社は、ターゲット(通常、株式公開されてきる企業)を常に調査している。FBIが行うように、「私たちは各社の経営者チームに関する人物調査書を作成している」とケスラー氏は語っている。

そしてケスラー氏は、次のようにFBIのインタビュー手法を応用している。まず、各社を深く調査する前に、その会社の経営者たちが信頼に足る人たちか、そして経営能力を備えた人物たちであるかを計測しようとする。こうした投資アプローチにより、ケスラー氏は実際に素晴らしい投資リターンを達成している。彼のヘッジファンドが創設された2008年以降、年率平均で2桁の投資リターンを達成し続けている。

しかし最も特筆すべきなのは、昨今、資産運用界隈で、複雑なアルゴリズムや数量解析ツールの開発に数百万ドルもの資金を注ぎ込み、それらを用いて資産運用を行うファンドに多額の投資資金が流れ込んでいる中、ケスラー氏のインタビュー手法が着実なリターンを達成しているということだ。ケスラー氏は、単純に人(経営者)の話を聞くという方法で優位性を見出した。しかも、それは複雑なアルゴリズムや数量解析ツールが必要とするような多額の投資を必要としない。

ペンガナ・オーストラリア株式ファンドのウェブサイト上に掲載されている最新の報告書によると、同ファンドは、2008年7月以来、手数料を引いた純利益として年間平均10.4%のリターンを出し続けており、オーストラリア全普通株指数による6.7%という値上がり率を上回っている。ケスラー氏は、近年、パッシブ投資や数量的投資戦略に資金が急激に流入していることは、「群衆の規模がより大きくなるため、個別銘柄を選んで投資する人にとってはより良い環境になっている」と語っている。(太字強調は訳者)

ケスラー氏は、何億ドルという巨額の資産を運用しているため、企業の経営者たちに直接インタビューできるという立場にあることも彼の優位性となっている。

ケスラー氏が資金を投資している企業の多くは、小規模企業であり、一般的には「退屈な」事業を行なっている会社である。

ケスラー氏のファンドが多額の株式を保有している企業の上位には、カジノやクラブにゲーム機を販売しているAristocrat Leisure Ltd.や、人の血漿から医薬製品や診断薬を製造しているCSL Ltd.などがある。Aristocrat社は今年これまでに株価が45%上昇しており、CSL社は35%上昇している。

以下はケスラー氏のファンドが株式を保有している上位10社(アルファベット順):

Aristocrat Leisure
Credit Corp
CSL
FlexiGroup
Medibank Private
Smartgroup
Telstra
Viva Energy Group
Viva Energy REIT
Westpac

現在、ケスラー氏のメインのファンドは、運用資産の15%を現金として保有している。オーストラリア経済に関するデータが悪化しており、また株価も高い状態にあるためだ。

ケスラー氏が使っているインタビュー手法の一つは、すでに答えを知っていることについて質問を行うというものがある。こうすることで、ケスラー氏はそのCEOが正直であるか、それとも誇張する傾向にあるか判断できるという。こうした個人の性格に起因する特徴は、その人物がどのように会社を運営するかに多大なインパクトをもたらすということにケスラー氏は気がついたという:

「私たちが10件の質問する場合、そのうちの3〜4件の質問について私たちはすでに答えを知っています。そのうちのいくつかは、経営者を良く見せるような質問です。またそのうちの他のいくつかは、経営者を悪く見せるような質問です。そして私たちはこれら質問の答えを知っています」とケスラー氏は語った。

またケスラー氏が使う別の手法には、彼らが「ABCDクエスチョン」と呼ぶものがある:

彼が「ABCDクエスチョン」と呼ぶ質問を行う時もある。この質問において、ケスラー氏はわざと重要なポイントを見逃し、状況を理解するために欠かすことができない情報をスルーする。しかもその状況というのが、経営幹部を悪く見せるようなものである。そしてケスラー氏は、インタビュー相手がそこのことを指摘するかどうかを見ている。

「だから私たちはこのことを『ABCDクエスチョン』と呼んでいます。経営者たちは都合が悪い情報を自ら進んで指摘するだろうか、それともしないだろうか?」とケスラー氏は語る。

この質問は、経営幹部たちが、自分たちや自分たちの会社にとって都合が悪い情報であっても迷わず自ら進んで告白するかを測るために使われている。

ケスラー氏がこの手法を用いてSoftBankの孫社長をインタビューした場合、孫社長は正直な経営者という結果になるだろうか、それとも都合の悪い情報は隠そうとする経営者という結果になるだろうか?

ケスラー氏へのインタビュー動画はここで視聴できる:

Photo via Bloomberg

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