WeWorkの最大の弱点は中国市場か?:上海に展開するシェア・オフィスの36%が空席
WeWorkのビジネス・モデルそのものが崩壊しかかっている中、その崩壊を加速させる震源地は中国であると、フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が新たに報じた。
WeWorkの中国にある子会社は、2018年時点で50億ドルの企業価値があると評されていた。しかしこの先数四半期でその価値がゼロになる可能性がある。
FT紙に情報提供した人物によると、中国国内におけるWeWorkのレンタル・オフィスは深刻な業績不振であり、オフィスの占有率が絶望的に低いという:
上海の複数箇所にあるWeWorkのレンタル・オフィスは、4万3600件の座席を提供しているが、10月時点でその空席率が35.7%である。深センでは、8000件の座席を提供しており、そのうちの65.3%が空席である。そして香港にある8900件の座席数のうち22.1%が空席である。WeWorkは中国内陸部にも展開しており、西安などは複数箇所でシェア・オフィスを提供している。そこでは78.5%の空席率に苦しんでいる。
情報源の人物は、この先、数四半期で中国国内における事業を段階的に縮小していく可能性があると語った。
先週、当サイトでもWeWorkは最大4000人の社員を解雇する計画であることを報じている。
FT紙が確認したデータでは、WeWork全体のオフィス占有率も、年末に向かって急速に悪化していることを示している。
SoftBankによるその身銭を切った救済策は、基本的にWeWorkのオフィス占有率を90%以上に高めようとする試みである。しかしマクロ経済の向い風が世界中で強まる中、WeWorkが次に起きる世界不況を乗り切る体力は残されていないだろう。
WeWorkが新興国市場であまりにも過剰に事業展開してきたことが、現在、同社のビジネスが苦境に立たされている一つの原因となっている。WeWorkの経営者たちは、明らかにビジネス周期には気を止めず、世界同時に起きている景気減速の影響をもろに受けている市場でオフィスを拡大しすぎた。こうした景気減速の影響の直撃を受けている地域は中国だけでなく、その他のアジア諸国や南アメリカも影響を受けている。
いくつかの中国の不動産グループ会社は、FT紙の取材に対して、WeWorkは中国国内で120件のビルに入居し事業展開していると語っている。
「(中国では)投機的なオフィス開発が多く行われてきており、香港、シンガポール、東京などにくらべて空室率が高い」と、不動産会社Colliersのアジア地域シェア・オフィス事業の責任者であるジョナサン・ライト氏は語った。
世界展開している商業不動産サービス企業のクシュマン&ウェイクフィールドによると、WeWorkがここ数年間に参入した中国の都市の多くで、現在、オフィスの空室率が急激に悪化しているという:
「中国大陸では最近、全体のオフィス賃貸需要が軟化してきている・・・貿易上の緊張関係が続き、経済成長が減速しているという理由で、ほとんどのテナントが一般的なコスト削減戦略を採るようになっている」と、クシュマン&ウェイクフィールドの調査員であるキャサリン・チェン氏は語った。
つまり、WeWorkにおける問題(の一つ)は、各国の中央銀行が量的緩和による何兆ドルという大量の資金を世界経済に投入した2016年頃、中国などの新興市場に拡大しすぎたということだ。中央銀行が世界中で爆発的な信用創造を行なった結果、世界経済では強力な上昇圧力が生まれ、WeWorkのような企業は2017年〜2018年にかけては天才的な事業展開をしている企業に見えていた。しかしそのような人工的に作り出されていた経済上昇サイクルが終わり、2018年後半から世界同時で経済は悪化局面に突入した。そのとき、新興市場は大打撃を受け、一夜にしてWeWorkが作り上げた事業は不採算資産へと転落した。
WeWorkは企業再編の段階に突入した。これが意味することは、もし同社が次に起きる世界不況を生き延びたければ、中国および残る新興市場における子会社を全て清算しなければいけないということだ。もしくは破産あるのみだ。
先週、SoftBankが100億ドル近い資金を投入してWeWorkを救済することが決まったが、その資金ですら、何のコスト削減もしなければ10ヶ月で枯渇するだろうと、コンサルティング企業AAreteのCEO、ローレン・トリンブル氏は指摘する。
トリンブル氏は、「彼らが実行しなければいけないことの一つは、既存のビジネスからの売上を増やすことだ」と言い、現在、WeWorkは1ドルの売上あたり1.09ドルを支出していると分析している。
Photo via WeWork
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