WeWorkが第3四半期の決算を発表:12億5000万ドルの純損失を計上
シェア・オフィス企業のWeWorkは、第3四半期、12億5000万ドルの純損失を計上した。これは同社が売り上げ成長率をはるかに凌ぐスピードで支出を続けていたことを示している。また、12億5000万ドルという損失額は、同社が2018年の1年間で計上した損失額の合計とそれほど違わない金額である。前年同期の損失額は4億9700万ドルだった。
WeWorkは今週水曜、同社の債権者に対して行なったプレゼンテーション資料のなかで第3四半期決算の結果を報告した。同社の「公的」債務を保有する債権者らに対して、WeWorkは財務内容を報告することが義務付けられている。最初にこのプレゼンテーション資料をフィナンシャル・タイムズ(FT)紙とブルームバーグ紙が入手し報じた。9月にWeWorkの株式公開(IPO)計画が白紙撤回され、それがきっかけで銀行からの追加融資も得られなくなった際、同社の資金が11月半ばまでに急速に枯渇しかかっていると報じられた理由がこれで明らかとなった。
投資家たちにWeWorkが年率2倍という驚異的なスピードでマーケット・シェアを拡大しているという印象を与えるために、同社は今年第3四半期に資金を大量に注ぎ込み、世界各地に100件近いシェア・オフィスを新規開業した。これにより、既存の物件と合わせて合計625件のシェア・オフィスを同社は運営している。これにより、同社の9月30日締め第3四半期の純利益は、前年同期比から94%増加し、9億3400万ドルを計上した。しかし当然、事業拡大に伴いコストも急増した。第3四半期に12億5000万ドルの純損失を計上しているということは、当期において、1ドルの売り上げを出すために2ドル以上を損失した計算になる。
株式公開(IPO)を行う前に、IPOにより調達する予定であった資金を全て使ってしまうというのは前代未聞である。WeWorkは、第3四半期に11万5000席のシェア・オフィス・スペースを追加し、同期末までに合計71万9000席のシェア・スペースを保有していると発表している。しかし、これほど事業規模を急拡大しているにもかかわらず「規模の経済」が発揮されず損失が拡大している原因は、シェア・スペースの稼働率が、今年6月末には82%だったのが、9月末には79%へ下落しているためである。需要を上回る事業の急拡大により、シェア・スペースの稼働率が下がってしまった。
さらに、同社は過去2年間に買収した事業の資産価値の減損として1億9700万ドルの評価損を計上している。また頓挫したIPOの準備コスト、その他の買収や事業再建コストとして合計8300万ドルの損失を計上している。
コストを無視した事業の拡大計画は、アダム・ニューマン元CEOの経営判断だった。9月に同社のIPO計画が白紙撤回されると、同社最大の投資家であるSoftBankグループはアダム・ニューマン氏が取締役会から退任する見返りとして、10月に15億ドルの資金を同社に投入し、11月半ばまでに資金が枯渇すると報じられていたWeWorkを実質上の倒産から救済した。そしてSoftBankグループがWeWorkの約80%の所有権を取得し、携帯電話会社Sprintの米国テレコム事業責任者であったマルセロ・クラウアー氏をWeWorkのエグゼクティブ・チェアマンに就任させている。SoftBankグループは、追加で50億ドルの融資をWeWorkに対して行い、さらにこの先数週間以内に、ニューマン氏を含む同社社員や投資家から、WeWorkの株式30億ドル分を買い取ることに合意している。
クラウアー氏は、エグゼクティブ・チェアマンに就任して以来、コスト削減政策を進めており、同社の1万4000名の社員のうち約4000名を解雇する手続きを進めている。このコスト削減策について説明を受けた複数の人物によると、米国内での大規模な人員削減は、来週始まると見込まれている。IPO直前のときのような「見込み調達資金」を無尽蔵に出費していた頃とは異なり、限られた運転資金で事業をながらえながらコスト削減を進めている同社が、今後どうやって売り上げを拡大させようとしているのかは不明である。来期の決算発表でも、WeWorkの売り上げおよび純利益はともに大幅減少となるだろう。
WeWorkは、同社が近年に買収した企業を売却しようと進めており、また新規に不動産物件のリース契約を結ぶペースも急激に減速している。
WeWorkは、新CEOを探しており、携帯通信会社T-MobileのCEO、ジョン・レジェール氏が候補として名前が上がっている。
しかしIPOを白紙撤回した後に報じられる数々のWeWorkに関する決算データや事業計画のニュースを受けても、同社の社債を保有している投資家たちはWeWorkの将来に悲観的であり、社債はますます売り込まれ価格を下げている。
WeWorkの2025年満期社債価格
(Source: Borse Berlin)
Photo via WeWork: Brooklinen’s WeWork headquarters in New York City.
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