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チャイナの通信事業者は米国で20年間にわたってスパイ活動を行なっている|米連邦議会が新たに公開した調査報告書は、米政府による監視がほとんど行われていないことが原因と結論付ける

チャイナの通信事業者は米国で20年間にわたってスパイ活動を行なっている|米連邦議会が新たに公開した調査報告書は、米政府による監視がほとんど行われていないことが原因と結論付ける

行政監視及び調査小委員会の議長・ロブ・ポートマン上院議員(Photo via Flickr)

 

チャイナ国営の通信事業者は、中共政府の代理人としてスパイ活動を行っていると、米議会が新たな調査報告書を発表した(PDFファイル)。こうしたスパイ活動を可能にしているのは、アメリカ国内でチャイナ企業に対する規制がほとんど行われていないためと結論づけている。

 

米上院議会の『行政監視及び調査小委員会』は、6月9日(火曜)、この調査報告書を公表した。その中で、複数のチャイナの通信事業者が米国内で運営されているが、アメリカの政府機関から「ほとんど監視されていない」と記されている。これらチャイナの通信事業者は、アメリカの通信ネットワークにほぼ完全に侵入することが許可されており、これら通信ネットワークにアクセスすることで、数百万人のアメリカ人に関するデータを収集している。これらアメリカ人の中には、米軍関係者や重要な政府の役職に就いている人物たちが含まれている

 

2019年になってようやく、連邦政府はこれらチャイナの通信事業者について詳細な調査を開始した。対象となっている企業には、China Telecom Americas、China Unicom Americas、ComNetなどが含まれている。これらの企業はすべてチャイナ共産党が保有しており、2000年代初頭から米政府によって刑事免責されるという特別な保護を受けて運営されている

 

米上院議会が1年間かけて行ったこの調査は、連邦通信委員会(FCC)がこれら企業に対して適切な監視を怠っているために、多くのアメリカ人に関するデータがこれら企業によって収集されることを許していると結論づけている。これら通信事業者は中共政府がその完全な支配権を握っていることを考えると、収集された通信データは米国にとって不利となる悪意ある目的のために利用されている可能性が高いと、同報告書は警告している。

 

武漢ウイルスのパンデミックが発生したことで、チャイナによる米国内でのスパイ活動に対して改めて注目が集まっている。通信業界に加えて、北京政府はアメリカの科学界、学術機関、そして政府機関からも情報を窃盗している。今回発表された上院議会による調査報告書は、こうしたチャイナによるスパイ活動について明らかにし、それを阻止することを目的にした法制度を施行しようとする連邦議会の大きな活動の一環である。

 

行政監視及び調査小委員会の議長であるロブ・ポートマン上院議員(オハイオ州選出・共和党)は、声明の中で次のように記している

 

この超党派の調査報告書は、複数の連邦機関が、米国の通信ネットワークの完全性を担保するため、そしてチャイナからの国家安全保障上の脅威に対抗するために、ほとんど何も行っていないことを証明している。

 

チャイナ共産党は、その国有企業を利用して、アメリカに対してサイバー・スパイ活動や経済スパイ活動をいっそう進めている。そして彼らは、我々の通信ネットワークを20年近くも不当に利用している一方で、連邦政府は歴史的にそれを阻止するための活動をほとんど講じてこなかった

 

トランプ政権は、こうしたチャイナの通信事業者を抑制する対策を講じ始めたばかりである。いわゆるビッグ・スリーと呼ばれるChina Telecom Americas、China Unicom Americas、ComNetは、依然として米政府から最低限の監視しか受けずに運営を継続している。その一方で、通信業界の監督官庁である連邦通信委員会(FCC)は、最近、China Mobile USAによる米国内で国際通信サービスを提供する認可申請を却下している。国家安全保障上の懸念をその理由として挙げている。また、最近トランプ大統領が署名した大統領命令は、外国が所有している通信事業者を監視強化の対象にすることを命じている。上院議会の行政監視及び調査小委員会は、このトランプ政権による動きを称賛しているが、それだけでは十分でないとも指摘している。同小委員会のメンバーである上院議員らは、China Mobile USAについて明らかとなっている懸念事項は、アメリカで事業運営を続けているチャイナの他の通信事業者にもあてはまると語っている。

 

上院による調査によりさらに判明しているのは、こうしたチャイナの企業がいったん連邦通信委員会(FCC)の認可を獲得すると、FCCは徹底した監視活動を行わなくなってしまうということである。チャイナの通信事業者は、基本的に政府の目を気にすることなく、自由にアメリカの通信ネットワークに干渉することができるということを意味している。上院議会が入手した証拠によると、China Telecom Americasは少なくとも2010年から米国の通信網にハッキングを行っているということが示されている。China Telecomや他のチャイナの通信事業者は、AT&TやVerizonといった米国を拠点とする大手通信事業者と契約を結んでおり、こうしたハッキングへの懸念はますます差し迫ったものになっている。

 

例えば2014年、チャイナのハッカーたちがアメリカの人事局(OPM)が管理するデータベースに侵入する事件が発生している。このデータベースには、アメリカ政府で働く「セキュリティー・クリアランス(機密取扱者の資格)」を持つ約2200万人のアメリカ人に関する記録が含まれていた。これと同じ年、チャイナのハッカーたちは米国郵政公社(USPS)のネットワークにも侵入し、80万人以上の職員の個人情報を暴露している。

 

今回公表された上院議会の調査報告書は、チャイナにとって通信サービスは「素晴らしい標的(ripe target)」であると記している。米国内で事業運営を行っているビッグ・スリーと呼ばれているチャイナの通信事業者であればどこでも、「ハイジャック攻撃(hijacking attacks)」のような攻撃を実行することができるという。この攻撃を行うことで、これら米国内の通信網から機密データを抜き取り、チャイナに転送することができる。

 

同調査報告書は次のように記している:

 

チャイナ政府は、ハイジャック攻撃を実施するために、国有の通信事業者をますます活用している。チャイナの通信事業者は、チャイナ国外に独立した伝送設備や通信網をいまだ設置していない。

 

ハッキング攻撃の多くは洗練されており、ミスによって発生したように見えるよう工作されているという。

 

例えば2011年、China Telecomは、フェースブッックのアクセス(トラフィック)を、AT&Tやその他の米国の通信業者からチャイナに迂回させていたと報じられている。これは、「China Telecomが約9時間にわたって誤ったルートを公表した」結果起きたと考えられている。近年発生しているこれと似た性質の他の攻撃についても、元を辿るとChina Telecomに行き着いている。

 

数々のハッキング事件が起き、米議会の中でも懸念が高まっていたにもかかわらず、2019年1月まで米国政府がチャイナの通信事業者への調査を開始することはなかった

 

連邦通信委員会(FCC)に加えて、「チーム・テレコム(Team Telecom)」として知られる特別な組織も監視を行うことになっている。「チーム・テレコム」は、国土安全保障省、司法省、そして国防総省の職員たちによって構成されている。「チーム・テレコム」は2020年4月まで「法定代理権(statutory authority)」がなく非公式な組織であったが、連邦通信委員会(FCC)はその監視能力をこの非公式組織にすでに大きく依存していた。チャイナによるハッキングの脅威がますます高まっていることを受けて、2020年4月、「チーム・テレコム」は正式な組織に格上げされている。

 

しかし今回発表された調査報告書は次のように記している:

 

10年近く疑惑があったにもかかわらず、チーム・テレコムは2019年1月までこの問題(チャイナの通信事業者によるスパイ行為)を調査しなかった。

 

そしてChina Telecom Americasが連邦通信委員会(FCC)から事業許認可を受けてから20年近くが経過した現在になってようやく、チーム・テレコムは「かなりの、そして受け入れがたい」国家安全保障上のリスクが発生しているため、FCCの事業許可証は取り消されるべきだと勧告している。

 

諜報収集活動を拡大するため、チャイナの「戦略計画」の一環として、国の支援を受けたハッカーたちは、米国の諜報員や政府職員に関する大量のデータが含まれている米国の通信ネットワークを標的にしていると報じられている。

 

上院議会による調査報告書は、こうしたチャイナによるハッキングの懸念を和らげるために米国が取ることができる手段をいくつか勧告しており、その一つがチャイナの通信事業者への事業許可証の取り消しとなっている。

 

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