グローバル・サプライチェーンに起きる大変革:中国へ進出しているドイツ企業の4分の1が生産施設を他国へ移動
在中国ドイツ商工会議所が在中国KPMGと協力し、『ビジネス・コンフィデンス調査2019/2020(Business Confidence Survey 2019/20)』を発表した。このアンケート調査結果によると、中国国内で活動するドイツ企業の約4分の1が、生産施設を他国に移転する準備をしているという結果となった。
このアンケート調査は、7月末から9月中ばにかけて、在中国ドイツ商工会議所の会員企業2300社に対して実施された。そのうち526社がアンケート調査に回答した。調査に回答した企業のうち、23%の企業が自社工場を中国国内から移転するもしくは移転を検討していると回答した。
中国国内から撤退を進めているか、積極的にその計画を立てているドイツ企業のうち、中国からの撤退を判断する理由として、71%が中国国内で高まる人件費、33%が好ましくない政策環境、25%が米中貿易戦争、そして22%が中国市場への参入障壁を挙げている。
(Source: The Business Confidence Survey 2019/20)
生産施設を移転すると回答した企業のうち、52%が東南アジア、25%がインド、19%が中央ヨーロッパ/東ヨーロッパ、17%が西ヨーロッパを移転先に選んでいる。そしてわずかに5%の企業は、アメリカ合衆国に生産拠点を移転させると回答している。
この調査に回答した複数の企業が、米中貿易摩擦が有害で暗い経済見通しをもたらし、それが世界経済の同時減速を引き起こしていると回答している。
ドイツ企業の約83%が、米中貿易戦争が直接的、もしくは間接的に彼らの事業に影響を与えていると回答している。この調査報告書は、「景気予想はここ何年もの間で最低レベルに低下しており、アンケート調査に回答したドイツ企業のたった27%しか、彼らの2019年の事業目標を達成できないだろうと回答している」と記している。
在中国ドイツ商工会議所の事務局長であるイェンス・ヒルデブラント氏は、次のように語っている:
未解決の米中貿易摩擦とそれと関係する中国および世界経済の減速が原因となり、2020年は不確実性という言葉に集約される年になるだろう。
ドイツ企業はまた、中国における市場参入障壁と規制のハードルにより、彼らの中国国内でのビジネス成長が阻害されたと回答している。調査に回答した66%のドイツ企業は、彼らが中国市場へ参入しようとした際、直接的、もしくは間接的に制約を受けたと回答している。
この調査報告書の重要な発見は、中国における経済環境が2020年になっても引き続き停滞するということである。中国国内における複雑なサプライチェーンが混乱するということは、世界経済は2020年初頭になっても底を打たないということだ。株式市場はこのことを既に織り込み済みのようである。
翻って、中国に進出している日本企業に同様のアンケート調査を実施した場合、どのような回答が得られるのだろうか。経団連が発表している『当面の課題に関する考え方』を見ても、ドイツ企業との温度差は歴然としている。
BonaFidrをフォロー世界経済のけん引役として期待される、中国、インド、ASEANをはじめとするアジア諸国との緊密で互恵的な関係を更に強化・発展させていくことは、わが国の成長戦略としても極めて重要である。経団連としても、地域経済統合の推進、インフラ整備の促進をはじめ、各国の官民リーダーとの政策対話を通じて、協力関係の促進に取り組んでいく。(引用元:『当面の課題に関する考え方(2019年9月)』)