世界のテレビ広告売上が2009年レベルにまで急減:視聴者の間で「コード・カッティング」が広まっていることや景気減速リスクが高まっていることが背景
アメリカの広告会社Interpublic Group of Companiesの調査部門Magnaは、2019年における世界のテレビ広告売上が約4%下落し、2008〜2009年に起きた世界金融危機以来、最大の下げ幅を記録したという調査結果を発表した。ブルームバーグがこの調査結果を最初に報じた。
2019年に世界のテレビ広告売上が約4%も縮小した原因として、今年第4四半期に入っても世界経済の減速が継続していることや、広告主がテレビ広告への予算を削り、それをインターネット広告に配分しているためと分析している。
実際に最近テレビ視聴は減少傾向にあり、そのことがテレビ広告売上の下げ圧力となっている。Magnaは、今年1年間で、米国、欧州、中国、そしてオーストラリアでテレビ視聴が大幅に下落したと報告している:
「昨今、ほとんどの地域で、リアルタイム視聴は(前年比で)2桁台、もしくは1桁台の上位で減少傾向にある」とMagnaの世界市場調査部門のエグゼクティブVP、ビンセント・レタング氏は語った。
特にケーブル・テレビに関しては、「コード・カッティング」(*)と呼ばれるユーザ離れが顕著な傾向となっており、米国のみならず世界の消費者はネットフリックスやYouTubeなどのオンライン・ストリーミング・サービスへ切り替えている。Magnaはその報告書の中で、米国、オーストラリア、そして中国では、いわゆるリアルタイム視聴が過去数年間で10%減ったと記している。また、欧州では18歳〜49歳の間のリアルタイム視聴が今年だけで7〜8%も下落している(昨年は5%の下落だった)。
(*)コード・カッティング(Cord Cutting)とは、ケーブルテレビの契約を止めてインターネット経由の動画視聴を選択するという消費者の動向を示す言葉である。2010年以降、主に北米でのTV業界や広告、家電、IT業界などを中心としたマーケティング分野などで用いられるようになった。”Cord Cutting”の”Cord”とはケーブルTVの信号線であるケーブルを指す。(出典:ウィキペディア)
過去1年間で、世界における印刷広告の売上は19.6%下落し、従来型のテレビ広告売上は3.6%下落しているが、世界のデジタル広告売上が15%増と大幅に成長しているため、広告業界全体としては上昇している。
Magnaは、2020年における世界の広告支出は4.6%上昇するだろうと予測している。これは10年連続の成長である。ただし、2019年の年初来から達成している5.2%の上昇と比べると、来年はやや減速する見込み。
一方、米国内におけるテレビ広告売上は、この1年間で約3%減少し、420億ドルであった。緩やかな経済減速トレンドとも相まって、この減少傾向は2020年も続く可能性が高い。特にテレビ広告売上の押し下げ圧力となっている産業の一つは、自動車産業である。景気が冷え込むことで自動車産業の広告予算も抑制されることが見込まれるためである。
アメリカのテレビ広告売上は、2020年も減速傾向が続くと見込まれているが、大統領選挙活動がピークを迎える期間や、夏季オリンピック開催期間中は広告売上が押し上げられると予想されている。また、テクノロジー関連商品や娯楽サービスへの広告支出が、印刷広告およびテレビ広告の売上減少という「穴」を埋め合わせることになる可能性が高い。
しかしながら、世界全体における広告業界は、来年に向けて景気後退の脅威にさらされ減速しつつあり、印刷広告およびテレビ広告の売上はすでに大幅な下落が始まっている。この先数四半期にかけて世界経済が減速することで、世界の企業の利益率は引き続き圧迫されることになり、その結果、広告支出の減少につながることになる。
ブルームバーグの記事では特に日本市場については触れられていないが、日本のテレビ広告や印刷広告(新聞・雑誌)も世界の潮流に抗えず、来年にかけて大幅な売上高の減少が続くことが予想される。
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