ドローン業界のバブルが崩壊：スタートアップ企業が次々と消滅 -

空の産業革命と言われてきたドローン業界だが、ついにバブルが崩壊したとBloombergが報じた。商業用ドローンを開発してきたスタートアップ企業が消滅し、そこに投資してきたベンチャーキャピタルも資金を引き上げていると報じられている。

2012年以来、VCファームは数十億ドルもの資金をドローン開発のスタートアップ企業に投じてきた。ドローンは輸送業界やその他経済的インパクトが大きい活動に革命をもたらすと信じられてきた。そして何より、投資に対するリターンが大きい業界と思われてきた。しかし、「過熱していた熱気は現実を前に冷めてきている」とBloombergは報じている。

以下はVCファームがドローン企業に投じた資金額の推移グラフ。2019年のデータは1月〜6月までの半年間のデータ。2019年の投資資金額のうち、1億9000万ドルは医薬品等をドローンで配送するZiplineという1社に対して行われた投資。

（Source: Bloomberg）

ドローン業界のトップに位置していたスタートアップ企業のいくつかは、昨年、倒産している。2020年までに「空の産業革命」が起き好景気がくると期待し、VCからの投資資金を何億ドルと使い込んできた多くのスタートアップ企業が、資産を売却して会社を閉鎖することに追い込まれた。ドローン業界の成長は実現せず、数十社のドローン企業は黒字化することなく他社に合併されるなどして淘汰されている。

「娯楽用ドローンの人気が誇張された期間があり、ドローン業界には不合理な考えがはびこっていた。私たちはこの期間を過ぎ去る段階に来ており、人々は現実的になりつつある」と調査グループDrone Industry Insightsの創設者でCEOであるカイ・ワクウィッツ氏は語る。

その一例として、Bloombergは、フランスのドローン製造会社Parrot SAが7月に生産ラインの半分を停止したことを報じている。ドローン関係のソフトウェアを開発するスタートアップ企業Airware Inc.は、個人投資家たちから1億1800万ドルの投資資金を調達したが、昨年、140名の社員を解雇して会社を閉鎖した。GoProのドローンKarmaは、娯楽用ドローン分野で最も大きな失敗例の一つだ。GoProは、ドローン業界が「極めて競争の激しい」マーケットであるとし、2018年後半に数百人の社員を解雇しドローン事業から撤退している。

GoProのドローンKarma

ドローン業界では環境が目まぐるしく変化している一方、政府当局による規制の整備は遅々として進んでいない。こうした環境要因が、多くのスタートアップ企業が自社製品を市場に投入する際の障壁になっている。

さらにBloombergは次のように報じている：

未公開企業の情報をデータベース化しているCrunchbaseによると、少なくとも67社のスタートアップ企業がこれまで売却されている。

検査やデータ解析などのドローン関連サービス分野で業界トップであるPrecisionHawk Inc.は、2018年に5社のスタートアップ企業を買収したと発表している。

調査会社Teal Groupによると、2012年初頭から2019年6月までの間に、VCファームは26億ドルをドローン業界に投資している。

商業用ドローン業界が「熱狂のピーク」にある時期に生まれたスタートアップ企業は黒字化できず、追加資金を調達することもできなかったために資金が枯渇してしまい、昨年あたりからドローン業界の熱気は失われ始めた。

Crunchbaseがオンラインで発表した報告書によると、過去10年間で、少なくとも25社のドローン関連スタートアップ企業が閉鎖され、過去最大の合計1億8300万ドルの資金が溶けてしまった。

飛行物に関する連邦政府の規制は遅々としており業界のスピードについていけず、多くの企業にとってビジネス拡大する障壁となっている。