マージン・コールが発令:香港証券取引所でチャイナ・ファースト社の株価が数分間で78%の大暴落
先週水曜、香港証券取引所で取引されている、中国首控集団(チャイナ・ファースト・キャピタル・グループ、以下チャイナ・ファースト社)の株価が、数分間で78%の大暴落を記録したとブルームバーグが報じていた。投資持株会社であるチャイナ・ファースト社が一部保有している別の会社、成実外教育(バーセンド・エデュケーション、以下バーセンド社)の株価も、同日、一時80%も急落した(しかしこの日、バーセンド社の株価は最終的には33%の下落で取引を終えた)。両社の株価急落により、この日、香港の株式市場からは12億ドルの時価総額が消失した計算になる。
チャイナ・ファースト社の株価チャート
バーセンド社のIR担当ディレクター、チェン・ケユ氏は、同社の株価急落は、チャイナ・ファースト社に対して発令されたマージン・コールに影響を受けた可能性があるとブルームバーグに対して語っている。
一方、ブルームバーグは、これら2社の株価急落を受けて次のように報じている:
香港の上場企業に対する企業統治に対して、改めてスポットライトが浴びせられた。
異常な価格の変動が起きる場合、頻繁に引用される要因は、株主の中で、彼らのポジションに対して借入を行なっている大株主が、その保有株式を強制売却させられた(つまりマージン・コールが発令された:訳者注)というものだ。それは、企業が投資家もしくは事業分野を通して相互に関連している場合、ドミノ効果が発生する可能性がある。さらに、香港の情報開示ルールの下では、いつ保有株式が(融資の)担保にされているのか必ずしも明らかにされていない。(太字強調は訳者)
保有株式を融資の担保として抵当に入れていた複数の企業にマージン・コールが発令されたことが、先週水曜に起きたチャイナ・ファースト社とその関係先であるバーセンド社の株価暴落の原因の一つとなった可能性がある。
先々週は、MSCIがそのベンチマーク指標にアートゴー・ホールディングス(雅高控股有限公司)を加えるという計画を破棄したことがきっかけで、同社の株価が98%も暴落していた。しかも、同社の株価は年初来で3800%も高騰しており、この日暴落するまで世界で最も価格が上昇した株式であった。ブルームバーグは、近年、市場の値動きと連動する市場連動型ETFなどへ投資するパッシブ運用への人気が高まっていることにより、MSCIなどが、株式指標にどの株式を組み込むかを決定することがますます株式市場に影響力をもたらすようになってきていると指摘している。
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冒頭で紹介したチャイナ・ファースト社は、今週になっても株価の下落が止まらない。今週月曜、同社の株価はさらに23%下落した。下落の理由は、同社のウィルソン・シー会長が、自身が保有する同社株式の半数を売却したとブルームバーグが報じたためである。
先週土曜に公開された、取引所へ提出された報告書によると、チャイナ・ファースト社の株価が数分で78%も暴落した翌日の11月28日、Wealth Max Holdings Ltd.社が保有していたチャイナ・ファースト社の3億2657万株を売却していたことが明らかになっている。
Wealth Max社は、ウィルソン・シー会長が管理している会社であり、昨年12月時点で、チャイナ・ファースト社の株式の16.1%を保有していた。
まさに、ブルームバーグが指摘するように、「香港の上場企業に対する企業統治に対して、改めてスポットライトが浴びせられている」状況となっている。
ウィルソン・シー会長が、チャイナ・ファースト株を大量に売却した理由は、その保有株を担保に借り入れていた融資に対して、マージン・コールが発令されたためである可能性が高い。こうしたリスクの高い商習慣は、ドミノ効果を生じさせ、株価の連鎖暴落を引き起こしかねない。
ただでさえ中国経済は30年来の景気減速に見舞われており、さらに香港の民主化運動も相まって不安定性が増している。こうしたマージン・コールの発令によって生じるドミノ効果により、香港および中国の株式市場で株のパニック売りという負の連鎖に陥る危険性が高まっている。
香港ハンセン株価指数の推移
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