スノーデンの内部告発をスクープ報道したグレン・グリーンウォルド記者、ジョー・バイデンを批判する記事を編集者に検閲されたためThe Interceptを退社
もともと憲法が専門の弁護士として10年間勤務していたグレン・グリーンウォルド氏は、2005年10月から国家安全保障をテーマにブログを開始した。その後、サロンや英国のガーディアン紙にコラムを寄稿するようになった同氏を、一躍世界的に有名にしたのはエドワード・スノーデン事件である。
勤務先のハワイから香港に逃避していたスノーデンとグリーンウォルド氏らがホテルで密会し、アメリカの諜報機関が世界中の携帯電話を盗聴・盗撮しているという内部告発を聞く様子は、ドキュメンタリー映画『シチズンフォー|スノーデンの暴露』で公開されている。またこの事件を元にした映画『スノーデン』も制作されている。
その後、グリーンウォルド氏は2013年にオンライン・メディアのThe Interceptを共同設立し、そこで自ら執筆した記事を発信してきた。
しかし今週木曜、グリーンウォルド氏がジョー・バイデンについて批判的な記事を掲載しようとしたところ、民主党が幅をきかせるニューヨークを拠点にした同社の編集者たちが検閲を行い、その記事の掲載を拒否したという。グリーンウォルド氏が執筆する記事は彼に全ての編集権があると保証しているThe Interceptとの合意契約に、これは違反しているという。そのためグリーンウォルド氏はこの日、自らが立ち上げたThe Interceptを退社したと明かした。
以下はグリーンウォルド氏がこの日投稿したツイート:
"The final, precipitating cause is that The Intercept’s editors censored an article I wrote this week, refusing to publish it unless I remove all sections critical of Joe Biden, the candidate vehemently supported by all Intercept editors involved in this effort at suppression."
— Glenn Greenwald (@ggreenwald) October 29, 2020
【訳】私からThe Interceptへの辞表
全米の報道機関に蔓延しているのと同じ抑圧、検閲、そしてイデオロギーの均一性という波が、私が共同設立した報道発信地も飲み込んでしまい、私自身の記事を検閲するという結果になってしまった。
「最終的な原因は、The Interceptの編集者たちが、私が今週書いた記事を検閲したためだ。ジョー・バイデンについて批判的な箇所を全て削除しなければ、それを掲載しないと彼らは拒否した。この弾圧行為に加担している全てのInterceptの編集者は熱烈にバイデン候補を支持している」。
グリーンウォルド氏は、検閲された記事の全文を自身のウェブサイト上で公開している。
この日の夜、グリーンウォルド氏はFOXニュースのタッカー・カールソン司会の番組にも出演している。
自らが立ち上げたメディア企業を追い出された格好となったグリーンウォルド氏は、この番組中も感情が高ぶっている様子が見て取れる。カールソン司会者は同情し、聞き役に徹している。
この7分弱のインタビューで、グリーンウォルド氏がその怒りの感情をぶちまける中、特に興味深いのは開始後4:14以降の部分だ。以下はそのやりとりである:
カールソン:それは恐ろしいことです。つまり、あなたが目撃しているのは、数々のアメリカ政府機関が、その偉大で制限のない権力をアメリカ国民に対して行使しているということですね。
グリーンウォルド:これはトランプ政権の過去4年間に起きている本当の話です。つまり、左派の間では長い間、CIAに対して健全な懐疑的見方が行われていました。ブッシュ・チェイニー政権の時代、多くの反戦活動が行われていました。しかしそれは今では全て消えてしまっています。それが消えてしまった理由は、トランプ政権が始動したその初日から、いやトランプが大統領に就任する以前から、CIAはトランプの大統領就任を妨害することに活動を捧げてきたからです。なぜなら、ドナルド・トランプは、CIAの忠誠心に疑問を投げかけたからです。ワシントンではそれ(CIAを疑うこと)は禁忌です。CIAを疑う者は破壊されなければいけません。
そのため、CIAとディープステートの工作員たちは、左派リベラル、民主党を支持する人々の英雄となりました。彼らは、現在ではネオコン、ブッシュ・チェイニー工作員、CIA、シリコンバレー、そしてウォール街と完全に一致団結しています。これは、完全に民主党を裏から支えている主流メディア報道機関と連携した権力の団結です。次の選挙で、民主党は少なくとも三権の一つを奪う可能性が高い。これは非常に警戒すべき事態です。なぜなら、彼らは独裁主義であり、彼らは自分たちを批判にさらすいかなる情報も検閲し抑圧することを信奉しているからです。
カールソン:米国政府の一機関(訳者注:CIA)が、米国内においてデマ情報プロパガンダを広めようとしている。これ以上、民主主義にとってあからさまな攻撃があるでしょうか?
グリーンウォルド:CIAとNSA(国家安全保障局)で勤務したエドワード・スノーデン。彼を告発に向かわせた問題の一つについて私たちは報道しました。彼を激怒と恐怖の感情に陥れたのは、彼ら(NSA)がアメリカ国民に対して(大規模監視)ツールを向けたことでした。彼らは外国政府をスパイするべき存在です。しかし彼らはそうではなかった。彼らは私たちの通話記録を収集していた。
CIAについても同じです。彼らは訓練を受けたデマ情報工作機関です。彼らはそれを行なっています。嘘をつくことが彼らの仕事です。彼らはそれを、何らかの変化を引き起こしたいと彼らがターゲットとする外国で行うべきなのです。政府転覆であるとか政権転覆など、アメリカ政府が望む「介入」です。それが、彼らが実行するよう訓練を受けていることなのです。
しかし法律上は、第2次世界大戦後の公安国家(national security state)という考え方によって根本的に禁止されており、(CIAなどスパイ機関は)その力を絶対に国内に向けて使用するべきではないということになっています。彼らは私たちの政治やプロパガンダの流布に関わるべきではないのです。
プロパガンダ機関と化したネットワークテレビ局をどこでもいいからつけてみるとわかります。最大手の新聞社の論説記事ページを開いてみてもわかります。CIA、司法省、FBI、NSAの元職員たちがアメリカ人に向かって何を信じるべきか命令しているのを目撃することができます。
彼らは国内のコミュニケーション方法に浸透しきっています。彼らはリーク情報や、(違法行為を隠すための)秘密作戦、そして嘘を使ってプロパガンダ工作をアメリカ国民たちに仕掛けています。そのイデオロギーがどんなものであれ、これはひどく危険なことです。
カールソン:完全に同意します。これら政府機関の行為は恥ずべきことです。あなたは真実を語っています。それはとても明白です。グレン・グリーンウォルドさん、そこから抜け出したことにおめでとうと言います。番組にお越しいただきありがとうございました。
以下はこのインタビュー動画:
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