「ビッグ・ブラザー」は何千もの方法で個人を監視している——収集した個人データは「フュージョン・システム」が中央管理
マイケル・スナイダー筆|2021年2月7日|The End of The American Dream掲載
(太字強調はBonaFidr)
「ビッグ・ブラザーはあなたたちを見ている」(*)。悲しいことに、ほとんどの人たちはこの監視網がどれほど広範囲に及ぶものになっているか気付いていない。通勤や通学で車を運転しているとき、ナンバープレート読み取り機はあなたがどこに向かっているかを自動的に追跡している。 大都市では、何千台もの高度な防犯カメラ(多くは顔認識技術を搭載している)が、あなたの一挙手一投足を監視している。 あなたが何か不審なことをしていると政府当局が検知した場合、彼らはあなたの犯罪歴、銀行記録、医療記録などをすぐに引き出すことができる。当然、もし 彼らがより深く掘り下げて調べたい場合、あなたの携帯電話やコンピュータが監視データの宝庫を常に生産している。 あなたが携帯電話やコンピュータで行うことでプライベートなことなど一つもない。
(*訳者補足:「ビッグ・ブラザー」とは、ジョージ・オーウェルのSF小説『1984』に登場する支配者。”Big Brother is watching you. [ビッグ・ブラザーはあなたたちを見ている]”とは、「政府や有力者があなたたち全員を監視している」という意味。)
かつては、こうした情報全てを集めるには膨大な時間がかかったていただろう。 しかし今では、マイクロソフト、モトローラ、シスコ、パランティア(Palantir)などのハイテク大手が、世界中の政府に「フュージョン・システム」を販売している。 これらの「フュージョン・システム」は、何千もの異なる情報源からの監視データを瞬時に統合することができる。これは、私たちの大都市の多くで行われている法の取締り方法を完全に変えてしまった。
アーサー・ホランド・ミシェル氏は、カーネギー倫理国際関係協議会の上級研究員であり、シカゴ市が利用している「シティ・グラフ(Citigraf)」と呼ばれる「フュージョン・システム」を見学させてもらった…
彼は「捜査する」というボタンをクリックした。すると、シティ・グラフ(Citigraf)は報告された暴行事件について作業を開始した。このソフトウェアは、ジェネテック(Genetec)社が「相関エンジン」と呼んでいるものの上で起動する。「相関エンジン」とは、その市における過去の警察記録やライブセンサーから送られてくるフィードを徹底的に調べ、パターンやつながりを探す一連のアルゴリズムである。
数秒後、画面には、この地域で凶悪犯罪で逮捕されたことのある人物のリスト、近くに住む仮釈放中の人物の自宅住所、最近通報を受けた911コールの中で類似の通報一覧、現場からスピードを出して逃げた車の写真とナンバープレート番号、犯罪の証拠を捉えた可能性のある監視カメラ(通過中のバスや電車に取り付けられたものを含む)からの動画フィードなど、手がかりとなる可能性のある長いリストが表示された。別の言い方をすると、それは警官にとって、元々かかってきた911コールに応答するために十分な情報と言える以上のものであり、ほぼテレパシー的な感覚で何が起こったのかを理解できる情報だった。
しかしこうしたシステムは、犯罪者たちを追跡するためだけに利用されているわけではない。
それどころか、これらシステムは文字通り、誰についてでも捜査することができる。
また別の機会において、アーサー・ホランド・ミシェル氏は、マイクロソフトがニューヨーク市のために構築した「フュージョン・システム」をテストする機会を得た…
ニューヨーク市警の役人は、どんな市民でも、その人の逮捕記録や交友関係、その人物が犯罪の被害者または目撃者として名前が挙がっている事件、そしてもしその人物が車を持っていた場合、その人が運転する傾向がある場所のヒートマップや駐車違反の完全な履歴について、彼がどのように情報を引き出すことができるかを見せてくれた。そして彼は私にその電話端末を渡し、「お好きな名前を検索してみてください」と促した。
友人、恋人、嫌いな人、といった人物が私の脳裏をよぎった。結局、私は数年前にブルックリンで目撃した銃撃事件の被害者を選んだ。彼の情報はすぐさま表示された。裁判所による命令なしに、私や、おそらく興味津々のこの役人ですら知る権利があるとは思えない個人的な情報とともに。少しめまいがしたため、私は彼にこの電話端末を返した。
これがシカゴやニューヨークなどの大都市で起こっていることであるなら、連邦政府の(CIAやFBI、NSAなどの)アルファベット機関がすでに持っているに違いない技術をあなたは想像できるだろうか?
もちろん、これは米国だけで起こっているわけではない。
大西洋の反対側では、ROXANNE(ロクサーヌ)として知られるヨーロッパの共同監視プロジェクトが大きな懸念を引き起こしている…
「組織犯罪に対抗するためのリアルタイムのネットワーク、テキスト、会話アナリティクス(Real time netwOrk, teXt, and speaker ANalytics for combating orgaNized crimE)」の頭文字をとったもので、現在スイスで開発中のこのプロジェクトにアイルランド共和国が関与していることが11月に発表された。
表向きは組織犯罪の監視と取り締まりを目的とした、生体認証ベースのプラットフォームであるROXANNEには、ヘイトスピーチや政治的な過激主義で有罪の疑いのある人々を監視する機能が追加されており、この開発者たちもそのことを自由に宣伝している。
ヨーロッパ各地で「ヘイトスピーチ」や「政治的過激主義」に対する厳しい新法が制定されているが、この新しいツールは、「思想犯」を取り締まるのを助けることになる。
特に、この新しいツールは、「フェースブックやユーチューブなどのソーシャルメディア・サイトだけでなく、通常の通信プラットフォーム」さえも厳しく監視することになる…
新しい監視技術を育成するためにEUが資金提供している「Horizon 2020」の製品であるROXANNEは、通常の通信プラットフォームだけでなく、フェースブックやユーチューブなどのソーシャルメディア・サイトでも機能する。顔や声を識別、分類、追跡することで、彼らが犯罪行為に関連した人たちであれ、政治的に過激な人物と思われている人たちであれ、それ(ROXANNE)は当局が調査対象としている人的ネットワークについてより詳細な全体像を浮かび上がらせることを可能にしている。
当局が様々な情報源やプラットフォームからの生データを利用して、共通の音声パターン、顔の特徴、地理的位置情報を認識できるようになることでもたらされる最終的な結果は、容疑者を特定することだけでなく、「顕微鏡の下」に置かれる複雑な人的ネットワークの全体像を浮かび上がらせることとの両方にある。
よって、もしあなたがヨーロッパに住んでいて、いつか自分は「思想犯」になるかもしれないと思っている人は、自分のスマホとパソコンを処分したほうがいいかもしれない。
本気で。
あちら側(ヨーロッパ大陸)で物事は本当に悪化しているが、米国でもこうした狂気が同じレベルに達するのは時間の問題だ。なぜなら、私たちもまた、全く同じ道を辿っているからだ。
ここアメリカでは、より多くの政治的発言が、日を追うごとに「脱プラットフォーム化(=プラットフォームからの追い出し)」に遭っている。 進歩主義(左翼)の記者であるジョーダン・シャリトンは、保守派が(SNS)プラットフォームから追い出される時、元々は歓声を送っていた。しかし現在では、自分が言論検閲を求める声を上げていたことを後悔している。ユーチューブが彼の動画の一つを削除してしまったからだ…
しかし、ユーチューブが「スパムと虚偽行為」に対するポリシーに違反したとして、彼自身のチャンネルから1月6日の暴動の映像を取り扱った動画を削除した後、シャリトンは彼の立場を180度反転させた。
「シリコンバレーによる検閲攻撃を目撃して、私は当時その瞬間心に抱いたことを投稿したこのツイートを後悔している」と、この進歩主義(左翼)ジャーナリストは記している。「特定のケーブル局/ユーチューブ・チャンネルが、本当の証拠が欠落した不正直な主張で視聴者たちを欺いているかどうかにかかわらず、彼らは(検閲の)標的にされるべきではない」。
「反対側」でそれが起こっている時は全てが楽しくゲーム感覚だが、しかしそれが自分に起こった時、それは突然現実になる。
彼らは、本当に私たち全員が何をし、何を言い、何を考えているかをコントロールしたいと思っている。そして「ビッグ・ブラザー」の監視網は、年を追うごとにますます息苦しいものになっている。
もし私たちが今のうちに、私たちがまだそれをすることができるうちに、この技術に制限をかけておかなければ、私たちの社会が、ジョージ・オーウェルがかつて想像したよりもはるかに恐ろしいディストピア的悪夢になるのは時間の問題だ。
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